辛くて、シアワセで、気が触れそうだった
全体の登場人物は、下のアドレスへ飛んでいただけると、助かります。
https://ncode.syosetu.com/n7465gz/1/
分からない人物がいたら、恐れ入りますが、飛んだ先で、サイト内検索をして拾って頂ければ、出てきます。
まだ載ってない人物もいるので、順次増やしていきます。
よろしくお願いします。(* .ˬ.))
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
ジャスミン・マーカス
アメリカ人。小5。女。
スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。
紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
ローズ・マーカス
ジャスミンの母。CIA職員。破天荒で、ちゃらんぽらんだが、娘を愛している。
女子達の匂いでいっぱいの八畳間。
みんなのママ達の香水も混じってるから、クラクラする。
時計は僕が座ってる場所からは背中側で見えないけど、もう、一九時くらいなのかな。
網戸にした窓の向こう、袋小路の入り口付近では、ボーン達が警戒に当たってるはずだけど……。
橘さんはとっくに帰ったろうな。メグのパパ、田中さんはどうしてるんだろう。ここに送ってもらってから、会ってない。
メグとの間であったこと…… 田中さんは知ってるのかな。
だとしたら、嫌われるだろうな。
気持ちが暗くなる。
さっきから続いている、父ちゃんとママ達の押し問答 ――悪いのは、自分たちの方だって言い張って譲らない―― を聞いてるうちに、別のこと考えてたけど、その答えは鈴木さんがくれた。
「夫はこの事を知りませんし、伝えるつもりもありません。親とは言え、男の人に聞かれたい話じゃないですから…… メグをこれ以上追い詰めたくないんです」
ハッとなった父ちゃんが、また頭を畳にこすりつけた。僕も慌ててならう。
いちいち、父ちゃんのマネをするハスマイラさん。
平伏しながらも、父ちゃんをそっと観察し、絶対先には頭を上げようとしない、わざとらしさが、たまらなくウザかった。
リーファはそれをスルー。思うところがあるのかな。
深く考えたくなかった。
「ウカツでした、やはり私でなく妻が……」
ナディアママが、首を振りながら話す気配。
「それはいかがなものでしょう…… この話し合いの目的は、どうすれば、『今までよりさらに良い関係を築けるか』です。同性であるお父様の方が、林堂くんの気持ちを理解しやすいのでは無いでしょうか」
『母さんじゃ、激怒して僕をぶん殴った後、土下座して、この町から消えるって言うに決まってる』
をかなりソフトに言ってくれた訳だけど……。
鼻がくっつく距離で、畳を見つめながら思う。
無理ない。
そりゃ、母さん怒るよ。
ここでは言えないけど、夏にマンションで、ナディアと一緒に『性の事は、きちんと考えなイカン』って説教されたのに。
その後、オーリャとの妊娠騒ぎ。
そんでもって、これだもん。
自分でも思う。
ぶん殴られて当然だ。
ちょっと、涙が出た。
僕って、ヘンタイなのかなあ……。
いや、ヘンタイだよな。
こう…… 改めて恥ずかしさで身体が熱くなる。
それぞれの女子のママ、僕とみんなとの間で、今までにあったこと…… 知っちゃってるワケだろ?
もう、タイガーウッズ状態じゃん、僕。
顔がビリビリする、恥ずかしさ。
いや、顔上げたくないって。
「そろそろ、前に進めましょ。Mr.林堂…… ミズ・コウサキが言ったように、前向きにね」
「……は」
父ちゃんが袖で汗を拭いながら顔を上げかけたとき。
掠れた声でジャス子が言った。
「……ムリだよな」
思わず顔を上げると、ジャス子が、もたれかかってるローズさんの腕から、顔を離していた。
え、何が?
『今までどおり』の関係に戻るのが?
「……だね」
「また、同じ事くりかえすじゃろ、うちら」
リーファの後を引き取る様に、ナディアが呟く。
最後の方は、震えていた。
メグがしゃくりあげながら、声を絞り出す。
「だか、ら…… なんとか、した、かった…… 辛くて、シアワセ、で…… 気が触れそうだった、から」
鈴木さんが、前を見たまま、初めてメグの肩を抱き寄せた。
ローズさんが、ちょっと上を見ながらため息を着く。微笑んだまま、ノールックで優しく訊いた。
「ハニー、なんで、ムリなのかしら?」
ジャス子はゆっくりローズさんから身体を離してうつむく。
横すわりで畳に手を付き、つぶれそうな姿勢で。
きゃしゃな、身体、腕。
僕にはなんにも出来ない。
「だって…… どうすればいいかわからないもん」
金髪を揺らし、少しだけ首をめぐらせ言った。
「ここにいる全員、自分たちが凛にメイワク掛けてるって分かってる…… 凛、ホントは五代の店にも行きたくないし、私達とも会いたくない…… って言うか、単にやりたいことが一杯あるヤツなんだ」
僕も含めて、みんな黙って聞いている。
「例えば凛、オリガと付き合ってたとしても…… ううん、アタシ達の誰を選んでも、ケンカばっかで、最後はLINEブロックして…… アタシ達の方が折れる、と」
僕以外の全員が、軽く肩を揺する。
それで、少し話しやすくなったのか、ジャス子は疲れ切った声で続ける。
「結局、楽しくてシアワセなのは、コッチだけで…… 凛はなにかのきっかけで、ある日突然…… ふっ、っていなくなる。それがどんな形なのかまでは、分からないけど…… そんでアタシ達はきっとこう言う」
次の震え声で、俺は思わず顔を上げる。
「……『デスヨネー』って」
リーファ達のしゃくり上げる声が、大きくなった。
「それで、納得してあきらめられるのか、…… そこまではわからないけど…… あきらめられたら、どんなに楽だろ…… な、そう思わね、エセアイドル?」
「なんで、メグに振るのさ、エセ京オンナ…… なら、あきらめなよ、ハイ決まり」
ぐずりながらも、半眼で煽る雪女。眼は真っ赤だ。
「ムリ…… 今考えたら、バカだけど…… さっき、屋根の上で、気付いてみたら、自分の頭に銃口向けてた」
鈴木さんが口許を押さえて、悲鳴を上げた。
「いや、ママ、メグだって……」
「そんなバカはアタシだけ…… なのに……」
さりげなく、メグをかばい、段違いの金髪は続ける。
「凛…… 私の銃を叩くために…… 窓ガラス割って…… 血しぶき見て、驚いた顔で……」
自分の娘を優しく見つめる、ローズさん。
「ママにも下から、見えてたわよ? 」
ジャス子は、乱れた金髪を揺らし、しゃくりあげる。
「私の、顔、見で、笑って……」
僕は、今どんな顔をしてるんだろう。
「何故かしら?」
答えは知ってるわよ、って顔で微笑むジャス子のママ。
皆が見つめる中、その娘は、畳に向かって血を吐くような絶叫を叩き付ける。
「ジャスの血じゃないっで、わがっだがらッ! 無理だよ、あだぢ、全然ムリ、だずげでよ、だれがッ! どうやったら、あきらめられるんだよ!?」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





