蚊に刺されたくらいで来んな
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
大人ターレン
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
数十時間後。
私は自宅マンション、十畳程の自室で、ハスマイラに介護されていた。
これ以上広かったら、落ち着かないし、使い勝手が悪い。
世界中から集めた考古遺物と、古地図、帆船模型。
息の詰まる親元を飛び出し、勉強漬けだった青春と好奇心を取り戻そうとした十代後半。
その軌跡がこの部屋だ。
エジプトのサッカーラで自ら発掘に参加し、莫大な金を使って密輸させた古王朝時代のファラオの胸像。
中米、アステカの人の皮を被った石像。
リーファは気味悪がって、幼い頃からここに来ようとしなかった。
かといって、娘好みの部屋にするわけにも行かない。
ビンタ一発で即死しそうな、なよっちい、アイドルのグッズを置くくらいなら、部屋ごと火にくべる。
自分の好きなものに囲まれて、過ごす心地よさ。
そして、サマーセーターにロングスカート、ポニーテールの優しい瞳が私を見つめる、憩いの場所。
時刻は昼二時を回っている。
リーファは学校、朝もギリギリ顔を会わさずに済んだ。
「はい、あーん」
「よせ……」
ハスマイラは卵雑炊を、掬った匙をひっこめない。
ジト目で、呆れたようにため息を着く。
「だって、片手は点滴繋いでるし、その首十五針も縫う大けがなんスよ? 後二センチずれてたら、頸動脈…… よく生きてたッスね?」
……全くだ。
私は諦めて、恨めしげに彼女をみてから、口を開けた。
……現場の清掃を終え、何とか明るくなる前に、現場を離脱。
社員に送られ、衛生兵に安静を命じられて今に至る。
本来なら入院すべきだが、自宅に設備は整ってる。
兵士のご多分に漏れず、私も病院はキライだ。
ジェーンも医者嫌いだが、イラクの野戦病院で、今の細君が血まみれの激務をこなしていた頃、話がしたい一心で、毎日通い詰めてたらしい。
『蚊に刺されたくらいで来んな、ドアホウッ!』
と詰られても、『会話が出来た』と喜んでいたらしい。会話じゃないけどな、それ。
その話をしてやると、ハスマイラは手を叩き、足をバタバタさせて大笑いした。
「師匠、カワイイ…… 素敵っッスね。どんな奥さんなんですか?」
「男らしい」
「即答ッスね…… でも、最高のホメ言葉かも」
「『私の人生は私のモノ』を実践してきた強者だ。激戦地で働く…… 親が賛成するワケない。だから、彼女、ジェーンや、息子の生き方にも、口を挟まないと決めてるみたいだな」
感心したように首を振る、薄褐色の美女。彼女の香りが攪拌される。
「会ってみたいッスね…… 師匠の正体は知らない事になってるから、大した話は出来ないだろうけど」
「私もほとんど会った事がない…… そんな顔するな。会いにくいんだよ。ジェーンを死地に連れて行ってるのは、他ならぬ私だし」
「あー…… 確かに会いにくい。ってか、自覚あったんスね?」
「アタリマエだろう」
二人で静かに笑う。
耳の痛くなる静寂。
秒針の音がキライなので、デジタル時計しかおいていない。
微笑んだまま、軽く俯いている、ハスマイラ。
話題を探してる間に、用件を思い出した。
「そうだ、今度の日曜……」
眉を逆立て、膝の上のお盆に、木匙を置いた。
「絶対安静ッスよ? 外出なんか出来るワケないでしょ?」
「だな…… スマン」
私は、肝心なとき、いつもこうだ。
情けなさが顔に出てたのか、それをみて、ハスマイラが眉の端を下げた。
「いいッス…… どこに出掛けても、シヴァやボーンが着いて来たら、仕事と変わらないッスし、おうちが一番いいッスよ」
……言われてみればそうだな。
けど、どう言って分からないから、私は同じセリフを繰り返す。
「スマン……」
今度こそ、ハスマイラは笑う。
からかうような上目遣い。
「ん? 何スか、行きたかったんスか、USJ?」
「いや、別に…… 君と出かけたかったのは本当だが、咄嗟に思いついたのが、あそこしかなかったんだ」
眼を細めて笑ってくれた。
ホントに綺麗で、目を奪われる。
メイクを決めてるわけでもない。
ドレスアップをしてるわけでもない。
だが。
生きて帰れて、本当に良かった。
この笑顔をみる事が出来たから。
呆然とした私の顔を見ても、もう、彼女は何も訊ねなかった。
ただ、眉を下げた頼りない笑顔で、私を見つめ続ける。
そのまぶしさに耐えられず。
私は俯き、呟いた。
また、弱音を吐くのか、梁 健一?
「私は…… 弱くなったんだろうか?」
ぼんやりした、曖昧な言葉。
なのに、彼女は私の手をそっと握ると、即答した。
「ジブンもです」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
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