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トラトラトラ

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。

 幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。

 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 梁 健一

 日本名、橘 健一。リーファの父。

 台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している


 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。


 大人ターレン

 犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。


 五代珠乃

小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。



エディ・田中

五代珠乃の、血の繋がらない父。

犯罪組織、HAZEの創始者。

ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。

梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。




 

 バラバラと土を落としながら、咥えていたストローらしきものを吐き捨てるスローター1。


 RPGを構えた敵に、サイレンサー付きの小さな拳銃を向ける。どちらも、ステルス戦を得意とするヤツの常備品だ。


 「……lock 'n load」


 lock 'n load


 lock 'n load


 俺の号令が、木霊の様に伝播されていく。

 嵐の様に飛び交う銃弾の中、死神の囁き以下の銃声。

 

 背後から無造作に、頭を撃ち抜かれた砲手。

 でたらめな場所に『ユダヤのペニス』と揶揄されるむき出しの砲弾をぶっ放して事切れた。


 たまったもんじゃねえのは、ソイツを背中から叩き込まれた敵達だ。

 至近距離で、対戦車砲の爆発に巻き込まれたヤツラが、壊れた人形のように飛び散った。


 俺は口の端を吊り上げ、胸の裡で快哉を叫ぶ。

 

 最高だぜ、スローター1!


 バックアタックを喰らった連中は、思わず引き金を緩めた。

 

 「Fuck'em up!」

 「(シャア)!」


 俺と王の絶叫に合わせて、隊員達が捨て身の反撃に出た。


 「死ねええ!」


 俺も立ち上がり、絶叫しながら5.45mmの死神を叩き込む。


 星明かりに輝く金色の薬莢と、弾を喰らってデタラメなダンスを踊る敵を眺めながら、ぼんやり思った。


 

 ハスマイラ オマエの声が聞きたい



 ゾーンに入った俺達の射撃は正確無比だった。


 特に、シヴァとボーンは無駄弾を控え、単発で確実な死を送り込む。


『こちら、スローター1…… トラトラトラ』


 無線を復活させたユンファの静かな声が、インカムから流れ、俺達は奇声をあげる。

 真珠湾攻撃に成功した、日本軍の暗号。


『我、奇襲二成功セリ』


 やるじゃねえか、台湾人? トリハダが立ったぜ。


 同士討ちを避ける位置から、着実な死を届け続けるスローター1。

 敵の判断は早かった。優秀な証拠だ。


 あっという間に、半数以下へと減らされた連中は、潮が引くように俺達が向かっていた方角、つまりアイツらが待ち伏せをしていた方向へと撤退していく。


 俺もこの瞬間を待っていた。


 「退け! 増援と合流する! 負傷者がいれば、回収しろ!」



 


 まだ息のある負傷者を抱え、退却してきた俺達を、増援部隊は歓呼で迎えてくれた。

 フル装備で、闘志と殺意に燃えるその姿。


 100万の味方を、得た気分だ。

 


 雲が晴れ、月が顔を出す。

 満点の星空が目に沁み、生きている実感がじわじわと湧いて来て、雄叫びを上げそうになる。


 あれだな……。

 いつでも死ぬ覚悟はあるつもりだが、やっぱり死ぬのはイヤだな。


 自分の心の変化に驚いた。

 今まで、こんな事は無かったのに。


 その昔、ローリングストーンズのメンバーがヤク中になって、全身の血を入れ替えたらしい。

 退院した時の一言。


「これで、またヤクが打てる」


 今までの俺も、正しくこれだった。


『生きてる。またスリルが待ってる』


 首の傷を診てくれてる、衛生兵のうるさい質問に生返事しながら、俺はその変化の意味を探る。

 

 リーファ。大人(ターレン)、ハスマイラ。


 死にたく無い理由を探すと、この三つのワードが浮かんだ。

 

 そうだ。

 ハスマイラの声が聞きたい。



 

 首の手当を終え、同じく包帯だらけの王に後を任せ、無人の四駆に乗り込んだ。


 ツーコールで、ハスマイラが出た。


「……ボス? どうしたッスか?」


 訝しむような低い声。夜中だ。

 怒っている様子はない。

 

 私が任務に出ていたのは知っていただろうが、あの時以来口を利いてないのを、今思い出した。


 私が『林堂くんが日本を去る? 悪い虫がいなくなるなら大助かりだよ』


 そう言った後。


 『……なんでですか? まじめに話す気が無いなら、もういいッス』


 力なく言葉を返してきて以来の会話。


 私は素直に言うことが出来た。

 理由は分からない。


 「ハスマイラ…… 生きて帰れたよ。ただ、声が聞きたかったんだ」


 沈黙。


 部下に、こんな弱音を吐くのは始めてだ。

 言葉に詰まる。


 急に何を言っていいのか分からなくなったから。


 嗚咽。

 掠れた女性の泣き声。


 その無防備さに、彼女が部下であること、兵士であることを忘れた。


 「その…… 林堂くんの事、悪かった。だが、息子が連れて来る彼女を、憎くない母親はいない。父親も同じなんだ」


 泣く合間に吹き出してくれて、ほっとした。

 間が持たない。

 そろそろ、切り上げ時だろう。掛けたばっかりだが。


「それだけだ。いや……」


 しゃくりあげる声も、心なしか明るい。

 それに押されるように、私はスマホを握りしめ、意を決して言った。


 「次の日曜日、空いてるか? その…… USJでも……」


 顔が熱くなって、言葉が尻すぼみになる。

 しまった。学生かよ?


 今度こそ、ホントに笑ってくれたハスマイラ。

 甘えるように囁いた。


 「うれしい…… でも、スーツは、ダメッスよ?」





(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。


毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。


宜しくお願いします!


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