最低な夜
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
大人ターレン
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
ローテーブルに足を乗せ、ウィスキーグラスとにらめっこしていると、自室のドアがノックされた。
足音と、ドアの叩き方で、誰だか判った。
「リーファか…… 入りなさい」
せっかちな彼女らしく、返事の最中にドアが開かれる。
廊下の明かりに、輪郭を照らされた天使。
私の部屋を訪ねて来たのは、どれくらいぶりだろう。
普段なら、大歓迎だが、今夜はカンベンしてほしい。
ハスマイラと本気で喚き合いをした、今夜ばっかりは。
「……パパ、ハスマイラと何かあったの?」
少し顔を傾け、私を詰る姿に驚く。
なんてこった、深雪の仕草そのものじゃないか。
私のガクゼンとした表情に、怪訝な顔をするリーファ。
あわてて、眼を逸らし、ソファから身を起こす。
「仕事の事でな」
その返事は、お気に召さなかったらしい。
ウィスキーグラスに、口をつけた私のそばまで来て、柳眉を逆立てる。
深雪なら、私のグラスを取り上げてたところだ。
大人と会ったせいか、今日はやけに元妻の顔が、頭にチラつく。
「ウソ。仕事だったら、ハスがパパに逆らうハズがない…… 私の事でしょ?」
その通りだ。
ハスマイラには、『仕事モード』と『保護者モード』の区別がある。
後者は即ち、リーファの事。
自分でも自覚してるが、私は親としては三流以下だ。
それを理解している分だけ、マシになったのかも知れない。
仕事で、ハスマイラは私に逆らわない。
逆に、家庭のことは、ハスマイラの意見を尊重している。
だが、コレは別だ。
あの男の許に、娘を連れて行くなんて許せるわけがないだろう。
思い出しても、怒りがこみ上げてくる。
『ジャス子ちゃん、ジブンだけだったら、会ってくれるわけありませんでしょ?』
そんなもん、知るか!
コッチは命を狙われてるんだぞ!?
リーファの妹みたいな存在だ、救出しろと言うんなら、躊躇せずやる。
向こうは、母親の承諾付きで大人にべったりなんだ、私達の出る幕じゃないだろう?
一体、なんの意味があって、虎口にリーファを連れて行くつもりなんだ?
『勘です。もし、林堂くんがこの国を出たら…… 大変なコトになる気がするんです』
……彼がアメリカに行ったら、なんだって言うんだ? ジェーンがこっちに残ってくれさえすれば、私は構わん。悪い虫がいなくなるなら大助かりだよ。
「聞いてる、パパ? ハスマイラが泣くなんて…… 一体何言ったんだよ?」
乱暴な言葉使いに、ムッとする私。
「梁 梨花…… 父親にそんな口の利き方を、するもんじゃない」
こんな風に娘を窘めるのは、何年ぶりか。
台湾っぽい言い回しになってしまう自分を、心の中で笑う。
母親に叱られた時を、おもいだしてしまった。
因みに、親父に今のような口の利き方をしたら、殺されている。
ソファの背をぶっ叩いて喚くリーファ。
流石の私も驚いた。
ここまで感情むき出しにした彼女を、近年見たことがない。
「ね、なんでウソつくんだよ!?」
「ウソはついてない」
「じゃ、ゴマカし? 凛と一緒。『ウソはついてない』ってのが、イチバンタチ悪い」
「いい加減にしろ!」
足を下ろし、グラスの底をローテーブルに叩き付けた。
琥珀色の液体が飛び散り、柔らかい間接照明にきらめく。
娘は退かなかった。
眼を吊り上げ、顔を真っ赤にして、怒声を張り上げる。
この顔は、深雪に似てない。
その既視感の正体に気付き、気持ちが萎えた。
……俺にそっくりじゃないか。
「それ、コッチのセリフだよ! 大人て絶対知り合いだろ? 絶対凛も、ナディアもそう思ってる!」
私は元気無く言った。
「……調査中だ」
リーファの瞳から涙がこぼれるのを見て、私は眼を逸らす。
最低な気分。
ここんとこ、ずっとだ。
理由は簡単、ツケが回って来ただけだ。
家族を放ったらかしで、好きに生きてきたツケが。
唐突に、こないだ俺に説教しやがった、ドラゴンマフィアのチャンが羨ましくなった。
オマエは、精算したんだよな、独りになるって形で。
片や、俺の方は、今支払ってる最中だ。
心の中で、『拝啓 チャンへ』って詠みたくなるぜ。
「ね…… 私もう、子供じゃないよ? そんなに信用できない? 命を狙われて、ママに捨てられて…… 多少の事でビビるわけないじゃん」
そうだ、オマエは強くなった。
だが。
『私を付け狙う大人は、オマエの祖父だ』
これ、多少の事か?
無言の私を責めるように、リーファは顔を覆って、へたりこむ。
涙声が、私の肺腑を抉る。
最低な夜だ。
「相棒も…… ナディア達だって、アタシに何も言わない…… それがどんだけツラいか…… 考えてくれたことある?」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





