女と子供、楯にするにはちょうどいい
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
大人ターレン
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
私が利用する飲食店は、限られている。
殺手の紛れ込みにくい、家族経営か、アルバイトを使わないような、格式のある店しか選ばない。
オフィス街にある『台北酒房』は、後者に当たる。
時々しか来る機会はないが、味が故郷のそれに近いので、一度ハスマイラとリーファを連れてきたことがある。
二人ともエラく気に入ってくれた。
五階建てビルの、三階と四階のうち、上階が個室になっていて、私はそこしか利用しない。
中央に鎮座する丸テーブル、艶のある黒が基調のゆったりした室内。
過剰じゃない道教風の飾り付けも、私の好みだ。
私は好物の魯肉飯を、口に運ぶ手を止め、斜め隣に座るハスマイラを見た。
姿勢正しく椅子に座り、脚を揃えて無心に麺をすする、中東系……の外見を備えた美女。
所作が美しいのは、幼い頃から古流武術を、仕込まれていたせいだろう。
それは、引きこもっていた女子大生が、全く無縁な傭兵の世界に足を踏み入れた際も、大いに役にたったのだが……。
黒のAラインワンピース、凝ったピアスに結い上げた髪。
もう少しマシな人生は選べなかったのだろうか?
隊に入れたのは、私とジェーンだ。
私達は…… 余計な事をしたのだろうか。
何万回も繰り返してきた自問自答。
「ん? 美味しいッスよ、これ…… 食べます?」
そういいながら、目の前の回転テーブルから小皿を取り、自分の丼からよそおい始めた。
いや、見てたのは、ラーメンじゃなくて、ハスマイラの方なんだが。
「そうだな…… これもうまいぞ」
断るのも違うので、私も自分の器を差し出す。
シヴァの運転していた非武装の車は、途中でチェンジしたため、私もハスマイラも、普段通り銃器を装備している。
下で警備している隊員達もだ。
一緒に食事をして、ハスマイラを、特別扱いしているわけじゃない。
大任を終え、今日はアガリだ。
「……大人、ジブンの想像と全然違ってました」
小鉢に盛った魯肉飯を、一口食べた彼女が言った。
「どういう風にだ?」
「何て言うか…… 凄く人間くさかったッス。JKに自爆ベストを着せるとか、鬼畜な人格だと思ってたんですが」
「……どうなんだろうな。ソマリアの海賊狩りで、ヤツと一緒に闘ったが…… 一言で言えば、『能率の権化』だ」
私は、天井を見上げ、当時の事を思い出す。
まだ、深雪に出会う前だ。
「我が前にある物。全て我が道具…… ヤツの口グセでな。女子供の死体を、躊躇無く楯にして、カートでラリった敵を皆殺しにしていた。『軽くてちょうど良い』って笑ってる姿に、キレた隊員が殴りかかったら、一瞬で手足を折られて、返り討ちにされてたよ」
「……間違ってはいませんね」
物憂げに呟くハスマイラ。
「そうだな。多分、己が動けなくなったら、躊躇無く捨て石になるだろう。兵士の鑑…… なのか?」
「ジブンが今日感じたのは、厳格で寂しいお祖父ちゃん、ってイメージです」
私は軽く笑った。
「そんないいもんじゃないだろう…… ところで、君はジャスミンくんをよく知ってる口ぶりだったな?」
「以前、お泊まりしたときに色々ありまして…… お父さんが、リビアで何年も人質になってたんですけど、その間、ローズさんの友人に『実は私がオマエのパパで、ローズは愛人だった。これから一緒に暮らそう』って設定で預けられて……」
「……すまん、もう一度言ってくれ。情報が洪水過ぎる」
「……ッスよね。まあ、人質になってるお父さんの事は、彼女知らされて無かったんスよ。物心ついたときにはいなかった訳ですから、実質シングルマザーの家庭で育てられてきた訳で……」
ハスマイラは困ったように、口をへの字にしてから言った。
「ローズさんとしても、ジャスミンちゃんの為を思ったら、父親の事は、絶対に知られたくなかった訳です。確かに、ツライおもいするだけですもんね」
「『愛人の娘設定』も、充分ツライと思うが…… まあ、どうでもいい。のびるぞ、食べよう」
食後のコーヒーを啜りながら、私達は今後の話を続けた。
過去より、未来の事だ。
「……賛成ッス。ジブンも、大人が言ってる事は、信用して良いと思います。ただ……」
カップを撫でながら、ハスマイラが呟いた。
「HAZEでやり方を覚えた敵が、別のルートで来る可能性は、充分考えられます」
「……だな。なんてこった、HAZEのルートで来られる方が、ずっと情報を集めやすかったぞ?」
ハスマイラが、思わずと言ったカンジで笑う。
「エディがこっちサイドにいる分、その通りですよね…… でも、それより」
ハスマイラが、まっすぐな眼で私を見た。
「ジャス子ちゃんが心配ッス。近いうち、もう一度大人に会いに行っていいですか?」
構わないが、と言いかけて、言葉を飲んだ。
次のセリフが、とても許容できるものでは、なかったからだ。
「……リーファちゃんを連れて」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
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