アルテミスは、勝負パンツで前に出る
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
大人ターレン
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
チャペルの入り口前の受付。
受付らしく、長机がならべてあるだけで、他の客もホテルのスタッフも見あたらない。
見守っている義父の横に、音もなく並ぶジェーン。
男達の背後、2メートル程の距離を保っているが、コイツなら、瞬きする間もなく叩き伏せることの出来る間合いだ。
気付いてるだろうに、こちらをチラリとも見ようとしないジャスミン親子。
侮辱された、アメリカ少女の眦が吊り上がる。
私よりデカく、私より横幅のある酔っぱらい。
アロハからはみ出た太い腕には、趣味の悪いタトゥー。
さっきすれ違ったカップルが青い顔で逃げ出したのも、無理はない。
だが、彼女は違った。
可愛らしいパンプスの脚が滑るように前へ出る。
それを縫い止めたのは、彼女の母の声。
「いえ、どっちかと言えば買う側だし? ホラ」
黒いワンピースの胸元、というか豊かな胸の谷間から、恥ずかしげもなく黒いカードを引き抜いた。
二本指でかざされたのは、アメックスのブラックカード。
隣のハスマイラが呟いた。
「……あ、ボスと同じセンチュリオンカードっすよ」
年会費が40万近くかかる、チタン製のカード。
義父を連想させられ気分が悪いが、パーソナルコンシェルジュがオマケでついてくるから、ハスマイラが来るまでは、ホテルの予約なんかで重宝した。
日本人にはあまり馴染みやインパクトはないが、海外では水戸黄門の印籠だ。
現に、見せられたオッサンだけじゃなく、息子達までヒいている。
「……え、ソコでヒくの? ジャスの友達、3人ともアタリマエに持ってるよ?」
逆にビビるジャスミン。
眼に怯えさえ浮いてるトコが、余計に劣等感を刺激する事だろう。
言葉を失った三人組に、母親がショートカットのブロンドを揺らし、不信感丸出しで訊ねる。
「……アンタ達、ホントに宿泊客? ジャス、このレッドネックス見かけたことある?」
ジャスミンは、道端のゲロを避けるような顔で後じさりつつ、毒をとばす。
「ないよ、何週間も泊まってるけど…… え、もしかして…… このホテルを観光しに来たの? 素通り? 見学コース?」
「『何でペソが使えないんだ』とか喚いてそう…… 」
英語が分かるのか、くッと顔を背けて笑いをこらえる公安のイヌ達。
もしくは、憐れむような、美女のセリフにキレたのか、
「ビッチ!」
男は歯をむき出しにして、右の拳をブン回す。
風のように間合いを詰めた、ジェーンの腕が届く寸前。
ジャスミンの右脚が閃き、パンプスのヒールが、正確に下からアゴを撃ち抜いた。
スカートがまくれ上がって、少女らしからぬ黒のレースの下着が網膜に焼き付き…… げんなりする。
それでも、体重差は倍以上、敵は動きを止め、よろけはしたが、ノックアウトに至らない。
「……ここからは戦場だ」
呟きだけを残し、大人が動き出す。長机に向かって。
その後ろの息子達が血相を変え、止めようとしたジェーンと、ジャスミンに殴りかかる。
真半身でバックステップ、テコンドースタイルで、迎え撃つジャスミン。
ジェーンに殴りかかった愚か者は、ショートフックをアゴに喰らい、糸が切れたように頽れた。
それを確かめもせず、ジェーンは瞬間移動のように地面を滑り、親子を背後に庇う位置へ現れた。
流石のジャスミンたちも、眼を丸くしたのは、相棒として良い気分だ。
「……クール」
ハスマイラの感嘆の賛辞が、いっそうそんな気分にしてくれる。
豪風のように振り抜かれた長机が、反撃しようとした白人親子の頭に、炸裂するまでの短い間だったが。
唖然とする私達の前で、血しぶきをまとい、眼を開けたまま、地面でバウンドするアホども。
流石に固まってるジャスミンの横で、ケラケラ笑いながら、母親が目尻を人差し指で吊り上げる。
アジア人を『吊り目』としてあざけるときのジェスチャー。
「高くついたね、コレ? 娘のカレがいたら殺してたよ…… って生きてる、コイツラ?」
それで理解した。
おそらく、さっきの日本人カップルをこの三人組がからかい、それをジャスミンたちが、詰ったのだろう。
しかし、少女に何が起こったのか。
赤い顔でデレデレしながら、母をぶつ。
瀕死でケイレンしてる三人を無かった事にしてるのが、異世界チックこの上ない。
「ママ、カレとかそんなん…… マダやから、今日こそ、このパンツで」
雑に放り出された机の派手な音に、首を竦めるジャスミン。
おそるおそる見上げる先には、鬼のような形相の大人。
「アルテミス! 訓練の期間中、スカートは厳禁だ! 何度言わせるのかね!?」
ぶーたれる、段違いの金髪少女。
「えー、今日は休みって言ったの、コーチじゃん…… コーチですよ?」
髪を振り乱し、壁を拳でぶっ叩く姿は、総統閣下にしか見えない。
こんなキャラだったのか?
「言い訳しない! どうしてもなら…… その…… 何か履きたまえ!」
ドン引きする、ハスマイラ。
「うっわ、バカ親が増えたッスよ?」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





