お行儀良くしてね
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
大人ターレン
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
入り口から見えてたので、ある程度予測は出来ていたが、店の中に大人以外、他の客はいなかった。
マホガニー製のカウンターとテーブル。
シックな色で統一された店内の窓はカーテンで覆われ、間接照明が奥のテーブルの傍らに立つ人物を、淡く照らしている。
背後で近づいてくる足音。早足だ。
振り向くと、我々が来た入り口から、険しい顔をした眼鏡の中年が、入ってくるところだった。
Yシャツにスニーカー、警察御用達のPチャンイヤホンを見るまでもなく、横柄な態度と目つきで公安の犬だと分かる。
我々に忌々しげな一瞥をくれると、カウンターの奥に消えた。
疑問が頭を掠める。
あの様子では、我々以外をマークしている様にも見える。
それに、大人のヤツ、店内に護衛どころか、ウェイターの一人も置いてないのは、どういうつもりだ?
「……ウチら以外にも、マルヒがいるんスかね?」
それを目で追っていたハスマイラが、私の腕をとったまま呟く。
肩を竦めるしかない。
私は険しい顔で顎をしゃくる。
「……それもこれも、アイツが答えてくれるだろうよ」
緞帳の様なカーテンで覆われた、はめ殺しの窓。
テーブルの傍らには、ノータイ、スーツ姿の義父…… 大人が彫像の様に立ち尽くしていた。
180センチ近い長身。半身だけを、ぼんやりと照らされた、彫りの深い顔。
50は超えてる筈だが、端正な顔立ちは、舞台俳優の様だ。
虚ろな目は、私を見ているのかどうか、分からない。
私も鼓動が、速くなるのを感じた。
拳を握りしめない様に努めたが、自分の眼に狂気が宿るのを止められない。
そっと半歩進み出た、ハスマイラが、軽くお辞儀をする。
「初めまして。ボスとの同席を許可頂き、感謝致します…… ハスマイラとお呼び下さい」
礼儀を尽くす、女丈夫に軽く驚いた。
仇敵であれ、私の義父だと言う遠慮なのか。
義父は目を細めて、自分の娘より――生きていればだが―― ずっと若い褐色の美女に、目を細める。
人を引きつける笑顔。
上の方のヤクザもサイコパスも、人を惹きつける何かを持っている。
そして、そういう奴らは、例外なく冷酷だ。
「ご丁寧に痛み入る。大人でいい…… 実に助かるよ」
微笑みは消え、死人のような表情で、私に輝きのない目を向ける。
いいぞ。作り笑いよりかは、親しみが沸くってもんだ。
「二人だと、一分もしないうちに、コイツを殺してしまうからな」
無限の呪詛を湛えた、只の黒い穴。
奴の恨みの深さが、伝わろうってもんだが……。
冗談じゃねえ。
言いたい事があったら、いくらでも話し合いのテーブルに着いた。
それを拒否したのはコイツの方だ。
確かに深雪と生まれたばかりの娘をほったらかしで、ドンパチに勤しんでいた俺には、夫を名乗る資格はねえ。
だが。
しつこく付け狙われ、無関係な林堂くんや、ナディアくんを巻き込み、私に赤っ恥もイイとこなマネをしてくれたんだ。
深雪ならともかく、コイツに対して、良心の呵責は全くねえ。
何より。
怒りに目が眩む。
リーファに窮屈な生活を強いた時点で、万死に値する。
「ボケてんじゃねえぞ? 百回殺しても飽き足りねえのは、こっちの方なんだよ」
目を眇めた大人が、無言でテーブルを回ってきた。
奥目になった闇の中で、無機質な眼が俺を捉えて離さない。
俺はブッちぎれた頭の中で、口の端を吊り上げる。話が早えな、好きになりそうだぜ?
驚いたことに、ヤツも口許を歪めて嗤ってる。
コイツが素人じゃねぇのはわかってる。
なら、遠慮は要らねえよな?
「さあ……」
俺のセリフも、ヤツの歩みも堰き止められた。
ハスマイラが恐れる風もなく、私達の間に割り込んだからだ。
片手を腰に当て、軽く片膝を曲げたモデルの様な立ち姿。
「ご挨拶は終わったかしら? 男二人居て、椅子も引いてくださらないの?」
訛の無い、物憂げでハスキーな声。
思い出した。千変万化に振る舞い、男を手玉に取る事で任務を遂行してきた、鉄の処女。
堂々とした振る舞いに、私と義父は一瞬だけ目を合わせ、同時に行儀悪く、舌打ちした。
「失礼、ミズ…… こちらへ」
俺に背を向け、ハスマイラの椅子を引く、忌々しいコンシェルジュ。
俺がふんぞり返って立ってるため、まともに椅子を引けない。
背中で押しのけようとする大人、梃子でも動かない俺。
肩越しに振り返る、狂気の眼差しを見上げ、瞬きも忘れて睨み合う。
その視線を、パーティバッグが遮った。
角型の封筒くらいのサイズ。
シックなレザー、今のハスマイラの装いにピッタリだ。
ノールックのまま、物憂げにボヤく。
「椅子を引いて、お行儀良く座りましょ。一つひとつ、教えてあげないといけません?」
小学校の先生かよ?
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





