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汚れた俺には似合わない

《登場人物》


 林堂 凜


 主人公。 小6、男。

 幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。

 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。




日本名、橘 健一。リーファの父。


台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している




香咲 ナディア=マフディー


小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。




梁 梨花リャン・リーファ 


小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。




ジャスミン・マーカス


アメリカ人。小5。女。


スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。


紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。 



氷室 メグ



小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。



五代珠乃


小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。

朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。




エディ・田中


五代珠乃の、血の繋がらない父。


犯罪組織、HAZEの創始者。


ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。


梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。





 深くて、暗い水の底から浮かび上がるような感覚。

 何か、悪夢をみてた気がする。

 

 視界は、ぼんやりしてるけど、自分が高い屋根の下にいることは分かった。


 「う……」


 意識が戻った途端、後頭部の痛みに声がもれる。


 「旦那さま!?」


 聞き慣れたメグの声が反響する。

 その響き具合で分かった。

 

 汚れた油の匂いが鼻をつく。

 僕にとっては、散々射撃の練習をさせられた、射撃場と結びつくニオイ。

 風通しの悪い澱んだ空気、独特のひんやりした闇。


 ここは……。


 痛みに顔をしかめながら、上半身を起こす。

 頭の下に敷かれていたらしい、冷えた衣類が、起きた拍子に後頭部からはがれて、落ちた。


 振り返って、自分の頭があった場所を見た。

 

 敷かれた段ボール。頭の下、衣類越しに置かれていた冷凍食品のパックから溶けた水分で黒ずんでる。

 氷枕の代わりか。


 僕は鉄くずや、ゴミのちらばる地面に、段ボールを敷いて寝かせられてたみたいだ。


 高くてすすけた鉄骨の天井が、暗闇の中、点々と申し訳程度に光ってる、電球に弱々しく照らされてる。

 教室二つ分くらいの広さに、何年も動かされてなさそうな、何台もの工作機械がうらめしそうに立ってる。


 思った通り。

 ここは、廃工場だ。どこかはわかんないけど。


 息を切らして駆け寄って来たメグが、むき出しのアスファルトに両膝をついて、僕の手を握る。


 「大丈夫ですかっ!? 吐き気とかは……」


 困り眉の泣きそうな顔。

 大きな黒い瞳にたまった涙が、本来、機械の手もとを照らすために点けられてる、小さな裸電球たちの光を弾く。


 ポニーテールにした黒髪に映える、整った顔。

 

 こんな薄汚れた場所には……。


 


 『こんな汚れた、俺には似合わない』



 

 頭から血が引いていく感覚。


 ……思い出した。


 


 俺のM36が引きちぎった耳。


 朴ジイの信じられない物を見る眼。


 すがりつく五代。


 弾けた目玉、ノド、額。


 ただの抜け殻になって、転がる……元人間。


 自分の口から出た悲鳴で、頭が割れそうになる。


 やめろ、出てけ! 出てけ、この記憶!


 むしり取るために、必死で頭と顔に爪を立てる。


 「凜!? しっかりしてッ」


 自分の顔と頭をかきむしる僕を、しっかり抱き締める雪女。

 メグの汗の匂い、不思議な雪女の香り。


 自分から、みっともなく、年下の女子に抱きついた。


 「……なんや、目ェ覚めおったんかい」


 シラケきった、冷たい声。

 少し離れた暗闇から聞こえた。


 「凜!? ……オトン、動くなやッ!?」


 ……五代?


 不思議な冷気と香りに包まれた、メグの胸に顔を埋めながら、そっと横目で声のした方を見る。


 天井の、油で汚れた明かりとりの窓から差す月明かり。

 闇の中から駆けてくる、血に染まったチューブトップのかぐや姫を照らす。


 「……どないやねん、メグ?」


 ただ震えるだけの僕をのぞき込み、囁く五代。


 僕がしがみついてるメグに、腹を立てるでもなくそっと僕の頭を撫でる。

 思わずその手を掴むと、ちょっと驚いて握り返して来た。


 キレたのはメグの方だった。

 その手をふりほどかせ、五代から僕を隠すように身をひねると、トレードマークの馬鹿でかい声で喚いた。

 

 「知りませんっ! そんな事より、そっちのパパをなんとかしなさいよ、旦那さまにこれ以上なんかしたら、許さないんだからッ」


 「デカイ声、出すなや。消防とパトが走り回ってんねんど?」


 ダルそうな五代さんの声。

 二人が敵意むき出しでそっちを睨む。


 言われてみれば、パトカーと、消防車のサイレンが走り回ってる。

 ただ、ここからはかなり離れてるみたいだ。


 ……そうだ。後ろから頭を殴られたんだ。たぶん、五代さんに。


 ぼんやりと思い出した。不思議と恐怖は感じない。


 数メートル離れた暗闇に、明かりが点いた。

 

 違う。五代さんが、タバコに火を点けたんだ。

 百円ライターの明かりが、半目で伏し目がちに火を見つめる顔を、正面から照らしてる。


 交通機動隊の制服をまとって、バイクにまたがってる姿に、一瞬頭が白くなる。


 ……え?


 五代さんって、白バイ…… じゃなくて、青バイ隊員だったの?


 青バイってのは、大阪独自の交通機動部隊だ。

 おおざっぱに言うと、夜の白バイ。


 メグが呆けてる僕の眼を、覚ますみたいに、また怒鳴る。


 「いつまで吐いてんのよ、まな板!? ペラペラ過ぎて楯にもなれないんだから、そっちから、石でも投げてなさいよ!」


 ……そうだ、ジャス子は!?


 急いで振り返った僕の眼に映ったのは、闇に沈んだ手洗い場でえずいてる、ワンピースの後ろ姿だった。


(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。


毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。


宜しくお願いします!


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