蛇頭 vs 道産子娘
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一 (リャン・ジェンイー)
もう一人の主人公。日本名、橘 健一。リーファの父。台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花 (リャン・リーファ)
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公・林堂凜の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
ハスマイラ
二〇代半ば、女。梁の部下で、リーファの護衛。梁に惚れているが、今のところ、特に進展はなし。
王
梁の最古参の部下。スキンヘッドの大男。リーファの叔父に当たる。
チャン
蛇頭の元締め。以前、HAZEに雇われ、裏切ったエディ達に撃たれた。
大人
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
エディ・田中(五代)
五代珠乃の、血の繋がらない父。犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
ジェーン
梁の相棒。伝説の工作員。
「だから姐さん…… 梁のダンナ、身内自慢なんかしてねェよ。俺の方から聞いたんだから」
私の脳裏に爽やかな風が吹き抜ける。
だよな? 私は胸の内で快哉を上げる。
コイツ、中々イイ奴じゃないか。
ヤツの対面に座る、ハスマイラの微かな舌打ち、その横顔に上から注がれる、王の胡乱な視線。
それらを受けながらも、チャンは穏やかな顔付きで、紅茶を啜る。
そうして、意を決したように、ハスマイラと視線を合わせて言った。
「それに、王のダンナもだ…… 年寄りの相手、マジで大変なんだぞ?」
ハスマイラが肩を大げさに竦め、眼をぐるりと回して煽る。
「ハイハイ、知ってますぅ。話長いッスし、お節介でヒマもてあまし……」
チャンが鋭い目つきで首を振る。
「そんなんじゃネェ。ババアとか、王さんみたいな強面の、マウント取りたがるんだよ。『アイツ、アタシの前ではからっきしだよ!』とか、周りにフカす為にな」
「なんで知ってんの!?」
周囲がギョッとするほどの大声を出す、王。
そんな王の態度に、肩を竦めたまま、凍り付くハスマイラ。
チャンは顔を顰めて頷いた。
「それだけじゃネェ…… 懇親会とか行事の度に、酒の席でイジられて…… 酔っぱらったジジイ共に、バンバン頭や顔、殴られてよ……」
ほとんど尊敬の眼差しで、チャンを見下ろしている、王。
あの、ハスマイラがあんぐり口を開けている。
私もだ。
……そうなのか?
「本物だ…… コイツ…… いや、彼、本物だよ」
呆然とうわごとを漏らす王に、少しだけ微笑んでから、俺達に向かって身を乗り出すチャン。
「じゃあ、なんでこんな偉丈夫が、そんな屈辱に耐えてるか…… 分かるだろ……?」
難しい言葉知ってんな?
ホントは高学歴だろ?
そっと声を落とし、優しく囁くチャン。
「娘だよ…… 奥さんにゃ悪いけど、全部娘さんの為なんだ…… 自分のせいで、娘に友達がいなくなるくらいなら、どんな拷問でも耐える覚悟……」
眼に涙を浮かべている王を見上げ、そっと肩を叩く。
「ドンパチより、ずっと地味でツライ戦いだ…… マジ尊敬するワ」
王が顔を覆って、男泣きに泣く。
ハスマイラ、眼が点になってて、口が四角い。
きっと私もだ。
「誰も…… 分かってくれないし…… 家族に言ったら心配するし……」
途切れがちな王の言葉に、チャンが訳知り顔で、うんうん頷く。
「だよな、辛かったよな? だから、写真見せてくれって言ったんだよ…… 家族で笑ってる写真をさ? ハッピーエンドが見たかったんだ」
テーブルに突っ伏し、号泣する王。
チャンは俺達に眼を戻す。
反射的に、身構えるハスマイラ。
いや、物理的に身構えるんじゃない、両手をチョップの形にすんな。
褐色の顔から、夜目にも血の気が引いている。
当然だ。
あの、冷静沈着な王が落とされたのだから。
これで、王は間違い無くチャンの味方をする。
写真のDLを依頼したことを、むしろ誇りに思うだろう。
ワカルのだ。
何故なら、私もそんな気持ちになりつつあるから。
テーブルに伏せたまま、自分のスマホにそろそろと手を伸ばす王。
ハスマイラは、その手をハタくと、あわててスマホを回収する。
あ、俺のまで。
ハスマイラ的には悪夢だろう。計画が大幅に狂った。
余裕の無い顔で、周囲に視線を走らせ、チチッと舌を鳴らす。
野外戦での仲間へのコールサインだ。
遠巻きに眺めていた、隊員達が一斉に立ち上がった。
ドン引きするウェイトレスへ、にこやかにソーリー、各々の食器やカップを持って、俺達のいるテーブルの周りに集結する。
黒スーツでポニテ、いつも通りの彼女だが、表情が固い。
ハスマイラは物量作戦に出た。
国籍もまちまちな、隊員達が、チャンに鋭い視線を投げかける。
全員、歴戦の猛者ばかりだ。普通の人間なら縮み上がる。
実際、遠巻きに店長とこっちをみてる、ウェイトレスの娘も真っ青だ。
だが、チャンもまた修羅場を潜り抜けてきた、蛇頭の頭。
バカだったら、とっくに殺られている。味方に。
チャンは周りを見渡してから苦笑した。
「おいおい、なんだよ、コエエな……」
そういいながらも、どこか余裕を感じる。
そうだ、ハスマイラらしくない、悪手。
それくらいに、彼女も追い詰められている。
間違い無く、チャンも気づいている。
……っていうか、チャンを放り出せば済むことなんだが。
何、ムキになってるんだ?
「へえ…… 姐さん、娘さんのボディガードやってんのか…… それ、家族も同然だな」
断りを入れ、トイレに立つ王に手を振りながら、チャンは呟く。
探りの入れ方が、ゲスくないのは流石だ。
『ボスのオンナ』等と言ってたら、ハスマイラにチョキで眼を突かれていた所だろう。
ハスマイラは無言。つかむ尻尾を見せないつもりだ。
周囲からの無言の圧もどこ吹く風で、チャンは笑う。
「でも、梁のダンナ、大助かりだろ? 姐さん来てから、『出掛けるのか』『帰ってきたのか』『どこ行ってたんだ』とか声を掛けても、娘さん、怒らなくなったんじゃねえの?」
「誰から聞いたんだ!?」
私は思わず、背もたれから身を起こして、叫んでしまった。
そうだ、コミュニケーションを取ろうとすればするほど、ウザがられて、どうすれば分からないかった日々。
頭を掻きむしり、飲む酒の量ばかりが増えていった。
正直に言おう。
あの頃、娘と顔を合わすのが怖かった。
笑いたければ笑え。
娘を持つ父親なら分かるはずだ。
チャンは、心外そうな顔をして言った。
「ワカルに決まってんじゃん…… 逆に、なんでワカラないと思ったの?」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





