大人(ターレン) ~プロローグ~
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一 (リャン・ジェンイー)
もう一人の主人公。日本名、橘 健一。リーファの父。台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している
梁 梨花 (リャン・リーファ)
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公・林堂凜の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
ハスマイラ
二〇代半ば、女。梁の部下で、リーファの護衛。梁に惚れているが、今のところ、特に進展はなし。
王
梁の最古参の部下。スキンヘッドの大男。リーファの叔父に当たる。
チャン
蛇頭の元締め。以前、HAZEに雇われ、裏切ったエディ達に撃たれた。
大人
犯罪組織、HAZEの元締め。リーファの祖父。梁に根深い恨みを持つ。
エディ・田中(五代)
五代珠乃の、血の繋がらない父。犯罪組織、HAZEの創始者。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
ジェーン
梁の相棒。伝説の工作員。
どうにも、上手くいかねえ。
寂れた工場街。
そんな事務所にお似合いな、ステンのマグカップを見つめたまま、俺は脳内で呟く。
雑然とした、場末感で満ちた室内。
空調が効いてるのだけは救いだ。
二日酔いで頭が重く、全身が酒臭い。
ここは、東大阪の工場街。
借り手のない、貸し工場を、我が社が改築して支部にした。
うらぶれた工場の外見はそのままに、内部だけを改造している。
先日、エディが隣の武器庫で装備を調え、今里のボドイの塒に潜伏するISIを、捕獲した。
安心して酔っぱらえる場所となると、近辺では、ここしか思いつかない。
……自宅のマンション以外では。
珠乃の店に呼び出されたのが、昨日。
娘とハスマイラを降ろすと、そのまま部下にここまで運ばせた。
とてもじゃないが、娘と顔を合わす気にならない。
ましてや、珠乃の店で、『HAZEの頭は、オマエの祖父だ』といいかけた。
皆の機転で乗り越えられたが……。
いずれは言わなくてはいけない……のか?
何であれ、今だけはゴメンだ。
これ以上厄介事を抱えるのは、カンベンして欲しい。
……昨日の娘と珠乃の果たし合い騒ぎ。
大人がリーファの祖父だって判明したときより、堪えた。
時刻は……。
時計を探しかけてやめる。
知ったことか。今日は店じまいだ。
俺は残り半分を切った、ワイルドターキーの瓶に手を伸ばす。
酒は何でも同じだ。
旨いと感じるのは、最初の一杯だけ。
後は惰性。
まして、最悪の気分を誤魔化すために、飲んでるんだ。
ケンタッキーバーボン特有の強い香りも、軽い吐き気を催すだけ。
かすんだ目で、アルミのマグに注がれていく琥珀の液体を見つめる。
トポトポという心躍る音は、これだけ量が減ると、もうしない。
どのみち、心なんざ踊るワケがねえ。
こないだまで、日本に馴染めず、指をしゃぶって泣いてた娘が……。
梁の家名を背負って、HAZE創設者の娘と殺し合うトコだったんだ。
考えただけで、鼻と目頭が熱くなる。
俺には、いつも素っ気ないリーファ。
彼女が俺の過去に、そこまで責任を感じてるとは、想像もしなかった。
そもそも、そんなマネをするハメになったのも、俺の部隊がエディの妹を殺したからだ。
北朝鮮との国境沿い、中国・延辺地区。
北が密かに操業していた、麻薬工場を急襲した際、銃撃戦で死んだ。
エディの妹が、民間人じゃなく、兵士だったのが、せめてもの救いだ。
銃を持つ者同士なら、この一言で終わる。
『恨みがあったわけじゃねえ…… 戦争だったからな』
もちろん殺られた側は、そんなので納得しやしねえ。
だから、エディはHAZEを立ち上げ、しつこく俺とその周りを狙ってたんだ。
だが。
今回のことは、エディにとっても青天の霹靂だった。
つまり、俺とエディは、娘達の本心も分からねえ、父親を名乗る資格の無いバカだったって事だ。
「……梁。俺にもくれ」
数メートル離れたボンボンベッドでねそべり、目を腕で覆っているエディが掠れた声で言った。
周りには、ストロング缶の500ミリ、正真正銘の安酒の缶が、だらしなく転がっている。
俺は安物のコマ付きイスに腰掛けたまま、ターキーの蓋を閉めると、雑にコンクリの床へ放り出した。
割れたら割れたで構わねえ。
傍まで転がってきたソレを、手探りで拾い、蓋を開けるとラッパ飲みする、エディ。
酔えないんだろう。
俺と一緒で。
昨夜10時頃に、コイツから暗い声で、連絡があった。
『居場所があらへんでな。こないだの事務所で酒でも飲まへんか?』
ムカついて、iPhoneを握りつぶしそうになった。
俺は、オマエの友達かよ?
テメエが珠乃の事、ちゃんと見てねえから、こうなったんだろうが?
親バカなだけで、何も見えてねえじゃねえか、呆れるぜ。
呪詛は全てブーメランで返って来た。
俺は言った。
『銃は持ち込むな…… 自分の頭を撃ち抜きたくなるからな』
だらしなく酒瓶を握った腕を垂らす、ラフな服装をぼんやり眺める。
ここのところずっと、頭から離れない問題。
大人の居場所。
HAZEの動向。
そして、山奥の朽ちた置屋でマネキンが告げた言葉。
『HAZEは今や、オマエを憎む者の集団ではない。梁家、マフディ、林堂家に遺恨を持つ者の集合体だ』
林堂家。
凜くんの父親である、ジェーン。
その正体がばれているのか?
もちろん、ジェーンには、その事を伝えてある。
返って来た答えは、冷静そのものだった。
『HAZEと大人を無力化するまでの間、妻の警護を頼む』
ヤツもまた、我々と同じ十字架を背負っている。
仲間の救出と、悪ふざけをするために戦場へと赴く、伝説の戦士。
今回は本気だ。
家族の命が懸かっているのだから。
当然、ナディアくんの父親、アリも参加するだろう。
彼の背後には、バロチスタンの豪族、マフディ家がついている。
問題は、敵の中に無尽蔵の資金を誇る、『国家』がいると言う事だ。
北朝鮮、そしてパキスタン政府。
我々を殺すことに、執着してる度合いによって、対応の度合いが変わってくる。
「なあ」
目を覆ったまま、エディが言った。
「俺が殺る…… オマエも、王も無理すんな」
大きなお世話だ。
俺はため息をついた。そう、強がる気力がねえ。
それに、王は大人の実子だ。
アイツにだけは、殺らせるわけにはいかない。
俺は言った。
「気を遣わせて悪い…… だが、大人は俺が殺る。アイツさえ死ねば、問題の八割は片付くんだ」
(* .ˬ.)) 今日も、お付き合い頂き、ありがとうございます。
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





