色素うっすい枝毛のカタマリぶら下げてる場所、ちょっとはミソが入ってたんだネ!
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
吉田カナト(カナト)
五代の近所に住んでる、小4、男子。
大人しく、クラスでイジられている。
「あのお店、二度と行かない!」
ぷんすこ怒りながら、ベビーカーを押すリーファ、後ろを付いていく僕。
午後三時を回った、スーパーのそば、帰宅途中。
「いや、いつものコトじゃん。特にオマエ、そんなカッコしてるし」
「アンタが、気の抜けたナリで来るからだろ!? 半袖半パンって、いくつダヨ!」
「小六やがな…… むしろ、いくつのつもり?」
……なにげに気になるワードがあったって?
うん、カナトが昔使ってたベビーカー、わざわざユリさんに引っ張り出してもらったらしい。
分かってる。
赤ちゃんいないのに、こんなの押してたら、ものすごく気の毒な人にしか見えない。
だから、今日のリーファはとても気の毒なヤツに思えた。
これに、赤ちゃん人形か、ぬいぐるみでも乗せてたら、カナトんちに回覧板まわってこなくなる。
スーパーが割に近くて、荷物を置く台車代わりだって言い張るから、八分にも及ぶ言い合いの末、折れました。
……僕の自転車のかごでいいじゃんよ。
ただ、確かにベビーカー、しっかりした屋根付きのヤツで、雨も日差しも防げるから、荷物を運ぶのには優秀だ。
今日は、生鮮食品や、冷たい飲み物なんかも買ったしな。
生活道路に沿って立ち並ぶ一戸建て。
カナトんち、もうすぐそこに見えてきた。
角を曲がって二〇mも行けば、五代んちだ。
不機嫌だった、リーファの顔が、いつの間にかゆるんでる。
なんで?
あ、分かった。
カラカラ音を立ててる、ベビーカーを見下ろしてるからだ。
「ね、凜…… カナト、赤ちゃんの頃、コイツに乗ってたんだよ? 可愛かったろうなあ」
「いや、そりゃ乗ってただろ」
リーファはまた不機嫌な顔に逆戻り。
ちょっと赤くなりつつ、僕をニラむ。
「反応うっすい……なんでそこで、『僕達も早く子供が欲しいよね』って言えないんだよ?」
「大丈夫? 病院行く?」
相棒は、盛大なため息をついた。
「そう言うのいいんだよ……もう気づいてんだろ? これ、新婚生活のシュミレーションだから」
「聞いてないよ!? 変なセミナーじゃないんだから、後出しでカムアウトするのやめて!」
そっと顔をそらし、さらに赤くなった横顔を見せる相棒。
「いいから、さっさと帰ってお茶にしよ……パパ」
パキパキと音を立てて、全身が凍り付く。
「冗談でもやめろ! 自分がマダオ扱いされてるみたいで、コエエんだよっ!」
相棒の動きが止まった。
次の瞬間。
リーファは真っ青になったかと思うと、僕の口をふさぐ。
驚いたのは一瞬、僕は気持ちを切り替え、背中に回していたワンショルダーバッグを胸の前に持ってきて、右手を突っ込む。
HAZEか?
M36チーフスペシャルのグリップを握り、戦闘態勢、リーファを庇う位置に立とうとした。
けど、相棒から感じる違和感。
白い顔に浮かんでいるのは……隠し切れない、恐怖だ。
おかしい。
相棒が普段笑わないのは、ヤバイ局面でビビらないようにするためだ。
その甲斐あって、リーファは危険な時ほど、能面になる。
あ、今気づいたけど、五代もそうだ。
相手が手強ければ、手強いほど、恐怖を味方にして慎重になるのが、僕達……。
「……ナー達だ」
手強いが過ぎるだろ!?
そりゃ、青くもなるワ!
僕なんかチビりそうだもん!
え、なんで?
なんでなんでナンデ!?
『ナー達』……
店の場所知ってんの、こないだ店に来た、ナディアと、ジャス子……。
冗談じゃねー、最凶コンビじゃねーか!
近づいてくる、軽い足音と、まさかの声。
「……こっちから、旦那様の声が」
訂正。
『最狂トリオ』じゃねーか!
どんな組み合わせだよ!?
僕とリーファは一瞬だけ眼を合わす。
次の瞬間、相棒は音もなくブロック塀を乗り越え、僕は金属製の門を飛び越える。
もちろん、知らない人の家。
「あら? ベビーカーが……」
拍子抜けしたような、メグの声。
僕とリーファを守ってくれてるのは、ブロック塀の仕切りだけ。
「なんじゃ、食材入ったままじゃの?」
「あ、これ赤ちゃん抱っこする方が、重さ的にマシな時、お母さんがやるヤツだ」
心臓の鼓動が痛い。
ナニコレ?
鬼女大集合じゃんか。
メグの納得いってない声。
「この家のお母さんかな……おかしいですぅ。メグが旦那様の声、聞き間違うはずないのに」
「……オイオイ、『旦那様』って、この辺にも投げ銭してくれる下僕がいんのかよ? それに、着エロジュニアアイドルなら『お兄ちゃん』呼びが鉄則だろ、相手がキモいおっさんでも」
ホホホと笑う雪女。
「あらん、いたんだ? ペロペロに薄っぺらいから、見えなかったですう。業界のすみっこに興味津々だったら、怪しい事務所、紹介するよ? そのスレンダーなスタイル(草)、九歳で通じそう!」
……ヒデェ。
僕は音がしないように生ツバをのんだ。
よくも、マア、ここまで邪悪な煽りを思いつくよな?
女子、マジでヤバい。
隣のリーファも震えている。
あの切れ味鋭い刃物が自分に向けられると考えれば、なおさらだ。
ジャス子が朗らかに言った。
「よし、死んどくか、チビッコ女優? ここなら、凜のママもいねえし」
「まあ! 色素うっすい枝毛のカタマリぶら下げてる場所、ちょっとはミソが入ってたんだネ! いいよ、松竹梅、どんな死に方したい……ってナディアさん?」
「さっきから、何、人んちの食材見てんの、ナーさん? 生肉はやめとけよ?」
「……いやの」
上の空の声。
次の瞬間、僕とリーファは凍り付く。
「このベビーカーの、飲み物チョイス……凜と、リーそのものなんじゃけど?」
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!
(* .ˬ.))





