AKIRA、キティに、ゴロピカドン
《登場人物》
梁 健一 (アシュラー)
台湾人。名門、梁家の次男。
民間軍事組織、イージス・システムの社長で、戦闘狂。
梁 梨花の父。
エディ・田中(Joker)
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
五代珠乃の父。
香咲 アリ=マフディー(パンサー)
パキスタン人。バロチスタンの名門、マフディ家の長男。
神の声が聞こえるギャンブラーで、凄腕の暗殺者。
香咲 ナディアの父。
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
深夜の1時過ぎ。
エディ達が座り込んでいる和室の隣。
きぃこ きぃこ
薄暗い、裸電球の下。
埃っぽい、4畳ほどのスペースで、絣の着物をきた、柔術ババアが足踏みミシンを回していたのだ。
四角い横顔からは、なんの感情も読み取れない。
チューンアップでもされているのか、岩盤に鉄の杭を打ち込む勢いで、ドカドカ叩き込まれる針。
それが、俺の着てたズボンで、ケツの所にゴロピカドンのアップリケが、縫い込まれて行くのを見た俺は、母国語で吼えた。
「去死吧!」
本気で放った右の回し蹴りが、後頭部の残像をすり抜け、ミシンの本体を破壊する。
鋳鉄を蹴り飛ばした臑の痛みも、感じない程のマジギレだった。
「どこまでも、フザケやがってェェ!」
低い姿勢で軸足に飛びついてきた、ババアの勢いに押され、仰向けで倒れる。
「逝けや、妖怪!」
もがきながらも、もう片方の足裏を、無表情な顔の真ん中に飛ばす。
当たれば、大の大人でも殺せる。
軽くそいつを払っていなす、ババア。
しわくちゃの奥に、嵌め込まれた双眸が迫る。
上等だ、コラ。
頭突き。
顎を引き、迎え撃とうとした。
「うわあああ!」
迫り来る、頬を染めたタコチューに俺は絶叫を上げ、みっともなく背中を晒す。
間髪入れず、首に巻き付く腕。
「ごぐっ」
鋼のような細腕の感触と、抹香臭さで呼吸が止まる。
「俺らとおんなじ、やられ方しとるワ……」
負け犬そのものな顔で、力なく呟くエディ。
畳に広がっている、二人のズボンも、俺と同じ目に合っていた。
エディはキティちゃん。
アリは、AKIRAの金田が着ていた、ジャンパーと同じ、薬のカプセル。
え……ケツに、じゃなければカッコよくね?
「だずっ、げろ!」
座り込んだままのアリが、冷たい目で言った。
「ムリだ。二人とも足をやられてて、立てない」
「落とされた後に、アキレス腱固めでな……みんなで同じ穴に落ちて、どないすんねん」
なら、先に忠告しろよ!?
視界が白くなっていく。
俺は、着替えとして置かれていた、ピンク色のすみっこぐらしハーフパンツを握りしめた。
明らかに、ユリか、ミナのだ。
こんなマエがくっきり浮き出そうなサイズのボトムを着れるか!
初期のアクセル・ローズじゃねえんだぞ!?
……脳に酸素が回らず、気持ちよくなってきた。
こんな、小学生くらいのタッパしかない、ババアに落とされたら、部下に示しがつかねえ……。
「何、やってんだい、トメ!」
その声と同時に、締めがゆるむ。
俺は、最後の力を振り絞り、転がって離れた。
急に血流が回り出し、頭がガンガンする。
「また、ミシンを……アンタは余計な事したらアカンって、さっき言うたやろ!」
白塗りババアが怒鳴るのを、初めて聞いた。
もういい。
俺は、テーブルの上のポットを掴んで振り返り、正座して俯く、柔術ババアに血走った目を向けた。
ここまで、恩を仇で返すヤツらは初めてだ。
脳天へ、鈍器を叩き込む為に踏み出した足と腕を、アリ達に掴まれる。
「ボケた婆さん殺すんか? 娘に何て言うねん」
先日、エディに言った台詞が、ブーメランで帰ってきて、やっと俺は我に返る。
白塗りババアが、申し訳なさそうに言った。
「迷惑ばっかかけてもて、ホンマ、恥ずかしいワ。孫の恩人、来てくれたし、張り切ってただけなんやけどネェ……」
俺は、歯を食いしばり、握っていたポットをぶん投げたい衝動と、必死に闘う。
……疲れた顔のエディとアリを見ながら、ここに至った経緯を考えると、流石に申し訳なくなってきた。
こんな目にあっても、やはり、ユリ達を助けた事は後悔できない。
娘と同じくらいの子供を見殺しにしたら、一生後悔しただろう。
だが。
助けるまでは良かったとしても、俺が、ユリとミナを気に掛けすぎたせいで、エディ達を巻きこんじまったんだ。
耳は痛いし、昨日から色々ありすぎて、限界だった。
「……スマン、オマエラ。今日はもう解散しよう」
「……せやな」
アリも憔悴した顔で頷いた。
俺はガンガンする頭を押さえ、自分の不運を呪う。
この服で帰んのか……
隣に住んでる、ミナの母に目撃されたら、間違い無く通報される。
ちらり、と白塗りババアが背後を見てから、ipadを持って寄ってきた。
「お詫びと言っちゃなんやし、孫達を裏切るのは、心苦しいんやけど……」
俺は、険しい顔をババアに向けた。
「もういい、何もするんじゃ……」
「このコ達なんかどうかね?」
かざされたipad。
時が止まる。
数秒の静寂が部屋を支配した。
……そして。
ウオオオン
そして、俺達はうねる。
なんの飾りもない無機質な紺の背景。
但し、張り付けられてる6枚の写真は、掛け値なしの美女揃いだった。
「さっき言うたやろ? 雄琴でこういう関係の仕事しとったんや。今は、会員制、基盤アリのデリやっとるんやけど……」
「うおお、神、神やんけ!?」
「ソウっ、神よ、御照覧あれ!」
「静かにしろ、ガキどもに聞こえる!」
そう叫びながらも、俺は、全員20代らしい、素顔を晒した写真の一枚に釘付けだった。
ショートヘアーが緩く流れ、微笑んでる顔を、飾る一枚に。
会った頃の元妻に、よく似ている。
疲れ切った俺の体に火が点いた。
……なんてこった、こんな商売をさせとく訳にはいかねえ。
俺は誰よりも早く、その写真を人差し指で押さえ、ガン見している獣どもの視線から、彼女を守る。
二人から、クレームが湧かねえとこをみると、他の嬢が推しらしい。
白塗りババア…… もとい、ウメ婆がホッとしたように囁く。
「ユリ達には内緒にしとるんや…… 気に入ったコ、おるか?」
俺は、エディ達が、アツく抱き合うのを眺めつつ、態度を改め言った。
人助けはしとくもんだ。
「ああ…… 長い付き合いになりそうだな、バアさん」
評価、ブックマークなど、是非、よろしくお願いします。
(* .ˬ.))
(下にある星のマークです。また、『小説家になろう 勝手にランキング』の文字を押していただけたら、ランキングサイトの評価が上がりますので、ありがたいです)
毎日深夜0時過ぎ、週7更新を目標にしてます。
宜しくお願いします!





