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フライパン・ガール 2〜シェフの五発中、一発はノーダメージだって知ってた?〜

《登場人物》




 林堂 凜


 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。






 香咲 ナディア=マフディー


 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。






 梁 梨花リャン・リーファ 


 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。



オリガ


日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。







 ジン


 クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい。




 


 佐竹


 クラスメイト。女。クラスのボス。




 


 鈴香 


 ナディアの姉。高校生。






 香咲 ヨシヒコ=マフディー


 ナディアの父。パキスタン人。




 お館様


 ナディアの祖母。ヨシヒコの母。




 オスマン


 ナディアの叔父。




お尻で後退っていたオリガに、包丁を捨てたナディアが襲いかかった。


慌てて蹴り離そうとしたオリガの長い足を軽く払うと、ダイブしてサイドポジションから抑え込んだ。


マズイ!


慌てて僕も駆け寄ると、床で倒れかけた、オリガのラーメンの容器を間一髪で掴みあげる。


「そっちかよ!? タスケロ、リンリン……ギャハハ、やめ、ヤメロお!」


悲痛な声をあげて身をよじるオリガ。

ベッタリとくっついて、左腕を手で、右手を胴体で押さえつけられたオリガ。

残った片手でナディアが脇をくすぐっているんだ。


首まで真っ赤にして全力で足をバタつかせている。くすぐられるのに弱いらしい。


「リー、コイツくすぐられるなら、クマにかじられる方がマシっちゅうくらい、だめなんじや。やっときんさい」


「まて、ヤメロ、コロス……いや、死ぬ!」


「んじゃ、せっかくだから」


リーファがオリガの白い足をガッチリ抱えると、裸足の足裏をくすぐり始めた。


「ギャー!」


熱湯でもぶっかけられたかのように暴れるオリガ。自由になる腰だけバタつかせて、抜け出そうとする。

だけど、二人とも力強いんだよなあ。


もうなんか、ホラー映画でゾンビに襲われるモブみたいな顔してて、こっちが心配になってきた。


「言う!何でも言うから、ヤメロ!やめて!」



「……無茶するなあ」


オリガの話を聞いた僕は呆れて言った。


スマブラ、SPはあんまりやったことないから、偵察ついでに5先の相手に教えてもらおうと考えたらしい。


そのためだけに、日本に来るか?


ベランダの窓の外は星が光始めている。

オリガはぺったり座り込み、汗まみれで、しゃくりあげていた。


二人に泣くまでくすぐられたからな。


いつでもナディアとリーファが押し倒せる間合いにいる。反撃する気力もなさそうだけど。


信じられなかったけど、オリガもデラ勢だった。

自分の知らないとこで、ブームが来てるのかと、かなりあせったけど、理由を聞いて納得した。


オリガは元々、ナディアが昔里帰りした時にあわせて雇われたんだけど、条件が、


1、ナディア達と年が近いこと


2、日本語ができること


3、ナディア達の遊び相手になれる事


だった。

期間は1年以上。

親のツテで、オリガは働くことになった。


問題はパキスタンの田舎で住み込むことだ。

どんなに給料が良くても、日本から十代の女子が来るなんてありえない。


「あんな、スラムに行くバカ、ワタシみたいなビンボー人くらいだよ……あー食べるよ、モッタイナイもん」


泣き腫らした目でラーメンを啜りながら、オリガが吐き捨てた。


ナディアたちは困った顔をしている。

二人ともお金に困った事はなさそうだし、引け目をかんじてるのかな。


「うちを逃した後も、ロシアに帰らんかったんか」


「そりゃ、お館さん、ナディア達の事、諦めた訳じゃなかったし……」


流しに中身を捨てて、カップを放り込むとオリガは言いにくそうに続けた。


「アラー、アラーうるさいだけで、悪い人達ジャナイヨ。田舎者だからシカタナイ」


ナディアが顔をしかめた。


「賛成はでけんの」


「ムスリム以外は地獄に落ちると思いこんでるから必死だったんだ。ワタシも毎日言われるよ。仲良くなればなるほどね」


ポツリと言った。


「ナディアのパパのスーサイドベスト……お館様かわいそうだったヨ」


沈黙が落ち、急に窓の外の道路のうるささが気になった。

「アンタ、ホントはなんのために、越してきた?偵察のためだけに凛のマンションまで来るって信じてないよ、誰も」


疑り深いリーファの視線に、オリガは肩をすくめた。


「うん、メロメロにして言うことを聞かせてやろうとしたけど、命に関わるからヤメタ。プランBは無い」


入り口のほうを顎でしゃくって、オリガは言った。


「今から考える。だからカエレ」


デスマスクみたいに無表情になったオリガ。


やばい、このままじゃ、ホントに絶交状態だ。


ぼくは、彼女が嫌いになれそうにない。立場が敵なだけで、話聞いてたら……イイヤツじゃん。


ぼくは、一番気になることを聞いた。


「オリガ、ここに一人ですんでるの?学校は?」


「関係ナイダロ」


「ある。いたら、明日から来にくくなるから」


「ハ?」


オリガが、心底驚いた顔をする。


「……やっぱり」


リーファのうんざりとした呟きを無視して、ここぞとばかりに畳み掛ける。


「SP覚えたいんだろ?いいよ、やろうぜ。5先まで、3週間。毎日やらないと、ぼくの相手にはなれないぞ……逆に言えば、オリガなら、僕に勝てるかもしれない」


ぼくの顔をガン見していたオリガは、ようやく言った。


「何が目的?エッチな事?」


「アホか。一番はお互い監視できるだろ?つまんない探り合いしなくて済む。日本に引っ越して来るぐらい本気なのは分かった。もうやる気ないのかって思ってたしな」


僕は呆れているナディア、顔をしかめているリーファを振り返って言った。


「俺達、任天堂のデカイ大会に三人で出るんだ。みんなのいい刺激になる」


「その白いのも来るって!? No joking! 」


僕はまっすぐにオリガを見て叱った。


「オリガ、フライパンで殴りかかるとか、お前やり過ぎ。どんだけビビッてんだ?」


「ハ?ビビッてねえし!」


いいぞ、乗ってきた。


「ここ、日本だぞ?どんだけ安全な国か知ってる?」


「オスマンおじ、スナイパーに撃たれたよ、その白いのに。ソイツ、ギャングなんだろ?」


しまった、そうだった。


同時にオリガが、あそこまで無茶したのも納得した。

逆に言えば、オリガとリーファをなだめるチャンス。


「……違う。コイツの実家、PMC経営してんだ、中東とアフリカで。お陰で敵が多い」


「凛、なんで言うのさ?」


「お前んちはギャングじゃないからだよ」


ぼくは目を細めて話の内容を理解しようとしているオリガに向かって言った。


「悪かった。仲間撃った奴が訪ねて来たら、そりゃ逆上……クールじゃいられんよな」


よし、これでリーファもフライパンの件、割り引いて考えるだろう。


「ギャクジョーしてねえし。ワタシ、ビジネス失敗しない」


ぼくは、少し哀しくなった。


中東で、小学生未満のちびっ子が、靴磨きしてるの思い出したから。


「オレ、コノ国で一番ニホンゴウマイ!」


……そうフカして、自分売り込んでた。


「そうか、なら僕と毎日戦えよ。このままじゃ、ビジネス失敗するぞ?」


オリガがさらに険しい顔で僕を睨んだ。


……マズかったか?逆にガンコにさせちゃったか?


それまで黙っていた、ナディアが口を開いた。


「林堂、ウチらの良い刺激になるって……さっき言うたろ?ウチがここに来るのはマズいんじゃ。オリガと仲悪い事になっちょるけ」


オリガの唇が開く音がしたけど、思い直したように無言。


「オリガ、このマンション、誰か見張ってるのか?」


オリガは無言。そうか、警備の状況をバラすことになるもんな。


「オリガ、誰も何もしない。何もされない限りは。リーファがオスマンって人撃ったのも、僕らを家族ごと殺してやるって言ったからだぞ?もうお互いやめようぜ、そう言うの」


あのバカ……オリガは、吐き捨ててから言った。


「No。ワタシ一人ダヨ」


大きなため息をつくと、座り込んで流しにもたれた。


よっぽど気を張ってたんだな。


同時に、オリガの事が心配になった。

やっぱり一人だったんだ。


「小学生一人で、外国に放り出すかフツー?」


ぼくは呆れて言った。


「知らない誰かと住むよりずっとイイ」


日本まで付いて来る人いないのか……




毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


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