イスラムではダメだけど、イヤとは言ってない
《登場人物》
梁 健一 (アシュラー)
台湾人。名門、梁家の次男。
民間軍事組織、イージス・システムの社長で、戦闘狂。
梁 梨花の父。
エディ・田中(Joker)
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
五代珠乃の父。
香咲 アリ=マフディー(パンサー)
パキスタン人。バロチスタンの名門、マフディ家の長男。
神の声が聞こえるギャンブラーで、凄腕の暗殺者。
香咲 ナディアの父。
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
ここで、川崎の話をするんじゃねぇ!
どっからアシがつくか分かったもんじゃねえだろうが?
その言葉を飲み込み、私は無関心を装って窓の外のコンビニを見た。
「その話は後だ」
「せやな」
「……え、何? どっか遠出?」
助手席のミナが食いついてきた。
「ガキには関係あらへん……もうちょいで着くから、帰って寝ろ」
「……無理だよ」
隣に座るユリが、半笑いで俯く。
声は震えていた。
「警察から電話が掛かってきたら、どう言えばいいの? ケイとの通話履歴残ってる上に、さっき警察に学生証みせたじゃん。『誘われたけど、断りました』は通用しないでしょ?」
車内に降りる沈黙。
声だけでなく、体まで震えだすユリ。
彼女からする香水の匂いに、初めて気づいた。
「これ……絶対薬のお世話にならなきゃ眠れないヤツだよ。でも……カウンセラーに話すわけにも行かないし。りっくん怒るでしょ?」
エディは動じなかった。
「知らんがな。あんなとこ行くからやろ? 助けた代わりに、俺らの事黙ってろ言うてるだけやん。見捨てる事も出来てんぞ?」
「分かってます! でも、でも……二人でどうすりゃいいの?」
アリは何も言わない。
私はため息をついた。
「エディ、警察に見られたついでだ。そこのコンビニに寄ってくれ。オマエラ、水を買ってきてくれ……ちがう、2リットルを3本だ。家の買い置きに見せかけろ、人数がバレるからな。オマエラはいつも買ってる物を飲め」
「アシュラー、深入りするべきじゃない。大人としての責は十分以上に果たしている」
「せや。その、ケイってヤツの死んでる建物、完全に燃えとったぞ? スマホからアイツら辿られる可能性低いしな?」
防犯カメラに入らない場所に、駐めたバンの中で、アリとエディが言った。
ユリとミナはコンビニだ。
「分かってる。そもそも、俺達がホントに心配しなきゃなんねえのは、大人だ」
「その通り。掲示板に貼られてあった、あなたたちの写真を見た。アレを警察に流されたら、厄介な事になる」
「まずないワ。本気で逮捕させる気やったら、何年も前に指名手配されとるで。さっきの検問でも、誰か特定の人間を捜してる様子やなかったしな。
自分の手でオマエを殺したくなったって、本気みたいやな……アンタこそ大丈夫なんか?」
小さく笑って首を振る、アリ。
「あの暗闇で、私を特定する写真を撮るのは不可能だ。まして、私が撃ったのは一人だけで、その死体も燃えた」
遠くで、パトカーと消防車のサイレンが聞こえる。
思ったより少ないのは、大阪府警の管轄ではないからだろうか?
ジェーンの事が気がかりだが、まずは目の前の事からだ。
「……現実問題、アイツらに、精神科へ駆け込まれるのも困る。カウンセラーに守秘義務があるとは言え、刑事事件だからな」
私はため息をついて続ける。
「乗りかかった船だ……娘なんて持つもんじゃねえな」
後部トランクで、アリが笑い、エディが運転席で肩を竦めた。
「勝手にしいな……ソレより、川崎……」
私は舌打ちをした。
なんで、アリの前で言うんだよ?
案の定、褐色のイスラム教徒が怪訝な声を上げた。
「川崎? 神奈川のか?」
エディがハンドルを指で叩きながら、ゴキゲンに言った。
「せやで。理由はお察しやろ?」
アリの声が険しくなった。
「色街か……」
俺は、10メートル以上離れた、コンビニを見つめながら、エディを責めた。
気を遣っているのか、ユリとミナが雑誌コーナーを漁って時間をつぶしている。
「オマエ、口軽すぎんだろ!? この話ナシにすんぞ……」
エディが運転席から振り向き、遮るように言った。
「まあ、待てや、梁。口のカタい同志は多いほうがええやろ?」
俺は鼻を鳴らして、横を向いた。
あまりに、碌でもねえ一日すぎた。
「そもそも、もう、そんな気分じゃねえ。耳の治療もしてえし……」
「ほ。具なしカレーが待っとるし、か?」
俺は黙り込んだ。
忘れてた。後4日は続くんだ。
ハスマイラは、やると言ったらやるヤツだ。
ここぞと畳みかけてくる、元・工作員。
「んで、その後どうすんねん? なんかエエ事あんのかいな。おま、そのハスマイラって秘書に、財布とキンタマ握られとるんやろ……怒んな、俺も珠乃に首根っこ押さえつけられとんじゃ。そこでや……」
エディは声を潜めた。
「川崎は現実的やない、次にしよ……雄琴でどうや?」
脳を揺するほどの衝撃。
私は思わず唸った。
滋賀の雄琴。
日本で五本の指に入る風俗街。
おれも、未体験。
だが、それがいい。
確かに、高速を飛ばせば、2時間も掛からない。
アリのバンに乗ってるのも、大きなアドバンテージだ。
本部の網に掛からない。
耳の痛みは我慢できる。
明日から四日間、また、具なしカレーの刑に、諾々と従う屈辱を思えば。
こっそりとは言え、ハスマイラを出し抜けば、だいぶ溜飲が下がる。
ほとんどその気になりつつある、俺に悪魔がトドメを刺した。
「エエか? 息抜きってのは、それどころじゃ無い時に、自分をそこから引っぺがしてやるもんや。己に負けたらアカン」
……悔しいがその通りだ。
その時。
トランクスペースに、座り直したアリが、真剣な声音で言った。
「待ちたまえ。私を巻き込むつもりか?」
私は顔を顰めて、エディを横目で見た。
何故か笑っている、珠乃の父。
釣り師が魚を、詐欺師がカモを引っかけた時の様にほくそ笑んでいる。
声を張り上げるアリを初めて見た。
「イスラムの教えでは婚外交渉は許されない!」
だが、コンビニの明かりだけが照らす薄闇の中で、彼の手に光るiPhone。
メッチャ加工された女性のサムネイルが、沢山映っているのは何故だ?
「えー。資金足りへんから、仲間欲しかってんけどなー。アラーの教えは知らんけど、マフディ、友達見捨てへんねやろ?」
「こんな時に、一族の掟を持ち出すのは違うぞ!」
食い気味に吼える、ナディアくんの父。
顔を逸らして、ぼやくエディ。
アリに見えない角度でニヤつく。
「わかったがな、無理にとは言わんし」
「無理とは言っていない!」
めんどくせえ奴だな、コイツ!?
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