金髪人魚は、海に帰る
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
ジャスミン・マーカス
アメリカ人。小5。女。
スマブラ団体戦・大阪大会、決勝の相手チームだった。
紆余曲折を経て、主人公が大好きになる。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
吉田カナト(カナト)
五代の近所に住んでる、小4、男子。
大人しく、クラスでイジられている。
オリガ・エレノワ(オーリャ)
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
9月の青空が、吹き抜けになった空間から見えた。
海をイメージした青い光が、水面で反射して、白いプールサイドを、下から照らしている。
ホテル・シェラトンの、屋上プール。
人かげはまばらで、子供は僕達だけ。
想像してた様な、ゴージャスさはなかったケド――ホラ、ねそべって、グラスに果物刺さった、飲み物吸ってる、カンジのあれだ――
ここに来るまでの、ホテルの雰囲気や、ジャス子の泊まってる、部屋の高級さに、ドン引きしていた。
プールの塩素、水の音。
これに、ビーチサンダルの匂いと、鼻の奥の痛みをプラスしたら、夏が来たサインだ。
もう、9月だけど。
「リンー!」
50メートルプールの反対側に立ってる、ビキニ姿のジャス子が、ブンブン手を振ってる。
パラシュートみたいな、ネオンオレンジで、上下とも、フリルがついてる、セパレート水着。
ほっそりとした白い手足、満面の笑顔。
海外のおじさん、おばさん達が、目を細めてそれを見てる。
僕は、ジャス子の用意してた、水着とTシャツ姿で、白い椅子から、小さく手を振る。
アイツといると、目立つんだよね。
キョロキョロと、監視員がいないのを確認すると、頭からダイブする、年下のブロンド。
見とれるような、フォームが、周囲の視線をフォーカス。
写真コンクールに、『夏』のタイトルで、出せそうな、シーン。
浅いのに、アブネーって!
一瞬あせったときには、銀色の水しぶきが、青い空間に飛び散った。
飛び込み禁止のハズだけど、周囲から、負の感情は感じない。
明るい、金髪美少女の役得?
オイオイ、と思う間もなく、元気のいい、クロールで、ガンガンこっちに迫る、ジャス子。
速いな。
僕は、泳ぎが得意じゃないから、素直にソンケーしちゃう。
あっという間に、こっちサイドの壁にタッチ、
「うお〜」
呪いの言葉っぽく、うなりながら、上半身を引き上げた。
水滴のしたたる、ブロンドをかきあげ、威風堂々、歩いてくる。
なんていうか。
超一流ホテルに、全然見劣りしてない。
いいなあ。
庶民の僕は、居心地悪いったらない。
僕が、ぼんやり見上げてると、ジャス子は、目の前に立った。
塩素の匂いに混じって、ミントの香りがほのかにした。
ジャス子の匂い。
ちょっとドキリとする。
「凜、泳がないの?」
小首をかしげる、ブロンド天使。
青い血管の見える、白い肌の上を、無数の水滴が流れる。
僕は、申し訳ない気持ちで、言った。
「泳ぎ、下手なんだ」
「そっか」
気にした風もなく、スタスタ近づいてくる、びしょ濡れのビキニ。
「よいしょ」
当たり前みたいに、僕のヒザに座る。
「ちょ、オイ!?」
濡れたお尻が、太ももの上で形を変える。
うおっ、柔らかっ!
あわてて、押しのけようとする僕。
肩越しに振り返り、唇をとがらす、ジャス子。
別に、赤くもなってない。
「ナンダヨ、ちょっと休ませろよ。凜、ずっと座ってただろ?」
「んじゃ、代わってやるから、一旦、どけって!」
ジャス子は不機嫌な顔で、泳いで来た、対岸を指す。
僕達とおんなじカンジで、夫婦らしい、白人の二人が、一つの椅子で笑いあってる。
いや、絵にはなってるけど……
「あれ、夫婦だろ? 僕達とは……」
鋭い指笛を鳴らす、ジャス子。
「Hey!」
長い脚をバタつかせながら、こっちを向いたカップルに手を振る。
「おい!?」
あせる僕を、置いてけぼりに、中年に差し掛かってる、その二人も、笑顔で手を振り返してくれた。
ヤメロよ、何の仲間意識だよ!
おま、地下鉄でもそうだったけど、他人に軽く話しかけるの、以前だったら、考えられないんですケド?
サトシ 泣いて喜ぶんじゃね?
膝の上の、奥さんらしい人が、旦那の頬にキス。
それを見て、ぼくの首に手をかけ、ぶら下がって来た、ジャス子。
「支えて」
「あぶねって!」
上半身を、持ってかれそうになりながらも、間一髪、何とか支える。
軽くて助かった!
コイツ、マジで全体重、預けやがった!
後頭部から、落ちるとこだったぞ、信用しすぎだろ!?
うれしそうに、目を細める、白い顔に、一瞬、心を奪われた。
「さすが、ワタシの運命の人…… ん」
かわす間もなく、唇が重なった。
脳が真っ白。
しっかり、頭を抱えられてるから、逃げる事も出来ない。
対岸からの、歓声と指笛で、我に帰った。
何考えてやがる、人前だぞ!?
引き剥がして、小声で、怒鳴りつけようとする、僕。
出来なかった。
犯人は、涙をためた眼で、口をへの字にしてたから。
「……ねえねに、ナディア……メグ達と、どうやって仲直りしたんだよ?」
固まる僕の目の前で、涙が流れた。
ぼんやりと、リーファ以外は、みんな呼び捨てなのな? とか、どうでもいい事考えてた。
「イダッ!」
首の後ろをつねる、すねた天使。
「……やっぱりな。答えたら、泣くぞ」
答えなくても、泣き出す、ジャス子。
……ナンダヨ、コイツ。
実の兄だって、誤解させられてた、サトシが好きで。
そんな自分に絶望して、心を閉ざしてて。
その、呪いから解放されて。
僕を…… 好きだって言ってくれた、コイツは。
ヤキモチ焼きで、こんなに傷つきやすい、女の子だったんだ。
「Hey!」
向かいに座る、膝に奥さんをのせた、白人の旦那が叫ぶ。
「Your girl looks , so sad! ドーシマスカ!?」
オッサン、煽ってくれるじゃんよ?
僕の腕の中で丸くなって泣く、情けない、年下少女。
スマブラーの魂に、火がついた。
お姫様抱っこで、立ち上がる?
「……え?」
顔を上げ、目を丸くする、濡れた金髪。
遠くなった地面と、僕の顔を見比べる。
それを無視して、僕は叫ぶ。
突然の大声に、悲鳴を上げるジャス子。
「Mermaid back to sea! 」
僕は人魚を抱えて、ダッシュ。
「with…… 掴まれ!」
首にしがみつく、天使を抱えたまま、プールサイドを蹴った。
「サムライ!」
次の瞬間、僕らは水中にいた。
目を、ギュッとつむってる、ジャス子の頬を両手でつかむと、まぶたを開く。
僕を見つめる青い眼。
……そだな。
ジャス子だけ、キスも無しナシは、おかしい……のかな?
……僕は。
青く、ゴボゴボと言う、音だけの世界で、天使にキスをした。
目を見開いたままの、ジャス子。
二人一緒に、水から顔を出した時も、そのままだった。
ボウゼンと、僕を見上げる、びしょ濡れの天使に言った。
「泣くな。笑ってろ…… イヤか?」
答えず、顔をくしゃくしゃにすると、伸び上がって、キス。
周囲からの歓声と拍手に、僕は拳を突き上げた。
分かってる。
じっとりと、笑顔で汗をかきながら、僕は念じた。
ワカッテルから、今は出てくるな、カラ太郎!
我に返ったら、その瞬間、恥ずかしくて即死するから!
ギュッとしがみつく、白い体。
「……何で、そんなにズルいんだよ、屋根ゴミ野郎」
さっきより、激しく泣きながら、僕の胸で言った。
「これ以上好きになったら、死んじゃうんだぞ……誰にも、渡さないかんな?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!