君はオヤジギャルを、知っているか？
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
オリガ・エレノワ（オーリャ）
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
「……いや、待てって！ 落ち着こ！？」
僕は叫びながら、何とか五代の、ツヤのある太ももから、目をそらした。
え？ ガン見してたの、顔じゃなかったのかって？
知らんワ、気づいたら、視線が誘導されてたんだよっ！
だって、脚もお腹も、高い花瓶みたいにピカピカしてんだぞ？
オタロードに立ってる、ギャルゲのノボリ、思い出したわ！
リーファも、メグもそうだったけど、コイツ、黒眼がちで、メッチャ和風だから、余計白く見えるんだよ！
構わず、服を脱いでるらしい、布がこすれる音が途切れない。
「カブトのメス、ケツから眺めて、ハァハァしとる変態に見られたトコでなんやっちゅーねん」
いや、シツコイな？ 距離取ろうぜ、カブトムシから！
こんなトコに、五代さんが帰ってきたら、山に埋められるって、顔にハチミツ塗られて！
「あー、もう！ 悪かったよ、だから服着ろ……うぷっ」
そう叫ぶ僕の顔に、何かがかぶさった。
柔らかく、体温の残る肌触りに、心臓が跳ねる。
柔軟剤と、フローラルの匂い。
目をつむったまま、慌ててひっぺがす。
掴んだ時の形で分かった。
さっき、蹴り脱いでた、パジャマのズボンだ。
「はあん？ 聞こえんなあ」
北斗の拳の、ハート様の名ゼリフで煽る、バカ女。
「てンめー！ いい加減にしとけよ！？」
「ンっんー？ 眼ェ、つむっとったら、せっかく御開帳しとんの、拝まれへんぞぉん？ ほーれ、ホレホレ」
近づいてくる気配に、僕は顔をそらしたまま、必死で、抵抗する。
「ヤメロ、このオヤジギャル…… うべっ」
何被せやがった？
フローラルの香り…… ズボンだ！
布越しに、うっすら見える、五代の輪郭。
絶対、イヤラシク、笑ってる。
ネッチョリした、口調でハァハァしながら、囁く。
「フフ…… エエ香り、するやろ？ ちょうど、ケツの部分が、鼻ントコに来る様、サービスしといたからな？」
僕は、悲鳴を上げる。
鼻呼吸を止め、口をパクパクさせてるけど……
口呼吸は、味がしそうで、コワいんだ！
「ヤメロッ、やめてくれ！ 思い出が…… 大切な何かが、消えていくッ！」
悲鳴にコーフンしたのか、犬の様に息を切らす、オヤジ痴女。
パジャマを外そうとする僕、くすぐってそれを邪魔しながら、のしかかって来た。
「グヘヘ、もう、辛抱たまらんがな！ 払ったるで、ナンボほしいねん？」
「やめてーっ！ もう言わない、もう言わないからあ！」
3分後。
押し倒した、僕の顔にまたがり、思う様ケツで、ぐりんぐりんした変態は、
ふゥ。
満足げなため息をつくと、汚され、横倒しで泣いてる僕に、ウエメセで言った。
「ジブンも、こんな商売してたらアカンわ。オッチャンみたいな、優しい客ばっかり、ちゃうんやで？ ……少ないけど、とっとき」
ちゃりん
「マジで少ないな！？」
お腹の上にまかれた、40円を握り、目を血走らせて振り返る、僕。
眉と目をひそめ、タバコみたいにポッキーをくゆらす、ブラパン・ハラマキ姿から、あわてて顔をそらした。
「看板娘のケツ、顔で満喫しといて、どの口が言うトンんねん？ おま、こっちが諭吉サン、お迎えしたいとこやど…… あー、もう隠したから、こっち見てええで」
恐る恐る横目で見ると、ハラマキに包まれた顔が、こっちを見ていた。
「隠せよ、顔以外！」
「うっさい、オカマちゃんやのう……」
「そろそろ、ぶっ殺していい？」
立ち上がり、包帯の右手で、よく伸びるハラマキを引き下ろして、腰を覆う、痴女。
「どや？ タイトスカート」
白いワキを晒して、得意げに、バカっぽいポーズをとる、ボサボサのロングヘア。
オデコの、冷えピタが、落ちてきた。
ピンクのハラマキ、確かに、タイトスカートに見える。
アザもない、細く白い脚が、ニョッキリのびてて、似合ってる、まである。
悔しいから、ふてくされてボヤいた。
「隠れてりゃ、なんでもイイわ…… あぐらかくなよ、意味ないしな！？」
「大声出すなて、頭に響く。あ……」
パタリと、布団に倒れる、バカ女。
泣きたくなった。
僕、ここで、なにやってんだろ？
イヤイヤ、タオルケットを、掛けてやると、五代は苦しげに言った。
「オマエの相手しとったら、悪化してきたやんけ…… マジ、メイワク・バンバンやで…… ずまん、ぢょうじ、コイでまじだ！」
そう言われ、初めて自分が、五代のこめかみを、拳でグリグリ挟んでる事に、気づいた。
「分かればイイ。いいか？ 分かればいいから、寝ろ。大事な事だし、二度言いました」
マウント・ポジションから、降りながら、僕は冷や汗をかいていた。
あぶねー。
首絞めて、ネットでしか見た事無い、火曜サスペンス劇場、してしまうトコだった。
ジャス子にソレしてから、無意識にブレーキがかかるようになったんだな。エラいぞ、僕。
五代が、ワリと息も絶え絶えに言った。
「オイ、8時やんけ…… 母ちゃん心配しとるやろ、帰れや、マジで」
静かすぎる部屋で、振り子時計の音だけがしてる。
五代の代名詞になっちゃった、フローラルの香りが、薄く漂う。
「家には、連絡済み…… カナト達、来ないのかな？」
五代が、額を押さえながら、ボヤく。
「アイツの母ちゃん、看護師やから、不規則やねん。女手一つでエラいわ」
……そうなんか。
「オッケー。他に誰か来れるのか？ 朴爺さんとか、源爺さんとか？」
「朴爺は、仕事以外役立たんし、源ジイなんか来たら、ストレスで即死するわ。恐ろしい事言いなや」
五代さんの事は、聞かなかった。
カナトの口ぶりからすれば、帰って来れないんだろう。
「分かった」
僕は、スマホを取り出し、畳の上で横になった。
「Wi-Fiの、パス教えて？ ギガ勿体無いし…… あ、冷えピタ、店の冷蔵庫か？」
五代が、険しい顔で言った。
「オイ、いつまで……」
「オマエの、選択肢は2つだけ」
僕は、五代をまっすぐ見つめた。
言葉をなくした、和風美少女に、僕は告げる。
一歩も引く気は無い。
「オマエが、眠るまで僕がいるか。それとも、僕んちに来るかだ…… カナトの話、避けてたろ、オマエ？」
