Eテレ、カブトムシのテーマが、夏を告げる
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
オリガ・エレノワ（オーリャ）
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
「うおおお！？」
店の入り口、アルミ製のドアに、後頭部と背中が激突して、派手な音を立てた。
目から火花が散り、思わず叫んでしまう。
油断した。コイツが何やってたかは、ノーマークだった！
19時を回った、五代の店。
椅子と壁、わずかな隙間で、カナトに体当たりして見ろって、言った結果がこれだ。
「だ、大丈夫！？」
カナトが、僕の太ももに、両腕を巻きつけたまま、至近距離から見上げて来た。
僕は、こみ上げる嬉しさを隠して、わざと怖い顔で言った。
「大丈夫じゃねぇワ！ んだよ、スゲェ、タックルじゃんか？ 出来るなら、最初から言わんかい！」
おっし！
これ、もう、勝ち確じゃん！
僕、何にも教える必要、ないぞ？
僕は、ニヤケそうなのを、必死で押し隠して、大げさに腰をさすりつつ、ドアが凹んでないか、確認する。
ヨカッタ、無事だ。
「おー、いて。オマエも、レスリングやってんのか？」
「え…… 僕、ラグビーしか、やった事ないよ」
あ！
その発想は無かった。
ラグビーのタックルも、ルールも、よく知らんけど、今の当りの強さなら、充分以上の、武器になる！
その時、廊下の奥から、元気のない声がした。
「カナ、まだおったんか？ なんや、今の音？」
一段高い、廊下の奥から姿を現したのは、パジャマ姿の五代。
オデコに冷えピタ、赤い顔でつらそう。
ボタンを外したパジャマの下に、Tシャツと、ハラマキが見える。
ハラマキって……。
「おん？ 何で、オマエがおんねん、林堂？」
「カナトに呼ばれた。大丈夫かよ、店長？」
眉を寄せる五代に、カナトが、しょんぼりと、
謝った。
「ゴメン、重い荷物一杯だから、おねえちゃんのLINEで、勝手に連絡したの。『カブトムシのチンコ』って名前だったから、男子かなあって」
「いや、半分は女やしな？ 女装して、コカンのうまい棒、自撮りしとる、プロの変態や」
「……カナト。なんで、こんなゴミ、看病してんだ？ ……半笑いで、距離取るんじゃねーよ！」
しんどそうに、一段降りて、つっかけを履きながら、クソ女が言った。
「荷物、片してくれたんか？ 正直助かったワ。おおきに」
要所、要所で、キチンとしてるの、ズルいよなあ、コイツ。
「カナ、お母さん、心配しとったらアカンし、早よ帰れ……」
五代が、カナトの腕を見て、目を見開いた。
ドスの利いた、声でうなる。
「なんやそのアザ？ オマエ……」
あ、コレか。
何となく、今日カナトが、五代に会いたくなさそうだった、理由。
僕は一瞬で、カナトを背中から抱きしめ、10cm以上低い、頭の上にアゴをのせた。
「おー、コイツのクラスで、東リベごっこが、流行ってるらしいな？ 元気があって、よろしくってよ…… ウチのガッコに比べりゃ、ヌルいけどな！」
そう言いながらも、僕は一瞬、五代に強烈なガンをくれて、軽く首を振る。
言葉を飲み込む、ボサボサのかぐや姫カットに、視線で奥を指した。
「まァ、任せとけって！ オマエが竜胆ヤったら、もっと盛り上がるし、月曜から、毎日、俺と遊ぼーぜ？ しばらくは、泉クンと、今まで通り遊んでやれよ……」
僕は、硬い顔の五代を見つめながら、殺意を隠して笑った。上手く、笑えてないだろうけど、
「しばらくは、な？」
カナトを帰し、一階にある和室に二人。
畳の上に、敷いた布団。
さっきより、疲れた顔で、横たわる五代に、やんわり言った。
「アレ、良くないぞ？ しまいにウソつくようになるか、寄り付かなくなるって」
キレられるかなって、思ったけど、天井を見つめて、五代は呟いた。
「分かっとるわ……」
……そっか、悔しいんだよな。
カナトと、初対面の僕でさえ、口から火を吹きそうだもん。
温かくなった、冷えピタを、コンビニ袋・装着のゴミ箱に捨て、話を変える。
「オマエ、何で、14時に荷物が来るって、言わんかったの？ 30分くらい待ったのに」
白い手が、タオルケットを引き寄せると、体ごと横を向いた。
「さすがにな…… 」
「そこまで言えんってか？ 手首悪化したら、余計メイワクだわ」
「ムカつくわ、この自撮り小僧……」
「ムカつくわ、この流血大将」
ここ、五代の部屋なのかな？
古びた内装にあった、レトロなタンスや、ちゃぶ台。
黒電話なんか、初めて見たぞ？
柱に掛かった、振り子時計の音だけが、8畳くらいの和室にこだまする。
「……オマエも、帰れよ。カナトの母さん、来てくれるし」
「来たら帰る。誰か来ない限りは、帰らんぜ？」
コイツ、ヘンに気を使って、ムリするから、ほっとけない。
背を向けたまま、舌打ちする、バカ女。
「エエから、帰ってカブトムシに、エサやっとれや…… チンコで」
さすがにムカつくな？
けど。
ちょっと慣れたかな、コイツの毒舌も、裏の優しさも。
「カブトムシ五郎でーす」
一瞬黙り込む、五代。
背中を向けたまま、低い声で、歌いだした。
「〽カブトムシ カブトムシ 夏の主やーくだ、カブトムシ」
僕も、遅れずつなげる。
「〽暑い夏 もえる夏」
僕達、半笑いで、NHK Ｅテレの『チームカブトムシのテーマ』を歌う。
『〽虫捕り子供に 気をつけろ』
ヘイ！
突き上げた、こぶしを下ろしながら、笑う僕達。
「……分かったから、帰れって。カナトの母さん来れるか、わからへんし。オマエおったら、着替えも、でけへんやんけ」
「あ、お構い無くぅ。興味おまへんよって」
京都弁で煽る。
マズかった。
「……フーン」
言うなり、タオルケットを蹴り飛ばし、パジャマのズボンを、蹴りぬいだ。
「おい！？」
慌てる僕を、真顔で見つめる、冷えピタ美少女。
白い下着から、目をそらしたけど、黒目がちな顔からは……
何故か目をそらせない。
五代は、平然と言った。
「着替え手伝えや…… キョーミ無いんやったら、平気やんな？」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします！
