僕らは、何で泣いてるのかな
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
エディ・田中
五代珠乃の、血の繋がらない父。
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われていた。
梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲っていたが、現在は休戦中。
オリガ・エレノワ(オーリャ)
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
ボンボン時計が、鳴ったのは、たったの4回。
でも。
3回目で、そっと盗み見した僕は、見上げるリーファと、目が合ってしまった。
僕の、太腿の上。
桜色の顔を覆う、髪の隙間から、少し潤んだ、黒眼が見えた。
他に、このリビングにいるのは、空調の音と、リーファの匂いだけ。
さっきまでの、ゆるい空気は、あとかたもなく消え去って、どうしていいか分からず、かと言って目もそらせない僕は、身動き出来ずにいる。
先に、視線を外したのは、リーファだった。
緊張したままの耳に、鼻をすする音が届く。
「……リーファ?」
「何でもないよ」
弱々しい声。
僕は、何にも言わなかった。
そうするだけで、コイツは、僕が返事を待ってるのを、分かってくれるから。
ひどくなった、すすり泣きの合間に、聞こえた。
「覚えてたのは…… ワタシだけかよ……」
その言葉は、深く刺さった。
……僕のまわりで。
コイツほど、ウソ泣きが出来ないヤツ…… いないんじゃないかな。
だから、僕もウソはつけない。
言ったら、喜ぶってわかってる事も、言えない。
そんな事しても、コイツには通じない。
全部お見通しだから。
「ここ最近…… マジで色んな事あり過ぎてさ。昨日も、死ぬとこだったし。振り返る、余裕が無くって」
僕は、太ももの上の、横顔を見下ろしながら、髪の毛を、指ですいてやる。
痛みを、こらえるみたいに、泣いてる。
……ゴメンな。ウソつきたくない。
「思い出す、余裕がなくて…… 有難かった」
リーファの泣き声が、激しくなった。
胸が苦しい。
また、リーファを、マジで泣かしてしまった。
そして、僕は僕で、オーリャの太陽みたいな笑顔と、甘えた顔、裸、キス……
空港での、後ろ姿を思い出して、目頭が熱くなる。
んだよ……
アレから、3日しかたってないって、マジか?
時間が進まない、呪いでもかかってんのかよ?
空港から、帰った日は眠れなかった。
次の日は、メグが隣にいてくれたおかげで、眠る事が出来た。
昨日は、鉄パイプで殺されかけて、五代の店に行って……
疲れ切ってたから、眠る事が出来た。
何度も、目が覚めたけど。
顔を隠して泣く、リーファの髪を、撫で続ける。
来るべきじゃなかった。
にじむ視界、ぼんやりした頭で、考える。
オーリャに『ケッコンしよう』って言ってから、何日もたたないのに。
甘えてくるナディアに、グラついたり。
メグに抱かれて眠ったり。
……『女の敵』
五代の言うとおりだ。
……でも。
「ありがとうな、リーファ。いっつも助けてくれて」
心を込めて、リーファの髪を撫でる。
僕の手を、両手で握りしめ、声を漏らす、口もとに当てた。
そして、リーファは、こう言う。
『わかってる』
「わかってるよ…… 凛は悪くない。タダさ…… ちょっと、ツラいだけ」
泣きじゃくるリーファに、何も言ってあげられなかった。
みっともなく、涙を落としながら、僕は改めて思う。
誰も、幸せになれない恋って、あるもんなんだな。
「……何で、俺もオマエも、泣いてんだろな」
「こっちが、聞きたいっての」
箱から抜いた、ティッシュを渡し、二人同時に、チーンってした。
丸めた、ソイツを受取り、ゴミ箱に捨てる。
僕は、リーファの頭を持ち上げ、足を抜き、驚く相棒の隣に、寝そべった。
鼻を突き合わせるようにして、見つめ合う、僕達。
「ちょっと寝る。オマエは?」
リーファは、赤い目を細め、しゃくり上げながらも、ささやいてくれた。
「…… 凛が寝たら」
僕は、笑った。
リーファなら、そう言うだろうと、思ってたから。
「決まりだ、相棒。悪い奴か、橘さんが来たら起こしてくれ」
「パパ一人で、2つとも条件、クリアしてるじゃん」
そう言って、僕を抱きしめる。
胸もとに、深くVカットの入った、ノースリーブだから、白い肌に、僕の頬と鼻がくっつく。
リーファの匂い。
小さな頃から、知ってる…… 心が落ち着く、コイツだけが、使える魔法。
僕も、片手を背中に回す。
「……凛の匂いがする」
え?
そう来るとは、思わんかった。
「どんな匂いだよ。アタマ洗ったぞ?」
リーファのアゴが、頭のてっぺんに刺さる。
「んー……日なたの匂い? 分かんない」
僕は笑った。
「なんじゃ、ソレ…… オマエは、昔からいい匂いがする」
リーファが軽く笑った。
「そうなの? どんな匂い?」
僕は即答する。
「リーファの匂い」
しばらくして。
僕を、強く抱きしめてくれた。
「……そっか」
「うん…… よく眠れそうだよ」
リーファが、僕の頭に唇を押し付ける。
「気が合うじゃん? ワタシもだよ」
目が覚めたのは、僕のスマホが、ローテーブルで、カタカタ鳴っていたからだ。
リーファは、僕に腕枕して、天井を向いて寝てる。
背もたれを倒せば、ベッドみたいになるソファだから、僕ら2人くらいなら、充分な広さ。
起こさないように、またぎ越えると、スマホを手に取った。
LINE通話の呼び出し。
画面には『店長』の二文字。
五代って……なんかあったんか?
あの、警察にドナドナされてた、老害の件か?
まさか、仕返しに来たとか?
起こさないように、リーファから遠ざかりつつ、小声で通話を開始。
「どーした? 何かあったか?」
「あ……」
流れてきたのは、男の子の声だった。
低学年?
伝わって来る戸惑い。
気を取り直した様に、その子は言った。
「ぼく、吉田カナトって言います。誰だか知らないけど…… お姉ちゃんを助けて下さい」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!