チヂミともんじゃは、かなり違う
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
五代珠乃
小6、女。リーファの宿敵である、犯罪組織、HAZEの創設者を、経歴上の父に持つ。
朝鮮語に堪能。下品で、勇敢な、拗らせ美少女。
オリガ・エレノワ(オーリャ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
ハスマイラ
二十歳半ば。女。リーファの護衛。
リーファのパパが好き。
シヴァ
リーファパパの社員。元・英国特殊部隊隊員。
ボーン
リーファパパの社員。元・米国海兵隊員。
「なんてことしてくれたんだ、クソ女! 機嫌直すまで、20分かかったじゃねーかっ!」
母さんの横に立って、台所仕事してる悪魔が、ゲラゲラ手を叩いて笑った。
母さんのチョイスで、クソ女が身につけているのは、ナイキのTシャツとハーフパンツの上下。僕がレスリングの練習時に、着てるヤツだから、わりとよれてる。
それでも、色白の五代に、深い青の上下は、よく似合っていた。
僕の視線が、包帯が巻かれた、五代の右手首に吸い寄せられる。
ニラや、ごま油に混じって、湿布のツンとする匂い。
「おー、オマエの母ちゃん、スゲェな? 痛みメッチャマシだわ」
壁にかけられた、母さんのiPhoneから、明るい音楽が流れてる。
料理を作る時は、いつもこうなんだけど……
何で、五代まで、台所に?
今朝は、メグと作ってたし、共同作業に目覚めたのかな?
五代のヤツ、ケツでも、蹴ってやりたいが、食材にもしもの事があったら、母さんに殺される。
ずる賢い、コイツの事だ。それも計算どおりだろう。
「タマちゃん、捻挫、かなりヒドイで? よー、笑ってられたな……こんなもんか?」
ボールで何かを、シャカシャカやってた、母さんが、傾けて中身を見せる。
「おー上等。仕上げオレがやるわ……いや、一瞬やし、イケるって」
母さんから、ボールを受け取ると、みじん切りにしたニラと、人参を放り込み、高速でかき混ぜる。
「おお!」
いや、その手際の見事な事。
コイツに、ムカついてる僕でも、声をあげたレベルだ。
淀み無く両手が閃き、全くムダがない。
右手でかき混ぜつつ、左手は次々、卵を割り入れていく。
今朝のメグも、スゴかったけど……
五代は、も一つスゴかった。
繰り返し、同じ事をやり続けてる、職人の技だ。
母さんも感心してる。
「スゴイやん、タマちゃん……メグちゃんもスゴかったけど、なんちゅうか、プロやな?」
「いや、プロですがな。これで、生活費稼いどるんやし……オッケ」
ちょっと、顔をしかめてるのが、気になった。
さっき、雨に打たれながら、右手首押さえて、言ってたセリフ。
『チヂミ焼けんかったら、生活費稼がれへんねんど? どないしてくれんねん』
いや、僕のせいちゃうやん、って気持ちと、まさか、殺し合いに巻き込まれるなんて、思いもせんよな、って思い。
女子に対して、ここまでムカついたのは、ジャス子以来だけど……
あの時の、
『前に飛べ!』
って言うセリフ。
目が拾った情報は、耳から伝わるヤツより、早い。
コイツが両腕を、広げてくれたおかげで、僕は今、生きているんだ。
後頭部に、鉄パイプをフルスイングされてたら、死んでた可能性が高い。
改めて、背筋が寒くなるし、五代に感謝しなくちゃって、思いが湧いてくる。
「んで、路チュー女と、どんな話、なってん……
おっと、そこまでだ。チヂミに何かあったら、夕飯がなくなるぞ?」
グーを握って、踏み出した僕を、眼鏡のブリッジを押さえて、吹き替えっぽく遮る、クソ女。
訂正。
イヤな笑顔のコイツに、感謝どころか、殺意しか湧かんわ。
「……あ、それで思い出した。母さん、明後日の日曜、ナディアと出掛けたいんだけど……」
「お、どこ行くんじゃ、少年? うまい棒にかぶせるゴム、忘れんなや?」
首をカクカクさせながら、ニヤついてる五代の頭を、後ろからはたく母さん。
そうされながらも、フライパンから、香ばしい匂いが立ち昇り、五代の右手は、熟練の動きを止めない。
悔しいが、マジでスゲェ。
味の方も、期待出来んじゃないノォ? ってカンジだ。
「エエけど、今日の事もあるし、ひと目のあるトコにしーや?」
五代が、素っ頓狂な声をあげた。
「エエんか、母ちゃん!? フツーの親やったら、警察駆け込んで、ガキ、家から出さんで?」
「フツーの家庭と、ちゃうんやわ。ガキがアホすぎて」
僕が、首をすくめていると、五代はヘラヘラ笑って、器用にチヂミをひっくり返す。
「おー、ウチと同じやんけ……ホイ、皿チョーダイ」
「うまっ!?」
僕は絶叫した。
なんじゃ、コレ!?
薄くて、香ばしい生地の食感、唐辛子ベースなのに、優しい味で……
マジで、ナンボでも食べれるぞ!?
醤油と、酢と、ごま油で、適当に作ったとしか思えないタレが、また、うまい!
母さんも、顔色を変えて、ガバっとチヂミをのぞき込んでる。
「……小麦粉だけやなくて、片栗粉も、米粉も入れるし……どんだけ、色んなモン、入れんねん、オモタのに……」
ヤッパリ、ヘラヘラ笑いながら、五代が麦茶を注いで回る。
「いや、残りモン、何でもブチ込むんが、基本ですもん。オレは、食べ飽きとるけど」
五代の髪から、微かなフローラルの香り。
不覚にも、ドキッとした。
「……いや、こんな美味しい、チヂミ食べたん初めてやわ。父ちゃんに置いといたろ」
母さんが、尊敬の眼差しで、人を見るトコなんて、初めて見たよ。
「そりゃ、ヨカッタ。弓川で店やっとるし、食べに来てや」
「行くわ。店教えて? それだけの価値あるで、コレ」
即答する、母さん。本気で言ってる。
僕も、うなずかざるを、得ない。
鍵が開く音がして、父ちゃんが帰って来た。
「ただいま……お、メグちゃん……じゃないんや、後ろ姿、似てたから」
五代が立ち上がって、軽く頭を下げると、お気楽に手を振った。
「んばんわー、お邪魔してます。五代珠乃、息子さんの天敵です」
「お、おう……」
父ちゃんが、強張った、笑いを浮かべる。
この時は、その言葉の意味が、分からなかった。
だって、五代のお父さんが、誰かなんて、考えもしなかったから。
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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