千と千尋なメグの夜
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ(オーリャ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
ハスマイラ
二十歳半ば。女。リーファの護衛。
リーファのパパが好き。
シヴァ
リーファパパの社員。元・英国特殊部隊隊員。
ボーン
リーファパパの社員。元・米国海兵隊員。
午前0時に近い、僕んちのリビングルーム。
不機嫌を隠そうともしない、母さんの前で、一分のスキもなく、正座している、メグの後ろ姿。
『千と千尋の神隠し』の湯婆婆と、千尋の初対面を、リアルで見ている気分だ。
その直前、主人公に、ハクって男子が、
『ここで働かせて下さい』
って、言い続ける様にアドバイスしてたけど……
マンションに着いた時、僕がメグに念押ししたのは、
「お世辞、ゴマすり、上っ面の笑顔、厳禁。母さんはうまいヤツをイチバン嫌う」
メグは前を見たまま、瞬きせずに、頷いてた。
大丈夫かなあ。
いい結果になる、未来が見えない。
こんなの、僕の家族に、『常識知らず』の印象を与えるだけじゃん?
母さんが、口を開いた。
「メグちゃんは、登校禁止やけど、凛は明日も学校や。風呂入って寝ろ。次、メグちゃん。んで、父ちゃんの順や」
「わたしは最後で……」
「寝床とか、諸々の用意せにゃならんし、それやとワタシが寝れん」
「……すみません」
母さんが、厳しく言った。
「心ならずもって、顔するんやったら、こんな時間に、押しかけて来たらあかんやろ」
「……ちょ、母さん」
正論だけど、もう少しなんとか……
メグは、母さんを真っ直ぐ、見つめたまま言った。
「おっしゃる通りです……今更、野宿しますって言った所で、もっと迷惑ですもんね、ですから……」
メグは、床に手をついた。
「明日一日、どうか、家のお手伝いをさせて下さい。どんな事でも致します」
「……ご両親は、どう言うてんの?」
「凛君のお父さんが、職質にあったって、Lineがあって……」
「凛から聞いとる」
「失礼しました。あわてて帰るところに、わたしが荷台に飛び乗りました。
母とはケンカしてますが、明日、父が迎えに来ると、思います」
えらいな、メグ。
他人と話す時は、パパ、ママじゃなくて、ちゃんと父、母って言うんだ。
僕の後ろで、正座してた父さんが、口を挟む。
「凜の方に、お父さんから電話があった。
凛が『これ以上は、遅くなれないから、メグは預かります』って、返事したんや……荷台の上で勝手にな」
ローテーブルに肘を突いて、ため息を付く、母さん。
いや、しゃーないじゃん?
これ以上遅くなったら、スマホ解約されるかも。
スマホ解約。
ねえ、ジョニー、これ以上、恐ろしい事って、この世にあるかしら?
それ以外で、僕ら小学生に、残されてる通信手段なんか、糸電話くらいだ、タブレット、壊れてるし。
正直に、言おう。
メグ云々より、スマホの没収期間を、最低限にすること以外、頭に無かったんだ。
「そもそも、何でこんな事したんや? ご両親、こんな事、許しそうに無いカンジやったで、こないだ、挨拶に来られた時?」
来た。
この返事で、雪女の未来は決まる。
最悪、タクシーで、送り返す事になる。
田中さんは、そうしてくれって言ってたんだ。
お詫びには、後日伺うからって。
メグは、淀み無く答えた。
「凛くん、お風呂がありますから、手短に。
わたしは、ここ数日、最悪の状態でした。両親はその事を、よく知ってます」
メグは、うつむき、ポツリと言った。
僕も、気まずくて、うつむく。
「……頭がおかしくならない為に、体が勝手に動いた、としか、言い様が無いです。
おっしゃる通り、父も母も、他人に迷惑をかける事は許しません。わたしが人に『嫌われて欲しくないから』です。
わたし……一人で外泊するのも、初めてです」
僕は、驚いた。
うまい、表現じゃない。
でも、本心から話してるのがわかる。
メグ、僕の忠告、ちゃんと聞いてんだ。
そして、その返答は、合格だったみたいだ。
母さんは頷いて立ち上がると、冷蔵庫に向かいながら言った。
「ええやろ、明日、6時には起きてもらう。朝食の用意から、やってもらうで、ええな?」
びっくりして、顔をあげる、メグ。
「は、はい!」
ポイポイ、冷えたウィダーインゼリーを、僕とメグに投げてよこす。
慌ててキャッチする僕達。
「お客さん扱いはせん。モノは投げてよこすし、落としたら掃除してもらうで」
メグが、痣の浮いた顔をコーフンで赤くして叫ぶ。
「頑張ります!」
「声デカイ、夜中や!」
「スミマセン!」
僕は、全身の力が抜けた。
良かった!
どうやら、激動の今日が終わりそうだ。
いや、0時越えてるし、昨日やん。
このまま、スマホの没収……
忘れてくれてたら、万々歳なんだけど。
母さんが、アゴをしゃくる。
「凛、動け。メグちゃん、着替えは?」
真っ赤な顔で、しどろもどろ。
「し、下着しか……」
「凛の服着て」
「い、いいんですか?」
「下着姿で、家事するんか?」
僕は、メグのセミヌードを思い出して、顔が熱くなる。
さっきから、部屋に漂う、雪女の香りのせいで、なおさらだ。
メグは、頭から湯気を出しながら、呟いた。
「……ムリです、ごめんなさい」
僕は、布団に寝っ転がって、常夜灯の照らす、オレンジ色の天井を見つめてた。
遠い目になる。
心身共に、疲れきっていた。
ここしばらく、心の休まるヒマがない。
けど、一つだけ、新発見があった。
忙しい間は、オーリャの事を、考えなくて済むって言う事だ。
今も、ジェットコースターは、動き続けてる。
正直なとこ、ロシアンの思い出に心をえぐられずに済むから、この状況、感謝してる。
それくらい、辛いんだってば、フラレるのって。
襖の向こう。
リビングで、3人が何かを、話してる。
僕はそれを聞きながら、ウトウトしていた。
しばらくして。
襖の開く音。
特に気にしなかったけど……
え?
メグの匂いと、声が流れ込んできたら、話は別だ。
「……凛」
僕は、慌てて跳ね起きた。
濡れた黒髪を、ハチマキみたいに、額の前で結んだタオルでアップにしてる。
僕の着古したTシャツ、ハーフパンツから、むき出しの、白い脚。
擦り傷のアクセントが、メグのくぐり抜けた、修羅場をおもいださせる。
就寝直前の、女子の姿は、新鮮で、刺激的すぎた。
一瞬で、目が覚める。
座布団を半分にして、縛っただけの、枕を抱えた雪女。
「ど、どうした?」
でも、声は寝起きになっちゃった。
怯えた上目遣い。
なのに、キラキラ光ってる黒目。
戸惑った声で、年下のモデル兼、女優の卵は、信じられない事を言った。
「お二人が……この部屋で寝なさいって」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!