雪女は恐れない
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。
幼なじみを護るため、父から、戦闘訓練を受けて育った。
任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ(オーリャ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
鈴木
メグのママ。事務所では、メグのメイクを担当。
田中
メグのパパ。小さな、芸能事務所を経営。
ハスマイラ
二十歳半ば。女。リーファの護衛。
リーファのパパが好き。
シヴァ
リーファパパの社員。元・英国特殊部隊隊員。
ボーン
リーファパパの社員。元・米国海兵隊員。
僕の胸の中で……って訳にはいかなかった。
153cmの僕と、メグの身長差は、ほとんど無いから。
22時を過ぎた、広々とした和室。
9月に入っても、クーラーがついてる。
肩に乗った、メグのあごが震え始めた。
でも。
メグは、ぼくを抱き締め返さなかった。
胸に穴が空くような感覚。
戦場を、二人で駆け抜けた時の、一心同体だった記憶は過去なんだ。
……メグも、又、僕から離れていく。
視界が涙で歪む。
でも。
今、僕が泣いてるのは、そのせいじゃない。
「林堂君、どういう事? 娘は、あなたに来てもらうために、わざと危ない目に……」
僕は、強く首を振った。
その考えが、そもそもの、間違いだったんだ。
ナディアのその『誤解』をメグが『そうですよ』って、ウソついた理由。
それは。
『ホントのこと』がバレるより、そう思われる方が、遥かにマシだったんだ。
ナディアが、マキを左ジャブだけで圧倒した時に見せた、メグの信じられないモノを見る目。
メグ、『マキには勝てない』って、心のどこかで思ってたんだ。
……弱い自分と、サヨナラしたかったメグ。
僕の中ですべてが繋がった。
静かにすすり泣き始めた、メグを離さないまま、僕は言った。
「コイツは、物凄く頭がいい。そして、何より僕の性格を知ってます……」
僕は、何、自惚れてんだって言われるのを覚悟で、言った。
「僕なら、ピンチじゃなくても、駆けつける。メグは、僕がケガするのを、何よりも嫌がるんです……。
ホントに『相棒ごっこ』をしたいなら、マキに会いにいく前に、連絡するはずです。だって……」
雪女のしゃくり上げるスピードが早くなった。
僕はメグを抱きしめたまま、半分振り返る。
ガクゼンとしてる、メグの両親を真っ直ぐに見て言った。
「その方が、『僕を』 危ない目に、会わさなくて済むから」
メグが、悲痛な声で泣き出した。
芝居じゃない。
それくらい僕でも、分かるし、何なら芝居でも、全然構わなかった。
「メグが、『自分から手を出した、積年の恨みです』としか、言わなかった理由は……
マキの奴、オマエの夢か……親の悪口、言ったんだろ?」
えっ!? って言う、両親の悲鳴。
メグの、浅い呼吸が早くなる。
「……もう大丈夫だ。顔の真ん中、蹴ってやったろ?」
メグは顔を上げて……
何度か、失敗してから、うつむいて声を絞り出した。
「……『ガッコ来たんだ? オマエが引き篭もってたら、パパとママ、キョウダイ作れないもんな』………」
頭の中で、ブチリと言う音がした。
殺す。
徹底的に、詰めてやんよ。
「辛かったな……後は任せとけ」
掠れる声。
押さえようもない、殺気が漏れた。
「メグ……!」
2歩駆け寄る、鈴木さんにメグを譲る。
声を上げて泣く、鈴木さんの胸で、メグは酸欠を起こしたみたいに、言葉をつむぐ。
「メ、メグ……ママ達が中々、子供出来なくて……やっと、私が産まれて……大事にしてくれたのに……許せなかった……」
……だよな。
校長室で、いや、誰の前でも言えないよ、こんな話。
両親にだって、聞かれたくない話だろう。
「いいの、いいのよ、何とでも言えばいい! 叩いたりして、ゴメンなさい、メグ」
「クソ……畜生……僕は……父親なのに……」
むせび泣く、田中さん。
「田中さん、大丈夫です、トドメは僕らが……」
「そんなものは要らん! 小学生が口にしていい言葉じゃないけど、所詮そんなヤツラだ。
そもそも、私達の間に、子供が出来ずに、苦労した事なんか、知らずに言った訳だしな。僕が許せないのは……」
田中さんが、喚くのを見たのは、初めてだ。
「自分達だ! 林堂君が分かることを、何故、両親の私達が、気づいてあげられなかった!?」
ぼくは言葉に詰まった。
マキ達への殺意も、消えていく。
言うて、小5だったよな、あのクソガキ。
けど……
言いにくくなったな。
メグが、ナディアと、鈴木さんの誤解を、解かなかった理由。
僕を、呼び寄せるために、危ない場所に、飛び込んだって言ったワケ。
鈴木さんが、メグの頭に頬ずりしながら、言った。
「林堂君……メグが、あの子達を呼び出した、ホントの理由……分かるの?」
「……多分」
そう言いながらも、確信があった。
長年、頭を押さえつけられて、『勝てない』って、思い込まされた相手に向かって行った、いじられっ子。
「……メグ、マキに脅されて、怖かったんだと思います。そんな気持ちを抱えたまま、過ごすくらいなら、早く終わらせたかった……
結果はどうなるにせよ。
鬼ごっこで、背中をタッチされそうになって、自分から振り返るのと、同じヤツです」
「ちがう!!」
メグの絶叫。
それは『その通りです』って言ってるのと同じだった。
「メグ……ワタシは、ビビったりなんかしてないっ!」
鈴木さんを突き放して、僕に殴りかかる。
顔に、肩に。
メグの力ない拳が、当たる。
だけど、心はすごく痛んだ。
メグが、瞬きせずに絶叫する。
「ワタシはっ! アンタなんかいなくても、一人で平気だもん! 一人でも、負けなかったもん! じゃないと……」
力なくうつむくメグを、僕は抱きしめる。
「メグ……『怖い』から……『怖い』って言えなかったんだよな。口にしたら、心が折れちゃうから……」
「じゃないと、ワタシ、何にも残ってない……離してよ、触んないで! オリガさんの方が、いいんでしょ!」
腕の中で暴れるメグ。
心に刺さるナイフ。
被害者ヅラすんなよ、俺。
メグに触る権利、一番ないだろ?
恥ずかしくて、顔が熱くなった。
僕はそっと、身を離す。
「……ゴメン」
「……なんで、離すんですか!? なら……最初から……優しくしないでよ……」
ぺったり座り込んで、顔を覆う、メグ。
女の子は、理不尽だって、最近やっと理解した。
でも、笑う気になれない。
悲しそうに、佇むメグの両親。
時計は23時を指してる。
父さん、軽トラの中で、待ちくたびれてるだろうな……
「わだし……わがっちゃたんです……オリガさんの気持ち」
次の言葉が、僕の心臓を射抜いた。
「凛といると……怖いの。自分がどんどん……自分じゃなくなっていくから」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!
……評価、ブクマ、ssssグリッドマンの続篇並に、お待ちしております。
(੭ु´͈ ᐜ `͈)੭ु⁾⁾