同志少女よ、シバいたれ
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
氷室 恵
小5、女。女優志望。主人公と、市街戦をくぐり抜けた。主人公が好き。
ハスマイラ
二十歳半ば。女。リーファの護衛。
リーファのパパが好き。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
びっくりし過ぎて、凍りつく。
前髪から、雫が落ちた。
スマホの画面で、どんどん水滴に変わって、縁に流れ込むのを見ても、動けない。
心臓が、またうるさくなった。
激怒してる鈴木さんしか、思い浮かばないけど……
「もしもし、どうしました?」
出ないわけには、いかないもん。
「……あ、ゴメンね、林堂君。今、大丈夫?」
不安げな声。怒ってる気配はないけど……
腕にとまってくる、蚊を叩きながら返事する。
服、着なきゃ。
「はい。あの……メグに何かありましたか?」
言ってから後悔した。
オマエが言うな、誰のせいだよ、ってハナシだ。
鈴木さんは、気にした風もなく、続ける。
「あのコ、夕ごはんの前に、出てったきり帰って来ないの。Lineも無視だし」
「……!」
僕は言葉を、詰まらせた。
20時過ぎ。
僕ら小学生が、習いごと以外で、外にいていい時間じゃない。
「その様子じゃ、知らなさそうね……私、林堂君のLineしか知らないし……」
胃が重くなった。
何やってんだよ、アイツ?
「すぐ、アイツラに、聞いてみます。一旦切りますね?」
三人のグループLineで、この事を報告する。
もちろんナディアも、リーファもメグの居場所は知らなかった。
シャツを着て、靴を履きながら、三人通話を続ける。
『ゴメン、アタシ、今日だけは出れない。パパ、見たことないくらい、落ち込んでるから』
『うちらが行ったかて、意味ないじゃろ?まだ九時前じゃし、もう少し待ったらどうじゃ?』
そうだよなあ……
ジッサイ、僕に探してほしいとは、鈴木さんもまず、思ってないだろうし。
僕も、母さんに連絡しないとマズイしな。
「……だな」
『心配だから、経過だけは、教えて相棒。必要なら、ハスマイラに人を出してもらうよ』
『リーファさん達にも、連絡無しか……ごめんなさいね、林堂君』
「いえ……あの」
『どうかした?』
「その……メグ……ちゃん……様子が変だったとか……」
沈黙。
僕は、顔が熱くなった。
舌を噛みたくなる。
聞くんじゃなかった。
いや、でも……
いきなり、明るい笑い声が弾けた。
『凛くんが、言っちゃいけないでしょ?
「ス、スミマセン!」
イタズラっぽい声に、僕は身が縮む思い。
やっぱ、オー……オリガとの事、バレてるよなあ。
鈴木さんは、ため息をつくと、笑いながら言った。
『ま、今後の、あのコに期待ね……』
「えっと……警察なんかには」
沈黙がまた降りた。
僕は、さっきの場所から動いてない。
まだ、帰るべきかどうか決めかねてるんだ。
目の前の、街灯が照らす、生活道路を通りすぎてく、サラリーマン風の人達。
人通りは、それなりだ。
母さん、怒ってるかな?
『……出来れば、警察には連絡したくないの』
2秒してから、嫌な気分になる。
これ……
「アイツ、何かやらかしたんですか?」
聞かないわけには行かない。
オマエが原因だろって言われても。
『何で分かるの?……って愚問か……。あの子、今日学校に行って、例のグループの女の子、ぶん殴ったのよ』
「ええっ!?」
鈴木さんの声は、疲れ切ってるけど、どこか愉快そうだった。
『学校に呼ばれて、私が校長室に駆けつけたんだけど、メグ、絶対謝らないの。
"桜井さんには、病むくらい、弄られてたし、ワタシも殴られたから、おあいこです"の一点張り。
あれ、ホントにメグ?』
僕は、何度もガッツポーズをとる。
よくやった、メグ!
そりゃそうだ。
僕らは、本物の戦場を駆け抜け、背中を預けあったんだ。あんな頼りになる奴、まあ、いないぜ?
集団で、一人をイジるしか出来ないカスが、身の程を知りやがれ!
僕はいい気分を隠さず、ちょっぴり誇らしげに言った。
「いまのメグに、ケンカを売るヤツはバカです。そこらのジャリがチョッカイかけるなんて、命知らずもイイとこだ」
苦笑する、鈴木さん。
『喜んでいいのかしら……少なくとも、私には痛快だったけど、パパに話したら、真っ青になってたわ。それに……』
わずかにためらってから、鈴木さんは言った。
『そのせいで、メグ、謹慎中なの。今、警察の厄介になったら、転校を薦められるわ』
ハイだった気分が、一気に降下した。
マジか?
……あ!
「確か、私学でしたっけ?」
『そう。お嬢様学校だから、うるさいのよ。相手のマキって子も、謹慎。けど、怪我の度合いは向こうの方が上だって、担任が嘆いてた』
僕は、舌打ちをこらえる。
僕んとこも、私学だからわかるけど、『転校を薦める』ってのは、事実上の退学だ。
謹慎は、停学と一緒。
婦警さんにぶっ放したり、高速道路で、輩の首にスタンバトンねじ込んだり、武勇伝、作りすぎだろ?
でも、鈴木さんは、吹っ切れたように言った。
『でも、元々、転校は考えてたし、やり返してのコレなら、"勝ち"じゃない? パパは、半泣きだったけど』
デスヨネー。
膝小僧、擦りむいても、救急車呼びそうな田中さんだもん。
1日で、お姫様が歴戦の少女兵になってたら、寝込むって。
うーん、でもなァ……
友達とか、どうなんだろ?
転校するとなると、また、人間関係イチからだし……
けど、頼りになる友達いたら、ヒッキーしてなかったろうし。
『パパも探し回ってるし、九時半回っても連絡がつからなかったら、警察に……』
その時、Lineが鳴った。
何故か胸騒ぎがした。
汗の匂いに、おなじみのストレス臭がする。
「鈴木さん、ちょっと待って下さい、Lineが……」
耳から離して、確認する。
心臓が大きく跳ねた。
「メグだ!」
『えっ!?』
「ま、待って下さい……地図? 位置情報だ!」
続いて、シュポっという音。
短い文章。
けど。
ぼくの呼吸を止めるには、充分だった。
『たすけて』
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!