黒い騎士とファイナルファイト
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ハスマイラ
リーファのボディガード。リーファのパパが好き。
ジン
小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
まず、僕の頭をよぎったのは、瞬きしない橘さんに、全弾入った銃で、ロシアンルーレットさせられてる、自分の姿だった。
だって、下着姿のリーファとパンイチで抱き合ってるんだぞ!?
しかも、出入り禁止の橘さん専用、バスルームで!
『チワッス! リーファパパの大事なモノ、2つとも頂いちゃうゾ!(テヘペロ)』
マザーテレサでも、飛び蹴りかますわ!
脱衣所のドアが開く音がして、僕はみっともなく、相棒にしがみつく。
「ヒィィィ!」
いい匂いのする、胸の谷間に頬を埋め、すべすべの絹みたいな感触に、潜り込もうとする僕。
頭を撫でてくれるけど、それどこじゃない!
こっ、殺される!
「大丈夫だよ、凛……ハス、なんで?」
その言葉と同時に、バスルームのドアが開いた。
強張った顔のハスマイラさんが顔を出し、僕の靴を投げてよこす。
「連絡無しで、いきなり帰ってきたッス。湯船隠れて!」
僕とリーファは、片っぽづつ、スニーカーをキャッチすると、同時に湯船へ飛び込む。
「大丈夫、ハスに任せよ?」
浴槽の底に、靴を並べながら、相棒が囁く。
僕は頷くしかない。
頼んだぞ、ハスマイラさん……って
すりガラスの向こうのシルエットが、慌ただしく動いてる。
……何で脱いでんの?
「見んな、スケベ」
眼に激痛が走り、僕は顔を押さえて、のたうち回る。
コイツ、チョキで!
チョキで眼ェ突きやがったッ!
なんて事しやがるッ!?
姿勢は低いまま、血相を変えて目潰し女に向き直ると、迎えてくれたのは、この世のものとは思えない程の、冷たい視線だった。
な、ナニよ……
こ、怖くなんかないんだからね!
ウソ、メッチャ怖いです。
「アタシのハダカが、メッチャ見たいって言った3分後に、別の女の着替え、ガン見するとか……そんな両眼いらないよね?」
いや、見てないし!?
すりガラス越しに、どうやって見るんだよ、勘繰り過ぎだろ!
そんな怒りも、ドスドスって足取りが、吹き飛ばしてくれた。
血の気が引いた僕の耳に、お経の様なブツブツが聞こえてきた。
「リーファちゃんに悪いけどここでボスにふたりエッチなコトされる読みで黒のブラパン姿になるジブンを許して欲しいッスじゃなくてジブンが防波堤として」
……普段、何のマンガ読んでるの、この人?
「ハス……ゲンメツぅ」
うっわ、隣で伏せてるリーファの眼……
アレじゃん!
古市にある、デュエルスペースの、ヲタを見る目になってるじゃん!
ドアの開かれる音に、心臓が痛くなった。
ハスマイラさんの悲鳴。
「……ハスマイラか。いや、スマン。リーファが部屋から出てきたのかと、つい嬉しくなってな」
で、ノックも無しで、脱衣所の扉、開けたの!?
大問題デスヨ!
横ではリーファが、見開いた眼を、血走らせている。
え、ボク何にもしてませんよね?
橘さん、うつむいたのか、声の調子が変わる。
「いや、いなくて良かった。よく考えたら、一生、口をきいてもらえなくなる所だった……」
ハスマイラさんなら、いいのかよ!?
いや、色々と、言ってる事おかしいって!
それとも……これってハスマイラさん達にとって、いつもの事なの?
「そういや、帰る事、連絡してなかったか? スマなかった。私はあっち風呂を使うから、ゆっくり入ってくれ」
静かに、ドアを閉める音。
「……パパ、様子が変」
声に振り向くと、リーファが呆然としていた。
「『連絡無しで、ここに入ってくるヤツは、誰であれ撃て』が、口癖……絶対何かあった」
相棒が、湯船をまたいで、入口に向かう。
その場から動くのが怖かったけど、恐る恐る、あとに続く。
灯りの眩しい脱衣所に出ると、立ち尽くす相棒の背中。
視線の先には、床の上、胎児のポーズでしくしく泣いてる、褐色女性。
「……反応ゼロ。まるでゼロ。王の入浴シーン見るより、反応薄カッタ……終わりッス、尼になるッスよ」
「ナゼ叔父さんを、引き合いに……」
床に広がる、黒髪、引き締まったプロポーションを覆うレースの布地。
これぞ、セクシーってカンジなのに……
僕には、ひたすら残念な人にしか、見えなかった。
振り向いたリーファも僕と、げんなりとした視線をかわしただけ。
さっきは、すりガラス越しに、着替えを見てただけで目潰しされたけど、今、僕がどんな気持ちで、ハスマイラさんの半裸を眺めてるか、わかるはずだ。
「めんどくさい……」
有能女戦士を見下ろしながら、リーファがボヤく。
それだよ。
「ハス、パパ明らか、おかしいよね?」
「面目ないッス……ジブンの魅力が、足りないばっかりに……尼になるッス」
話、聞こうよ?
「高野山で、煩悩落として来い……凛、悪いけど、パパがシャワーしてる間に、逃げて。後でLineする」
心配そうに見てる僕に、薄く笑う。
「大丈夫、明日は学校行く。オマエ、アタシがいないと、ダメダメだもんな?」
二重になってる、エントランスの自動ドアをくぐり、震える手を膝に突き、暴れる心臓を押え込む。
逃げ切った。
こみ上げる、生の喜び。
性じゃないですよ?
例えるなら、リアル・影廊で逃げ切った気分だ。
ただし、能面被った怪物より、フンドシ姿の橘さんの方が、遥かにコワイ。
いや、例えだよ!
あの夢以来、橘さんのフンドシ姿がトラウマになってんだって!
背後から射す、エントランスホールの光が、目の前の生活道路を、照らしてる。
その向こうはフェンスに覆われた更地で、遠くに高速道路の、灯りが見えた。
時刻は20時を回ってる。
その時だ。
街灯に照らされてる道の向こうから、仔犬を連れた女の子が歩いてきた。
あ、豆柴じゃん、カワイイ!
僕は、さっきまでの、命に関わる恐怖を忘れて、つぶらな瞳でテコテコ駆けてくる、茶色い塊に心を奪われた。
いや、カワイイって!
マンションだから、飼えないけど、ペットって憧れなんだよね!
将来、絶対飼うんだ。
ヘッヘッって懸命に走る姿。
僕は、なんとかお近づきになりたくて、飼い主を見上げた。
思わず、え?って呟く。
昼間見た、あのベレー帽の女の子だ。
今は、サンダルに、大きなスカート、フリルのブラウスに、金縁メガネだけど、間違いない。
その子が、頑なに前方を見つめて、かなり速歩で通り過ぎてく。
どれくらい、速いかって言ったら、豆柴より速い。
僕が、仔犬に向かって手を差し出すと、つぶらな瞳を向けて、こっちにテケテケ近寄ろうとしてくれた。
「いけませんよ、ガッツ。 ハガーが待ってます」
……名前、やたらイカつくね?
大剣振り回したりとか、ダブルラリアットを振り回したりする、パワーファイターしか思い浮かばないんだけど?
鈴のなる様な声とは裏腹に、割とビシッとリードを引かれ、豆柴はおとなしく女の子と並走する。
尻尾が、お尻の間に入ってる。
飼い主、怖いのか?
……思えば、まだ、雫の垂れた髪に、上半身はハダカ、下はリーファから借りたミッフィーの半パンで裸足。
旦那が帰ってきて逃げ出した、間男みたいだ。
関わりたくないだろうなあ、そりゃ。
背すじピン、の後ろ姿を見送る、僕。
まあ、いいや。
お腹空いたなあ。中華食べ損なったし。
ぼんやり考えてると。
手に持ったシャツと靴、ワンショルダーに混じって持ってた、スマホが光り出す。
いけね、母さんに連絡しなきゃ。
慌てて光る画面を見て、呼吸が止まった。
『着信中 鈴木さん』
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!