見たくないの?
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジン
小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
相棒の言葉を理解するまでに、三秒かかった。
3歩先の、浴槽のへりから覗いてるのは、しなやかな両手の指と、眼から上だけ。
普段はクールな印象の二重が、今は目許の赤さも手伝って、無防備で子供っぽく見える。
僕達は、互いに目をそらさない。
いや、そらせない。
先にアクションを起こしたのは、リーファだった。
静かに立ち上がると、青に薄いグリーンの二色で出来た、下着が嫌でも目に入った。
座り込んでる僕は、呆けたように見上げるだけ。
恥ずかしそうに伏せたまつげ。
赤く染まった、顔と身体。
「どうせ、『腹減ったし上がろーぜ』とか、『ハスマイラさん、来ちゃうぞ』とか言おうとしたんでしょ」
エスパー?
でも、もう驚きませんよ?
「そんで、『このまま、流されたらいつもと同じじゃん、僕』とか『昨日の今日で、今は絶対違う』とか思ってんでしょ」
「驚きますよ!? 念能力者か、オマエわ!?」
「分かるよ」
食い気味にさえぎられ、僕は言葉を飲む。
「凛の考えてる事なんか、全部……あのさ」
震える声。
「その……どっちが……見たい?」
無意識かどうか分かんないけど、そっと上と下の、高そうな布地を押さえるのを見て、確信する。
「……! いっ、いや、ソレは!」
これ、本気だ!
「落ち着け、リーファ!」
「落ち着いてるよ……緊張してるけど」
切れ長の眼が細められ、口許も身体も震えてる。
僕は、パニックを起こして、かなりズレた事を叫んだ。
「いや、そこまでして見るもんでもないって! ガッカリするぞ? もったいない事すんな!」
リーファが顎を引いて唇を尖らす。
「だって、ナーは見たんでしょ?」
「気絶してる時に、母さんがパンツ勝手に下ろしたんだよ思い出させんなよ!」
「オリ……」
「あーっ、もういい! 上がってメシ! 異論は認めん!」
「却下」
「なんで!? 冷めるやん!」
「凛は……見たくないのかよ……」
「おふっ!?」
そう来るとは思わなかった!
……え?
カタカタ震える相棒。
恥ずかしそうとか、そんな言葉で片付けられる様な顔してない。
胸の前で、握り合わせた両手。
うつむいて泣きそうな顔は……
『凛は見たくないのかよ』
……僕でも分かる。
コレ、全身全霊を賭けたヤツだ。
告白より重い。
見たくない、イコール、興味ない、だもん。
でも、相棒をそんな眼で見るとか……
『はぁぁん? 聞こえんなぁ?』
モヒカン・世紀末なカッコの、カラ太郎達に煽られるまでもなく、いまさら、アホなこと言ってるの、知ってた。
もう、いろんな事……してますよね?
僕は覚悟を決めた。
正座して、姿勢を正す。
「なあ……今からホントの事言うけど……相棒は無理でも……」
僕も身体が震える。
上目遣いで、おそるおそる相棒を見上げる。
あっちも、泣く寸前の顔。
「せめて、キライに……ならないでくれるか……?」
リーファは涙をこぼして、顔を覆った。
指の隙間から、弱々しく声を漏らす。
「……うん。ゴメンね……ヤッパ、アタシなんかに」
「スッゲェ見たい……です」
「興味ないよな……無理言ってゴメン」
「ノースリーブとか……アカンのです……」
あきらめた様な、力のない声。
「上がろっか……ゴハン冷める……え?」
リーファが顔を上げる気配。
「脚とか、超長くてキレイだから……タイト……スカート……」
僕の苦しげな声。
苦しげじゃない、メッチャ苦しいわ。
なんか、積年の罪を懺悔してる気分や。
今まで、そんな眼で見てたの、バラしてんだから……
「外では履いて欲しくないって、思って……ました。オマエの脚見てる奴、ムカついてしゃーないから……」
沈黙。
空調と、水滴の弾ける音。
お互いの早い呼吸。
「え、えっと……」
しどろもどろの相棒に、僕は消えたくなる。
恥ずい。
頼むから、聞くな。
『いつから』って聞くなよ?
「その、いつから?」
僕は、最大の罪を告白する事になった。
「……常々」
俺は、顔を上げて、必死に言い訳する。
真っ赤な顔で手を組み、斜め下を見てる相棒。
前より、少し伸びた髪で、横顔はほとんど見えない。
「だって、俺の相棒なんだぞ! キレイだからって、ジロジロ見られたら、ムカついて当たり前だろ!」
そーだよ、幼稚園の頃からの付き合いだぞ!
「……人のモン、勝手に見んじゃねえって」
「ノースリーブ……アカンの?」
うわ、恥ずい!
聞いてたのかよ、話噛み合ってないから、安心してたのに!
「オマエ、二の腕とかワキのライン……キレイだし」
「ふーん……だから、こないだナメ回してたんだ? ナットク」
「ハァ!? そんな事するかっ!」
怒って顔を上げると、左ワキをさらして、指差してる、相棒。
赤い顔は変わらないけど……
イタズラっぽい笑顔と、自信に満ちた眼は、いつものリーファだった。
「アタシが、オマエにウソつくわけ無いじゃん? 入院する朝、寝ぼけてペロってたんだぞー。ハスマイラも見てたんだぞー」
「えええ!」
うわ、俺サイテー!
知ってたけど、レベルさらに下がったわ!
それと、語尾伸ばすの、不意打ちでカワイイからやめれ!
よいしょと浴槽をまたぐと、自信たっぷりに歩いて来る。
「ふっふーん。そうですか、タイトスカートNGなんだ? わがままだなー。どしよっかなー?自分は好き放題、色んなコ、ペロってるのになー?」
クッソ、何か口惜しい!
何、コノ、スピードくじ一番違い女!?
5秒前まで、泣いてたくせに……
ヤッパ言うんじゃ無かった!
「でも、正直なトコは、ほめてあげるよー。ナデナデだよー」
反論する前に、抱きしめられた。
不意打ちに、頭がショートする。
「うれしい……スッゴク、うれしい」
幸せそうな声。でも、ヤッパ震えてる。
リーファの匂い、柔らかさ。
「いいよ……タイトは凛と二人の時だけ、冬もノースリーブで行く!」
「忘れろ!?」
リーファの腕の中でもがく。
余計に抱きしめられた。
濡れた髪と頬が、僕の額にくっついて、クラクラする。
「ダメでーす。忘れませんえんだよーん」
クソ、かわいいな、チクショウ。
普段、こんな甘えた喋り方しないから特に。
額に唇が押し付けられた。
「凛……」
囁き声に、心臓が高鳴る。
イヤ……マズいよ。
ハスマイラさんもいるのに。
その時。
リーファが、敵の足音を聞きつけた、マングースみたいに、顔をもたげた。
僕には何も聞こえない。
けど、住み慣れてるリーファには分かるんだろう。
心臓を射抜く、一言を漏らす。
「……パパ?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!