タイムスリップ、どこからやり直しても、誰かを裏切った様な気持ちになる
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジン
小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
「……ったく、何でこんな事まで」
「……スミマセン」
もうもうと、湯気の立ち込める風呂場。
僕は年季の入った、木造りの腰掛けに座り、後ろに立った相棒が、僕の頭を洗ってくれている。
出前が届くまでの間、先にシャワーする事になったんだ。
僕はパンツ一丁、リーファはさっきの部屋着のまま、濡れるに任せてる。
リーファん家のお風呂は、広い。
10畳くらいある。
橘さんのこだわりなのか、浴槽はひのきで出来てるし、浴室は、黒がベースのタイル張り。
小さい頃は、リーファと僕を、橘さんがお風呂に入れてくれたりしてた。
湯気でも曇らない、鏡に映る僕の腫れた顔。
額もリーファの頭突きを喰らって変色している。
それでも、僕の心は穏やかだった。
「何、ニヤニヤしてんだよ」
「わぶっ」
頭から、シャワーをぶっかけられ、僕の視界が滝に閉ざされる。
カチューシャで、僕と同じくらい変色したおでこと、不機嫌な顔を、晒したリーファ。
泡立っていた、シャンプーが流され、視界が戻ったので、よく見える。
僕は慌てて、笑顔を引っ込め、上目遣いで恐る恐る言った。
「……いや、昔はよく一緒に、風呂入ったなって」
「……今、現在も入ってるだろ。凛が一人で入るのビビるから」
「あ、当たり前だろ? 橘さんに『ここに入っていいのは、私と娘だけだ……分かるな?』って脅されたんだぞ、前に会った時!」
「……だからか。なら、一緒に入ってるってバレたら、大変な事になるよ?」
僕の頭と肩に、ズッシリと、見えないオモリがのる。
ホントだ。
シンプルに死なされるやん。
「でででも、服着てるし、どっちも」
「あー、そーだね、大丈夫、大丈夫」
何、そのやる気の無い、棒読み?
頭からまた、シャワーされたので、それ以上何にも言えなかった。
橘さん、今日も帰って来ないよね?
めったに帰ってこないんだから、よりによって今日ってこた、ないよね? アタイ、シンジテル。
「終わり。身体は自分で洗いな」
「あ、ありがと……ってオイ!」
さっさと、濡れたTシャツを脱ぎ始めた、リーファに僕は慌てる。
相棒は、こっちも見ず、投げやりに言った。
「何だよ? 見て、笑いたきゃ笑えよ。ワタシは、ブロンドでも無ければ、胸も無いしな」
スウェットを脱ぎ始めた、リーファの手首をつかむ。
「やめろよ」
「……離せよ。今更カッコつけんなよ。ああいうのがいいんだろ、オマエも」
僕は怒らなかった。
オーリャが、ああいうの扱いされてもだ。
ただ、タダ、自分は許されたと勘違いしてた自分に、愛想が尽きるだけ。
リーファが、僕を許してくれたらどうなるか。
リーファの中で……
重い気持ちが、くすぶり続けるだけだ。
相棒が、何でこんな事をするのかも、分かっている。
僕にこう言われるのを、待ってるからだ。
「キレイだぞ。オマエは充分」
リーファが、何か言おうとする気配を察して、僕は先回りした。
「僕がオマエに、嘘つかないのは、分かってるだろ? ………だからこんな事に、なっちゃったんだけど」
顔をそむけて、後頭部しか見えない。
毛先にシャギーの入った、ショートボブが、震える。
細い身体。
傷つきやすい、心。
短気な所も、誰より僕に甘い性格も、よく知ってる。
「でも……オマエはオリガを、選んだじゃん」
震え始めた声。
立ち込める湯気。
オーリャの時と、シチュエーションがかぶって、僕はタイムスリップしてるみたいな……
異世界に、迷い込んだような気がした。
流行りの、死に戻り設定が、頭をよぎる。
もし……やり直せるなら、僕はどのセーブポイントから、やり直したいだろう?
……相当、昔を選ばない限り、どこを選んでも、誰かを裏切った様な、気になる。
こんな無意味なこと、考えてる場合じゃない。
伝えるんだ。
オーリャの言ってたセリフ。
『言わナキャ、ワカンナイヨ』
そうだ、そして伝えられる機会って、そうある訳じゃないって、知ったんだ。
だから……伝える。
僕は、ウソは下手でも、ホントの事を言うのは、得意だ。
「リーファは、僕の事知ってるだろ? 外見だけで、誰かを選んだりしない」
流しっぱなしのシャワーが、大理石調の床タイルを、叩き続ける。
相棒の後ろ姿から、力ない声が漏れた。
「じゃあ、何でオリガだったのさ。正直……一番ナイ気がしてたのに。凛、ヒト前でイチャつく系、絶対無理だろ」
……確かに。
だから、正直に答えた。
「分かんない」
改めて、自分に聞き直す。
何で、彼女を選んだんだろう?
きっかけは覚えてる。
アイツが、独りで泣いてたからだ。
ほっとけなかったんだ。
「なら、私が教えてやるよ。オリガを選んだ理由。ホントは、私達、全員が知ってる事……
凛は、泣いてるヤツを、ほっとけないんだ」
僕は、反論出来なかった。
「それってつまり…… 私達の誰でもいいんだよ、きっと」
その言い方に、ショックを受けたけど……
何となく納得した。
ナディアに言われた時はキレたけど、今は冷静に受け止められる。
「ナディアには言われたよ。オー……オリガにも。『凛は戦うのが好きなんだ』って。それでキレて、保健室で暴れてたから、ものべに殴られたんだ」
リーファはうつむいて、ポツリと言った。
「そりゃ、キレていいでしょ…… ナーも…… 言った事、後悔してるだろうな」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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