死ねよ
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジン
小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
僕は、思わず我を忘れた。
「あ、あの後、何か連絡……」
ナディアの不機嫌な返答。
「ある訳ないじゃろ。オリガのlineアカ、消えてたんじゃから」
僕は肩を落とす。
「そっか……そだよね…… いや、電話とか」
「無いワ」
「……うん。ゴメン」
しょぼくれる僕に、盛大なタメ息をついた。
「林堂……イチャつくのは、自由じゃけんど……アレ、ちょっと無神経過ぎじゃろ? 今もじゃけんど」
僕は、タオルケットを握りしめたまま、しどろもどろに言った。
「わ、分かってる! でも……必死だったんだ……」
「さよか」
ナディアの冷たい声にも、自分を押さえることが出来なかった。
「なあ、ナディア。オリガの言ってた事…… その、どう思った?」
「……どれの事、言うとるんじゃ?」
さらに不機嫌な声。思わずひるみそうになるくらいに。
「その……僕が……いつかいなくなるって」
ナディアが、信じられないモノを、見る目になった。
口を開きかけて、ため息をつく。
「なあ…… この夏で、何回殺されそうになったか、数えてみんさい」
僕は、寝不足で、重い頭を巡らせる。
バロチスタンから始まって、大阪大会の殺し屋…… メグとの逃避行中には、少なくとも、3回は殺されかけた。
「4、5回かな……」
「最前線の傭兵でも、そんなんないワ。しかも……」
ナディアは、視線を落とした。
「全部、誰かの為じゃ」
弱い冷気を吐き出すクーラーの音、セミの声。
ナディアの声には元気が無かった。
「オリガの言う事は、全部ホンそれ。ウチらからすりゃ、今更でもな……けんど」
ショートボブ ――いや、肩まで届いてるから、ロングボブか―― で横顔が見えない。
「メグの話は引いた。ウチやリーでも、鉄砲で撃たれたり、自爆ドローンに襲われた事は、流石にないけん」
……よく考えたら。
いや、よく考えなくても、これって異常だよな?
これがフツーって言えるのは、毎日怪獣が襲ってくる、円谷プロ作品に出てくるモブか、シリアの少年兵くらいだ。
ナディアの声は暗い。
「そんな男、オリガみたいに、普通の家庭欲しがっちょるヤツには、イチバンナイワ…… アイツ、気の毒じゃとも思う。ウチも、中々異常な家庭じゃけんど、家族仲は悪くないけ、オリガの気持ちは想像しかでけん。でもな………」
震える声で、ナディアは吐き出した。
「なら、はじめっから手ェ出さなきゃエエんじゃ! なんじゃ、あの露助、やっちょる事、最悪じゃろ!」
……ナディアじゃなきゃ、オーリャの悪口なんか、許さなかったと思う。
でも、コイツラは、彼女の友達だから、その資格があると思うし、そこに僕が、口を挟むのは間違いだ。
例えば、僕がジンの批判をして、その恋人が口を挟んできたら、こう言う。
『僕とジンの問題だ』って。
けど……
「ナディア、悪いのは僕だよ。言われるまで、全然、自覚なかったもん、自分の事……」
ナディアが、顔を上げた。
涙で光る目でぼくをニラむ。
「かばい立てして、仲がええこっちゃのう! もう一つ、教えちゃる。メグも言うちょったけど、オマエは、闘いが好きなんじゃ…… リーも同意見じゃ、キレた時の眼が、パパそっくりっての!」
それは、俺の地雷だった。
オーリャに、同じ事を言われたから。
俺は本気でキレた。
「ああ、そうかよ、テメェらなんか、助けに行くんじゃなかったよ!」
ナディアが、眼を見開いて、言葉を途切れさせた。
俺の言葉は止まらなかった。
「限界だ。俺が全部悪いんだろ? なら、言わせてもらうけど、言ったはずだぞ、リーファのマンションでッ! うっとうしいから、寄ってくんなって!」
青くなって、震え始めたナディアに、枕を投げつけた。
「闘いが好きだァ? フザケンな、俺ァ、ジンたちと楽しく過ごしたかっただけなのに、オマエラが寄って来たんじゃネェか!」
投げつけられた枕より、俺の言葉から身を守るように、逃げ腰で腕をかざす。
知るか。
「そーだよ、オマエラ全員に、やっちゃいけない事したワ。けど……俺が全部悪いんかよ!? 一度でも、無理強いしたか?」
涙で視界がボヤける。
ナディアも泣いてた。
「林堂、落ち着いて……」
「落ち着けるかッ! 俺は賭けたぞ? 賭けれるもの全部、オリガも含めた、お前達にッ! ナンにも、残んなかったけどなあッ!」
「ゴメン、ゴメンて。ウチが言い過ぎたけん……」
「俺が、スマブラやる感覚で、殺し合いしてたとか、本気で思ってるんだろ? レジャー感覚で、大阪大会前に、パキへ行ったって思ってるんだろ? 死ねよ!」
「そ、そんなん言わんといてや! 謝っちょるやんか!」
手を震わせて大声で泣き出す、ナディア。
知るか、どうせ俺は狂ってんだ。
ドアのすりガラスに、影が差した。
誰か入って来る。
だからなんだよ?
「許すか、ボケ。言っていい事と、悪いことがあるだろがッ! オマエラが大事だから、身体張ったのに! 『そう言うの好きなんだろ』って、全否定じゃねえか……ヤメろ!」
ベッドから降りた俺は、膝を着こうとしたナディアの肩と髪を、掴んで立たせる。
「ツマンネェマネしてんじゃねぇ! 俺が悪いみたいじゃねえか!」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
情けない顔で泣きじゃくるナディア。
その時、ドアが音を立てて開いた。
ズカズカと大股で歩み寄る影が、誰かを認識する前に、頬に凄まじい衝撃が走った。
ナディアの悲鳴。
ハンパないパワーだ。
ひとたまりもなく吹っ飛び、ベッドに倒れ込む。
視界が揺れ、ぐわんぐわんする頭を上げる前に、声で誰だか分かった。
「いけませんねえ。殺し合いした程度で、恩着せがましく……そんなんだから、誰も残らない訳です。
先生は情けないですよ?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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