表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
327/1078

白い女


《登場人物》


 林堂 凜


 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。



オリガ・エレノワ


日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。



 梁 梨花リャン・リーファ 


 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。



 香咲 ナディア=マフディー


 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。



ジン


小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。



佐竹


小6、女。クラスのボス。




 昼休み。

 

 廊下は、最後の1分まで遊び尽くそうとする、6年生達であふれかえっていた。


 僕の3歩前を、ぐずぐずと泣きながら、歩くジャンパースカート姿。

 

 首から下と、膝のあたりが牛乳で濡れてしまったので、保健室にジャージを借りに行くんだけど……


 お互い、視界の隅で頷いただけで、一言も話せてない。


 僕はカレンダーを呪った。

 せめて、3日くらいは時間が欲しかった。


 昨夜は、全然寝られなかったし、祈るようにチェックしたスマホは、ホントにオーリャのlineアカが消えてるのを見てから、電源を落とした。


 なんにもやる気が起きず、かと言って、部屋に戻っても、思い出に潰されそうになるだけだから、古市で時間を潰す。


 夕方、イヤイヤ帰ると、オリガの住んでいた部屋の、カーテンが無くなっていた。

 

 マフディ家が手配したのか、引っ越しが終わっていた。

 

 それで気づいたんだ。


 オーリャの部屋のダンボール。

 あれは、引っ越しして来てから、そのままなんじゃなくて、帰る準備をしてたんだなって。

 


 それにしても、草内の奴……


 よりによって、昨日、あんな事があった僕を選ぶとか、ひどくね、あのバカ担任?


 まあ、事情は知らないわけだけど。


 僕には、今のナディアに、かける言葉が見つからない。色んな意味で。


 力なく歩くナディアが、何かブツブツ言ってるのに気づいた。


「……… スクワット30回2セット、ジャンピングスクワット30回3セットから、まさかの肩車スクワット……足の太さ倍にしちゃるけん……」


 ヨカッタ、元気そうだ。


 リーファとメグは、どうしてるだろう?


 ……分かってる、必要以上に傷つけた僕が、1番心配する資格が無いって事ぐらい。


 それでも。

 心の中で心配するくらいは、許してほしい。


 オーリャは、無事帰れたのかな?

 昨日から何度も同じことを考えてる。


 誰か、それだけでも教えてくれないだろうか。

 

 昨日から、自分の女々しさに驚いている。

 僕って、こんなにも情けない性格してたっけ?


 

 「……堂。どこ行くんじゃ?」


 ナディアに、声をかけられてることに気づき、慌てて振り返る。


 いつの間にか、保健室と反対側に曲がっていた、僕。


 目が合ったのは、一瞬だったけど、泣き腫らした目は……… 昨日からなんだろうな。


 「あ、ごめん」


 僕がそう、声をかけたときには、前を向いて歩き出していた。


 気まずい僕は、廊下に張り出されている、『歯を磨こう!』の張り紙を何となく眺める。

 

 オーリャと一緒に、歯磨きしたよな。


「この後、『終わりの会』だけじゃ。ちょうどええし、保健室でサボろ」


 フツーに声を掛けられた事に驚き、思わずナディアの後ろ姿を見た。


「……あ、うん」


 そう答えるのが、精一杯だったけど、階段を降りて行く、彼女には聞こえたかな。




「……保健の先生、いっつもおらんのう」

 

「僕も、ほとんど会ったことない」


 薬品の匂いがする保健室は、妙に緊張感と、安心感を与えてくれる。


 ケガをしたときに来て、治療をしてもらった、今までの経験のせいかな。


 病院のベッドみたいに、すっぽりカーテンで覆われてるのが2つ。


 メグと駆け込み寺した夜に、僕もお世話になった。


 ナディアは、棚から勝手に、ジャージの上下を取り出す。


「うち、こっちのベッドで着替えるけん、そっちで寝んちゃい」


「そうするわ」


 出来るだけ、いつもっぽく返事したつもりだけど、上手くできてるかは、分からない。


 風呂に入らず、布団に入るのって実は苦手だけど、この間、リーファにボールぶつけられてここ(保健室)送りになった時は、田んぼで泥だらけだったもんな。

 それに比べりゃ、全然マシ。


 ぼんやりと、カーテン越しに、ナディアが立てる衣ずれの音を聞く。


 緊張してるのは、女子が着替えてる事より、昨日の気まずさが理由だ。


 ……ホントに、何にも残らなかったな。


 みんなとの仲も壊れちゃったし、オーリャも消えてしまった。


 それが分かってたから、アイツ、黙って去ろうとしてたんだ。


 全部、僕が悪い。


 「んじゃ、うち、いくけん」


 「わかった。ありがとう」


 反射的に、そう答えるので、精一杯だった。

 

 1ヶ月先の、スマブラ全国大会の事も、今は話す気になれない。


 それどころか、天気の話さえ難しい。


 何より、今一緒にいたくないのは、ナディアも同じだろう。


 その時。


 ズタダダと、廊下を走ってくる足音がした。


 ガラガラッ


 「おまたせ、林堂! ナディアの足持っとけばいいんだね?」


「………さたん。ヒンズースクワット、500回追加な。何でジャージに着替えてないんじゃ?」


 カーテンの向こうで、佐竹劇場が始まった。


「まあ聞いてよ! さっきは、マジゴメン。ちゃんと、掃除して来たし、誰にもナディアの事、白女とか呼ばせたりしない!」


 ……白女。


 不覚にも、僕は、うつむいて笑いをこらえた。


「……リーファが休んだけん、牛乳余っとるじゃろ? 3人とも口にためて、5年の時演ったソーラン節、踊りんさい。うちが、エエ言うまで」


「え? ダサいししんどいし、ソレはイヤかな……林堂いる?」


 「いないけど?」


 僕は即答した。巻き込まんといて?


 佐竹は、耳を疑うような事を言った。


「ヨカッタ! んじゃ、リーファん家行こっか?」


 





毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ