白い女
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジン
小6、男。クラスのリーダー。インドネシア人。優しい。
佐竹
小6、女。クラスのボス。
昼休み。
廊下は、最後の1分まで遊び尽くそうとする、6年生達であふれかえっていた。
僕の3歩前を、ぐずぐずと泣きながら、歩くジャンパースカート姿。
首から下と、膝のあたりが牛乳で濡れてしまったので、保健室にジャージを借りに行くんだけど……
お互い、視界の隅で頷いただけで、一言も話せてない。
僕はカレンダーを呪った。
せめて、3日くらいは時間が欲しかった。
昨夜は、全然寝られなかったし、祈るようにチェックしたスマホは、ホントにオーリャのlineアカが消えてるのを見てから、電源を落とした。
なんにもやる気が起きず、かと言って、部屋に戻っても、思い出に潰されそうになるだけだから、古市で時間を潰す。
夕方、イヤイヤ帰ると、オリガの住んでいた部屋の、カーテンが無くなっていた。
マフディ家が手配したのか、引っ越しが終わっていた。
それで気づいたんだ。
オーリャの部屋のダンボール。
あれは、引っ越しして来てから、そのままなんじゃなくて、帰る準備をしてたんだなって。
それにしても、草内の奴……
よりによって、昨日、あんな事があった僕を選ぶとか、ひどくね、あのバカ担任?
まあ、事情は知らないわけだけど。
僕には、今のナディアに、かける言葉が見つからない。色んな意味で。
力なく歩くナディアが、何かブツブツ言ってるのに気づいた。
「……… スクワット30回2セット、ジャンピングスクワット30回3セットから、まさかの肩車スクワット……足の太さ倍にしちゃるけん……」
ヨカッタ、元気そうだ。
リーファとメグは、どうしてるだろう?
……分かってる、必要以上に傷つけた僕が、1番心配する資格が無いって事ぐらい。
それでも。
心の中で心配するくらいは、許してほしい。
オーリャは、無事帰れたのかな?
昨日から何度も同じことを考えてる。
誰か、それだけでも教えてくれないだろうか。
昨日から、自分の女々しさに驚いている。
僕って、こんなにも情けない性格してたっけ?
「……堂。どこ行くんじゃ?」
ナディアに、声をかけられてることに気づき、慌てて振り返る。
いつの間にか、保健室と反対側に曲がっていた、僕。
目が合ったのは、一瞬だったけど、泣き腫らした目は……… 昨日からなんだろうな。
「あ、ごめん」
僕がそう、声をかけたときには、前を向いて歩き出していた。
気まずい僕は、廊下に張り出されている、『歯を磨こう!』の張り紙を何となく眺める。
オーリャと一緒に、歯磨きしたよな。
「この後、『終わりの会』だけじゃ。ちょうどええし、保健室でサボろ」
フツーに声を掛けられた事に驚き、思わずナディアの後ろ姿を見た。
「……あ、うん」
そう答えるのが、精一杯だったけど、階段を降りて行く、彼女には聞こえたかな。
「……保健の先生、いっつもおらんのう」
「僕も、ほとんど会ったことない」
薬品の匂いがする保健室は、妙に緊張感と、安心感を与えてくれる。
ケガをしたときに来て、治療をしてもらった、今までの経験のせいかな。
病院のベッドみたいに、すっぽりカーテンで覆われてるのが2つ。
メグと駆け込み寺した夜に、僕もお世話になった。
ナディアは、棚から勝手に、ジャージの上下を取り出す。
「うち、こっちのベッドで着替えるけん、そっちで寝んちゃい」
「そうするわ」
出来るだけ、いつもっぽく返事したつもりだけど、上手くできてるかは、分からない。
風呂に入らず、布団に入るのって実は苦手だけど、この間、リーファにボールぶつけられてここ送りになった時は、田んぼで泥だらけだったもんな。
それに比べりゃ、全然マシ。
ぼんやりと、カーテン越しに、ナディアが立てる衣ずれの音を聞く。
緊張してるのは、女子が着替えてる事より、昨日の気まずさが理由だ。
……ホントに、何にも残らなかったな。
みんなとの仲も壊れちゃったし、オーリャも消えてしまった。
それが分かってたから、アイツ、黙って去ろうとしてたんだ。
全部、僕が悪い。
「んじゃ、うち、いくけん」
「わかった。ありがとう」
反射的に、そう答えるので、精一杯だった。
1ヶ月先の、スマブラ全国大会の事も、今は話す気になれない。
それどころか、天気の話さえ難しい。
何より、今一緒にいたくないのは、ナディアも同じだろう。
その時。
ズタダダと、廊下を走ってくる足音がした。
ガラガラッ
「おまたせ、林堂! ナディアの足持っとけばいいんだね?」
「………さたん。ヒンズースクワット、500回追加な。何でジャージに着替えてないんじゃ?」
カーテンの向こうで、佐竹劇場が始まった。
「まあ聞いてよ! さっきは、マジゴメン。ちゃんと、掃除して来たし、誰にもナディアの事、白女とか呼ばせたりしない!」
……白女。
不覚にも、僕は、うつむいて笑いをこらえた。
「……リーファが休んだけん、牛乳余っとるじゃろ? 3人とも口にためて、5年の時演ったソーラン節、踊りんさい。うちが、エエ言うまで」
「え? ダサいししんどいし、ソレはイヤかな……林堂いる?」
「いないけど?」
僕は即答した。巻き込まんといて?
佐竹は、耳を疑うような事を言った。
「ヨカッタ! んじゃ、リーファん家行こっか?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!