金髪女神は振り向くか
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
オーリャの体が熱気を放射してる。
僕はエスパーでも、何でもない。
けど、僕の両袖を掴んで、胸の中で震える恋人が、自身と闘っている事くらいは分かる。
……これは、闘いだ。
空港に来るまでの間、オーリャが考えてること…………
どう行動するか、どう言って来るかを、あらゆる角度からシュミレートした。
オーリャを失いたくない。
絶対に説得するんだ。
それ以外の事は、何も考えない。
考えられない。
わざわざ、目の前で見せつけられ、リーファ達が、どれだけショックを受けてるか、傷ついてるかを考える余裕もなかった。
本物のクズ、その言葉が頭をよぎる。
それでいい。
その通りなんだから。
行くぞ。
「オーリャ……」
ノロノロと、僕を見上げる青い瞳。
涙と鼻水、白い顔。
赤く腫れた眼。
そりゃ、サングラスかける訳だ。
それでも、僕にとっては、愛おしさが込み上げて来るだけ。
さすがにキスはしなかったけど、頬を挟んで顔を覗き込む。
「死ぬほど、誰かの事を好きになる……それって悪い事なの?」
オーリャの眼に一瞬、横切る迷い。
ここだ。
「それが受け入れられない理由は、昨日聞いた。
自分がコントロール出来なくなる怖さなら、僕だってよくわかる。僕もそうだから、オーリャを追っかけて来て、今、ここにいるんだもん」
彼女はうつむいた。
「ね、僕達、あんまりにも、急ぎ過ぎてるんだよ。そう思わないか?」
金髪の後頭部は動かない。
サラサラした髪を撫でる。
黄金の絹糸みたいだ。
「言ってくれたじゃん。僕の事は何でも知りたいって。僕も同じなんだ。オーリャの事を知りたい……もっと時間をかけようよ」
彼女のこぼす涙が、胸を濡らす。
リーファ達のすすり泣きが、僕の心臓を抉る。
いいぞ。
もっと抉れ。
僕は全身がこわばるのを、押さえきれない。
食いしばった歯が折れそうだ。
ひとりよがりの、こんな責任のとり方しか出来ない、僕を責めろ。
ゴメン。
リーファ、ナディア、メグ……ジャス子。
全身が震える。
考えちゃいけないって思えば思うほど、彼女達との色んな場面が、頭をよぎる。
あんな事しといて、被害者面かよ、俺?
ハスマイラさんか、SGさんでもいい。
僕をブチ殺してくれないか?
「分かってナイヨ」
ぽつりと、オーリャが言った。
「うん。だからこそ……」
「チガウよ……リン、自分の事をダヨ」
「……え?」
考えてもいなかったその言葉に、僕の思考が止まる。
固まった笑顔の、僕をよそに、ほんの少しだけ振り向いたオーリャが、ガラガラ声で伝えた。
「Girls……今カラ、ワタシが言うコト……マチガッテタラ、イッテ。一昨日の夜、ワタシマンションの階段で、ヨッパラって倒れテタ。リンドウが、タスケテくれたよ」
返事は無い。
国内線のアナウンスが、ここはイオンじゃない事を教えてくれてるだけ。
僕は別の事に、ショックを受けていた。
リンドウ。
ダーリンでも、パパでも、アナタでもない。
やめてくれよ……そんな呼び方。
パパリンでもいいから。
ハスマイラさんとSGは、僕らを挟むように位置して、背を向けている。
「リン……ドウなら、アソコに倒れテタノガ、リーファデモ、ナディアデモ、タブン同じ事シタヨ……」
僕は、その言葉の意味を理解するのに、数秒かかった。
「あ、当たり前だろ!? ほっとけるかよ!」
オーリャは首を振った。
意味がわかってしまった。
『そういう事が、言いたいんじゃない』
その仕草だけで、分かってしまったのは。
たぶん今から彼女が言う事を、想像できたし……心当たりが、あり過ぎるからだ。
「メグの事は知らないケド……… ううん、チガウ……」
オーリャは、座り込んで膝に顔を埋めてる、ワンピースの雪女を、少しだけ振り向いた。
「アイツ、別人ジャン。自信にアフレテルヨ。リン……ドウと、何かアッタンダロ……スゴい……事ガ」
その通りだ。
僕とメグは、命を預けあった。
シャープなオーリャ。
最強のビジネス・ガール。
「ダカラ、言い直すヨ。メグでもジャスミンでも………護ろうとシタヨ、キット。リーファ、ナディア……タブン、メグも、ハート、傷ダラケダカラ」
息が止まった。
「誰デモイイんじゃナクテ……誰も放っとけナイんだヨ」
ヤバイ。
スマブラで、自分が窮地に立たされてる時みたいだ。
ただし、焦りはその何百倍だ。
失くしていい、ストックは………… 無い。
「違う!」
「チガワないヨ……」
僕はもどかしくて、叫んだ。
「そんな『もしも』のハナシしてどうなるんだよ……あんまりだろ!?……そこまで……… 信用出来ないのかよッ!」
「……ナラ、オーリャ以外のダレカの為に、死なないッテ約束……」
「する!」
オーリャが、真っ赤な顔を上げると、右手を思い切り振りぬいた。
容赦ない一撃。
衝撃で頭部がズレ、目から火花が出た。
不意をつかれて、僕はひとたまりもなく、倒れ込んだけど……
うれしかった。
やっと見せてくれた、激情。
この痛みは、オーリャの本音。
吹っ飛んで来た僕に、通りかかった夫婦が悲鳴をあげる。
僕の上にのしかかって、拳で胸を乱打しながら、喚くオーリャ。
ロシア語だから、分からないけど……
胸のうちを吐き出し続けるオーリャに、僕は声をかけそうになった。
いいぞ。
もっとだ……
あんな別れ方より、よっぽどいい!
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!