ラマーズ法は、シベリア生まれ 〜パパリンとママリン〜
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
「胎教……超・若いのに感心やね……」
母さんのセリフに、父ちゃんも、声を震わせながら答える。
二人とも、俯いて泣くのを、こらえている様に見えた。
スゴく辛そうな両親を見て、僕は事の重大さを改めて認識する。体が重くなった。
それでも、そんな事はとっくに分かってるつもりだ。
つもりでしか、ないかもだけど……
今まで二人でいた時間、お互い、スマホはいじらないって、約束してたんだ。
ググっても、ろくな事にならないのは分かってるから。
自分達に都合のいい情報を、集めても仕方ない……けど、それを我慢するのは、ホントにキツかった。
二人でいたから、耐えられたんだ。
テーブルの下でつないだ手に、力を込める。
オーリャは、ここぞとばかりに攻め込んだ。
「パパ、ママ。オリガ達ホンキデス。コレからどうなるか、想像つかナイケド、ドンナ事シテでも、ベイビーは護るネ。
女ノコだったら、『おりん』、男ノコだったら『リンノフスキー』ダヨ」
「え……そなの?」
得意げに、でっかい胸をそらすオーリャ。
「ソダヨ。ドッチニモ、『リン』が入ってるデショ? オーリャ、お米洗ってル時に、インスピレーションの神様が、降りてキタヨ」
ぼく、ホムラか、レックスにしたかったのに……
母さんたちが、テーブルに突っ伏して、震えている。
「リンノフスキー……」
「おりん……町娘……かいな」
……そだね、母さん。
悪代官にさらわれそうな名前だね。
恋人に、言ったほうがイイのかな?
おりんって、仏壇でチーンってするヤツだよって。
ロシア残留孤児にしか聞こえないから、リンノフスキーはやめよって。
顔もスタイルも完璧なのに、ネーミングセンスは残念な彼女が、得意げに自己PRを続ける。
「オリガ、妹の面倒ミテキタし、メイドもやってたカラ、育児もハウスチョアもマカシテ。近所のお母サンタチとの井戸端会議もオチャノコサイサイネ!」
父ちゃんが、顔を伏せたまま、息も絶え絶えに言った。
「若いのに……感心やね、マジで……。 井戸端トークって……」
オーリャは、真っ赤になって、うりんうりんし始めた。
「パキスタンジャ、ローティーンの出産、アタリマエネ。イロイロ知ってるヨ……ダカラ」
チラっと僕を見て、恥ずかしそうに言った。
「リン……パパとさっきモ、アレ……『ヒッヒッフー』ヤッテタヨ」
僕は、顔が熱くなって、慌てて言った。
「オーリャ、それ内緒って……!」
オーリャが、両手で僕の手をはさんで、振る。
白い顔が真っ赤だ。
「ゴメーン、ダー……パパ。ダッテ……リンのママ達に、チャンとシテルって、思ワレたいジャン?」
床で四つん這いになって、咳き込む二人。
……なんだ、この人達?
笑ってるように見えるんだけど?
気のせいだった。
父ちゃんが、手首に巻いてる包帯を押さえて、悲鳴をあげ、母さんは、床を叩いて涙を流していた。
「汽車も電車も、止めてぇ! 傷口開いてもたやんか……!」
「思ってた以上に、ガチやな、色んな意味で!」
母さんが、床を見つめたまま吠える。
オーリャが誇らしげに、胸に手を当て言った。
「モチロンダヨ! ラマーズ・テクニックは、シベリア産まれナノ! リンのパパ、パパが……」
オーリャがゆでダコみたいに、湯気を出しながら、僕の手をうりんうりんする。
「モー、ヤヤコシイよお。 ね、リンの事、『パパリン』って呼ぶネ? オーリャの事は『ママリン』ダヨ?」
僕は、うろたえて手を振る。
両親の前で、何て事言うんデス!?
「やめろよ、ハズカシイって!」
「エー、いいジャーン…ね、おーりゃからのおねがいだよう」
間伸びした例の声で、あざとく覗き込んで来る。
クッソ、カワイイな、もう!
父ちゃんと、母さんが、声もなく床をのたうち回っているけど、それどこじゃない!
死ぬほどハズカシイデス!
僕はヤケクソで喚いた。
「勝手にすりゃいいだろ!」
「ハーイ、勝手ニスルヨ……パパリン」
そう言って、頬に軽くキスしてくる。
僕は絶叫しながら、走り去りたかったけど……
ロシアンをお嫁にもらうってこういう事なんだろな。
慣れないと、やってけないだろ、僕?
髪を振り乱して、手を突き出し、ストップをかける母さん。
「よお分かったで! な、父ちゃん? これ以上は命に関わる私らの!」
「せや! もう充分が過ぎる……押さえすぎて、手首の傷開いてもたけど、後悔してへんで!」
「リンパパ……」
感極まったように、涙を浮かべる、オーリャ。
僕も、感動した。
よかった、二人とも分かってくれたんだ!
温かいものが、胸に広がる。
オーリャが笑顔で頷き、僕も手を握り返す。
母さん、父ちゃん……!
頼りない僕達だけど、僕達3人で……
二人、息も絶えだえに、椅子に座り直しながら、母さんは、メガネを直しつつ言った。
「凛、お前の決意を聞かせえ……どうするつもりや?」
ぼくは、オーリャの体温を感じながら、母さんの目を見て言った。
「何があっても、オーリャを、そして赤ちゃんを守ります」
リンノフスキー……
母さんは一瞬顔をそらし、呟いた父ちゃんの頭をシバくと、アゴをしゃくって、続きを促す。
「頼りない僕達だから、助けて下さい、お願いします!」
オネガイシマス!
オーリャと二人、頭を下げる。
頭を上げると、母さんが、厳しい顔で僕を見ていた。
「凛、分かっとるんやろな? 今までみたいに、あっちフラフラ、こっちフラフラしてられへんねんぞ?」
「分かってる、オーリャだけを見てるヨ!」
食い気味に、母さんのセリフをカットする。
オーリャに握られた方の手が、砕けそうな力で握られてる事は内緒だ!
母さんが、吠えた。
「せやったら……ここで、バシッと言わんかい!」
そうだそうだ!
父ちゃんと、オーリャがハモる。
僕は熱くなった。
恥ずかしさもあったけど、母さんの言うとおりだから……
みんなの前で誓うんだ!
僕は頷くと、オーリャの方を向いた。
見つめ返してくる、オーリャの潤んだ瞳。
僕からの言葉を待つ顔は、新郎の到着を待つ、花嫁みたい。
緊張するけど……決めるんだ!
「オリガ」
「はい」
食い気味な即答に、僕はガノンの魔神拳を意識しつつ、誓いの言葉を、口にする。
「幸せにするよ」
「……ウレシイ」
目尻から溢れる涙。
母さんのダメ出し!
「ちゃうやろ! さっき何て呼ぶ言うたんや? 早速、約束破るような旦那が、家庭守れるかい!」
え、マジ?
言うの、アレ!?
恥ずかしさで、即死しちゃうよう!
オーリャが、夢見るような顔で囁く。
「ママリンダヨ、パパリン……Go on」
僕は、大戦場の一番上から、下Bで飛び降りるつもりで言った。
「マ、マリンを……パパ……リンが幸せにしますっ!」
母さんの満足げなため息。
そっちを見ると。
二人は、とてもいい顔で頷き、言った。
「「……アホやん」」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!