女の子を護ると言う事
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ズカズカ上がり込んでくる、母さんの告知に、僕達は半泣きになった。
「そそそうなの!?」
「ドド、ドーシヨ!?」
真っ赤な顔をした、母さん、うつむいて、その後ろに続く父ちゃん。
悲鳴を上げる、僕らの前まで来ると、仁王立ちで、タンカを切った。
「オマエラ、これで人生変わるん、わかっとんのか、あーん!?」
「ぼ、僕、退学かな!?」
母さんは、寝不足で腫れぼったい眼で、ギロリと僕を睨んだ。
「あったりまえやろが! 不純異性交友と、未成年淫行の動かん証拠があるんやで、オリガちゃんのお腹に! お前なんか、小学校中退の、幼稚園卒じゃ!」
「よっ、幼卒!?」
なんつー、ヤバイワードだ!
そこからつながる将来が全く見えない!
昔、2ちゃんねる時代に流行った、『お刺身にタンポポをのせる仕事』ってワードが頭をよぎって、腰が砕けそうになった。
「オ、オーリャ、日本追放カナ?」
父ちゃんが、腹を押さえ、苦痛をこらえるように顔を上げた。
「それやったらまだええ方。入国管理局で、羽交い締めで、腹パンされて流産……オリガちゃんのTシャツ着た凛が『真実を知りたい』とか言うて、記者会見しとる未来しか、見えんのやで!」
「NOッ!」
オーリャの金切り声を聞いた、
母さんが後ろを向いて、震える声で言った。
「父ちゃん……ソコはむしろ、加害者の入管職員の、顔が載ったシャツやろ」
えっ、そんなのヤダ!
イチハシ容疑者のTシャツ着てた、ルーシー・ブラックマンさんの父親じゃん、はた目、ファンにしか見えないヤツじゃん!?
「分かっとんのか、凛?どのみち離ればなれは、避けられん。そのうち、加○川少年院から、『入院のお知らせ』が来るやろ……安心し。運動会もあるし、クラブ活動もある。お腹の子が3歳なる頃には、シャバに出れるやろ」
しんみりと、涙を浮かべる母さんに続いて、父ちゃんが呟いた。
「オリガちゃんが、6人部屋に17人くらいで閉じ込められる思うたら胸が痛い……大阪の入管は、コスプレスポット・南港のそばにあるから、部屋の奴らはみんなヲタクや。そんな奴らとスシ詰めにされて……」
父ちゃんは、目を逸らして、叫んだ。
「全員、メガネ曇ってるんやで!」
「ゼッタイ、ヤダああ!」
僕とオーリャは、恐怖のあまり、抱き合って泣き出した。
ヤダヤダ!
ジンたちと遊べなくなる、スマブラの全国大会出れなくなる、配信も観れない、オーリャとも会えない!
全国大会、割とどうでも良くなってるし、今はリーファ達との事を、考える余裕ないけど!
けど!
せっかくひとりの女子と、向き合う覚悟が出来たのに……
彼女が、ハフハフ言ってる、眼鏡の腐女子に挟まれ、脂まみれにされるなんてッ!
オーリャが、切羽詰まった表情で喚いた。
「ゼッタイヤダ! オーリャもレイヤーダケド、モデルのぷらいどあるモン。あんなウェイトのケアもシナイ、ヤツラと一緒に暮ラシタラ……」
僕らは震えながら、お互いの頬をはさみ合う。
「……オリガも、ハフハフ言うようになるの? 喋り方がネッチョリになるの? なんの衣装を着ても、マツコ・デラックスの、コスプレしてるようにしか見えない、体型になっちゃうの?」
「死んだ方がましマシだよう!」
抱き合って泣く僕らと、うつむいて震える両親を、高くなってきた、8月最後の太陽が照らす。
クーラーの音、セミの声。
「……んで、どうすんねん? 産むつもりか?」
静かな、母さんの声に、僕らはハッとなった。
僕らは顔を見合わせ、うつむく。
「分かんない……話が、急過ぎて」
父ちゃんが口を挟んだ。
「オリガちゃん、ペット飼ったことあるか?」
僕はない。マンションだし、毎日トレーニングばかりだったし。
「小サイ頃、チョットだけ……」
「飼い出したら、ヤーメタっちゅう訳にイカンのは分かるやろ? だけど、突然飼うことになった。さあどうする? マンションはペット禁止、だから捨てる?」
言葉もない僕達。
本当に、昨日の事が、今になって悔やまれる。
取り返しがつかないって、こういう事なんだ。
オーリャの恋人になった事は……嬉しい。
なんの後悔もない。
それだからこそ、昨日みたいな事はしちゃいけなかったんだ。
僕はまず、正座した。
「お父さん、お母さん……オーリャ。ホントにゴメンナサイ」
僕はフローリングの床に、土下座した。
「ダーリン?」
不安そうな声。
「僕は、オリガが好きです。だから、昨日みたいな事は、するべきじゃありませんでした。もっと大事にするべきでした」
「ダーリン……」
涙声が降ってきて……
「ワタシもゴメンナサイ」
僕の隣で、オーリャも平べったくなって謝った。
「リン、ヤサシイし、カワイイから、メッチャモテるよ。タイガー・ウッズ並ニ、モテモテダヨ」
ディスってるよね、絶対?
「ダカラ、オリガ、アセってたよ。イッショにオフロハイロって言ったの、オリガダヨ」
無言の両親。
「ごめんなさい、僕達二人じゃ、どうしていいか分かりません。助けて下さい」
僕は、自分の無力さを、ひしひしと感じていた。
母さんが言ってた『性の事はキチンとせなアカン』の重さを分かってなかった。
昔からある、定番の言葉、『責任をとる』の意味が分かっていなかった。
韓国ドラマで主人公が言ったセリフ、
『責任がとれないから、未成年なんだよ』
を痛感している。
とにかく、オーリャだけは守りたい。
……そうか。
僕は、気づいた。
「『女の子を守る』って言うのは、妊娠させないとか、学校に行けなくなるような事はしない、そういう事だったんだな……」
僕の独り言に、オリガがしがみついてきた。
オリガの匂い、しゃくりあげる声。
母さんが幾分、優しい声で言った。
「よう気づいたやん……アホの割には」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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