ミサイルのようなモノで
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
あれから、10分足らず。
オーリャん家のリビングで、僕らは両親と向かい合っていた。
雑に折り曲げられた、布団の横に並んで、うつむく僕と彼女。
母さんは、本気で怒ってるし、いつもはのんきな父ちゃんも、険しい顔で、腕を組んでる。
僕もオーリャも、引っぱたかれた頬が痛い。
僕らを殴ったのが、父ちゃんじゃなく、母さんな所に、事の深刻さが伺える。
いや、そんな事なくても、充分深刻な事態です分かってます。
地獄の底から湧いてくるような、母さんの声。
怖い。
「エロガキども、自分らのやった事わかっとんのか?」
「……すみません」
「……ゴメンナサイ」
「凛……こないだナディアちゃんと、上で乳繰りあっとる時、シバいて説教したな? 『性の事はキチンとせなアカン』って」
おっほおうっ!?
それ、言う?
今言う!?
そうだけどぉ!
今そんな事言っちゃう、先輩なんか、好きくない!
僕はすぐ横の、寒い国から来た妖精が、どす黒い炎の塊になってるのを、命の危機と共に感じていた。
うつむいてるから、母さんからは見えないかもだけど、サウジの油田並に、炎を吹き上げる横目と合ってしまって、色んなトコが縮み上がる思いさ!
「あ……いや……」
僕は、奥さんと愛人に、ファミレスで問い詰められる、煮え切らない旦那みたいなセリフを漏らす。
この部屋、暑くね?
ねばっこい汗が止まらないんだけど。
母さんは、相変わらず容赦なかった。
「ほーう、思い出せんか? その後リーファちゃんが来て、上のホールで修羅場ってたやん? 『私にチューした次の日に、親友をペロ……』」
「わーっ、わーっ!?」
「オチツイテ!」
「ほぐふっ」
折りたたんだ左で、脇腹をカチ上げられ、僕はあっけなく、フローリングの床に、ケツを突き出し這いつくばった。
膝立ちのまま、バネをきかせたショベル・フックを叩き込んだオリガが、悶絶しているぼくの首根っこに手をかける。
しんみりと、言った。
「凛ママ、ハナシの邪魔シテ、ゴメンナサイ。Go on」
「まあ、二人とも、色々言う取ったけどな…… リーファちゃんは、チューされる前、メッチャ見つめられたとか、ナディアちゃんは、色んなトコ、チューチューマーク付いとらんか心配、とか」
「Oh……」
「ぐががが!」
イダイ、イタイよママン!
って、テメェのせいだよ、クソババァ!
オーリャの指が、もう、異物レベルで首に喰い込んでる!
破れる、皮膚が裂けるぅ!
「凛……オナカの、リンノフスキーは、オーリャヒトリデ、拾い食いシナイ子に、ソダテルヨ……逝ってヨシ」
リ、リンノフスキー?
そ、そういや、ロシア残留孤児の石橋さんて人が、あっちに帰化して、イシノフスキーって名のってるのに、笑ったけど……
まさか、笑われる身になるなんて、想像もしなかったさ、リンノフスキー!
難しい顔で、下唇を突き出していた、父ちゃんがボヤいた。
「感心せんなあ……」
されても、困るけどさ!?
ズレすぎやろ?
強度を増す、ロシアン・クロー。
おぐっ!
喉が砕けるっ!
第二関節まで沈んでないか!?
死ぬ、死ぬって!
母さんが、ため息をついた。
「オリガちゃん、そのアホ、折檻すんの後や。何でまだ、日本おるんや? お母さん入院しとるから、帰るはずやったろ?」
え?
やっぱりそうだったの?
オーリャが、僕の首から、手を離した。
僕の首、穴空いてない?
「……ウン」
元気なく、呟く金髪ロシアン。
「危ないやんか、独りで」
母さんの言葉には、気遣いが感じられた。
オーリャにも、それは分かったんだろう、ポツポツと、話し出す。
「分かっテルヨ……デモ……帰ッテモイイコトナイシ……ココニイテモ、サビシイシ。ドウシテイイカ、ワカンナクナッタ……ダーリンハ、ヒモやろうダシ」
「確かになあ」
うなずく父ちゃん。
手を握ろうとして、思い留まる、僕。
エ、ソンナ言い方……泣いちゃう……
「それで、酒のアキカンと、ゲロが散らばってたんか。早めに片しとき」
オーリャは、真っ赤になって口もとを覆った。
「ゴメン……チャンとスルヨ」
お母さんが、ちょっと顎を上げて、眼鏡越しの目つきを険しくした。
「本題や。アンタらいつからそんなモン使うような真似しだしてん?」
赤くなってうつむくオーリャ。
恥ずかしいけど、僕が言わないと。
「昨日、一緒に湯船の中で……こう……」
北朝鮮風に言えば……
ミサイルのようなモノを……
母さんが、怒声を上げた。
「とっとと、言わんかい!」
「お風呂の中で、抱き合ってるうちに、漏れちゃいました!」
険しい顔で、食い気味に割り込む母さん。
「差し込んだんか?」
「まままさか!? 只、お尻にくっついてたから……お湯を伝って、多分」
口を開ける二人。
……そりゃ呆れるよね。
母さんは、事務的に訊いた。
「オリガちゃん、今まで誰かと、こういう事した経験は?」
あれ、なんだ?
想像しただけで、顔も見たことない相手に殺意が湧くぞ?
「No joking! 今でもヴァージンデス!」
母さんは、手で指示しながら言った。
「立って……回って……跳ねて……エエわ」
怪訝な顔して、座ったオーリャに、母さんがボヤいた。
「昨日カンツーしとったら、痛くて跳ねられへんはずやしな……朝のヤツ見せてみ」
オーリャが、おずおずと、ティッシュに包んでたキットを渡した。
「昨日ノ夜ハ、出テナカッタノニ、朝見タラ……」
母さんの手許を、父ちゃんが覗き込む。
二人は、一目見ると、うつむいて肩を震わせた。
苦しそうに、母さんが訊いた。
「これ……ゴミ箱に……捨ててたんか」
「ウン」
オリガの返事を聞くや、母さんは玄関に駆け出す。
「母ちゃん! ズル……いや、俺も行くがな!」
二人が玄関を飛び出していくのを、ポカンと見送る僕達。
扉が閉まった途端、二人の喚き声が聞こえてきた。
笑い声のように聞こえたけど……
僕の願望が、聞かせる幻聴だよな。
僕は、全身が重くなった。
そりゃショックだよね。
サイアクの小学生妊娠。
引っ越すレベルだ。
でも、あの校長なら、
『由々しき事です。相手は? 他校の生徒? じゃ、そっちで処分を受けてください、悪しからず』
とか言って流しそうだけど。
「……軽率だったね……えっと……イージーに考えすぎてたね」
「……ゴメンネ、凛。メイワクばっかりダネ……」
「全くだ……でも」
半泣きのオーリャの頬を撫でる。
「僕の彼女なんだから、しゃーないね?」
オーリャが、鼻の頭を赤くして、瞳を潤ませた。
「ダーリン……ヤッパ、ダイスキ。ヒモやろうデモ」
ええ……
その時。
玄関のドアが、バアアンと、劇画調に開ききった。
母さんが、叫ぶ。
「把握したで。間違いなくオメデタや!」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!