オーリャって呼んで
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
オリガ・エレノワ
日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
濡れた金髪が、落ちてきて、見開いた片目を覆う。
「ナンデ、ダマッテル? アノめぐカッテ、キイテンノ」
シャワーヘッドを、湯船に放り込むその乱暴さ。
お湯が全開だから、蛇がのたうつみたいに、バスタブの底で暴れた。
……超コエェ。
ホラー映画の1シーンみたいだ。
いや、チガウな。
ホラ、ゾンビに襲われた血塗れのヒロインが、歯をむき出して、ショットガンぶっ放すじゃん?
その寸前の狂気。重さ。
迸る思考!
震えるぞ僕!
燃え尽きる前に死!
ジョジョォォ!
……スチール写真みたいに動かない、オリガの半裸が、僕の現実逃避を許さない。
どうする?
土下座か?
いや、さっきキスするとき、マジで……
『これが初めての、事故じゃないせっぷん』
とか、チョーシくれた事思ってたんですよ?
思い込みって怖いよね。
……だが!
散々メグの誘導尋問や、カマかけに鍛えられて来た僕だ。
昨日のパンツは、今日の僕には履けないぜ。
行くぞ!
僕は必要以上に渋い声で言った。
「ああ、そのメグだ」
「ああ、ッテイウナ」
うん、芝居くさかったねゴメン。
見えてる片目が、もっと細くなる。
すっげえ、疑り深そうな目。
空いた電車で、わざわざ自分の前に座った男を見る、タイトスカートのお姉さんみたいな目だ。
やめようよ、僕が信じられないのかイ?
ところで、そろそろ暑くね、ココ?
「………。」
「……えっと」
えっとは駄目だろ、僕!?
えっと……
いや、俺の話聞いてる、俺?
えっとって言うな。
……ヤベ、話が続かない。
何か喋れよ、オリガ?
誤解は、コミュニケーション不足からだぞ?
「…………。」
待ちに徹するオリガ。
崖際でイモる、リュカも顔負けなガン待ちだ。
僕の全身に、イヤな汗が吹き出る。
オリガが、地を這うような声で呻いた。
「ナディか、リーなら、キキウデのあっぱークライデ、マダユルス……股間ニ……」
死ぬよ、フツーに?
くわっと、牙をむき出し、お岩さんの様に髪を垂らした、ロシアンは喚いた。
コワイよう!
「アンナちびっこもでるニ、サキにちゅーシテタラ、コロスッ」
ヒィィィ!
どストレートな、殺害宣言キタァ!
え、アルコール抜けたの?
超気合い入ってるジャン!?
僕は、当然真っ青になった。
横領を誤魔化そうとする、市役所職員みたいな誠実さで反論する。
「まま待てって、オリガ! 僕、メグって言ったダケだぞ? 考え過ぎだって! 今、僕はオリガだけの事を考えて……」
オリガが、泣きそうな顔になった。
困り眉、への字口。
ヨカッタ、納得してくれた!
オリガが、両手を広げて抱っこを要求。
気が変わらないうちに、急いで抱き寄せる。
オリガは、そっと身を離すと、さっきみたいに、おでこをくっつけて甘えて来た。
「……オーリャの事好キ?」
オーリャ?
オリガの愛称かな?
「……うん」
ぷうっとむくれる。
今日のオリガは幼く見える。
「シンジられないモン」
HAHAHA、かわいいなあ。
僕は余裕をみせて、オデコを撫でてあげた。
「ホントだって」
「ジャ、サイコロジーテスト……リンのマエヲ、車がハシッテルヨ……何台ミエル?」
ん、占いかな?
ヤッパ、オリガも女子だなあ。
……多いほうが、好き度が高いんだろか?
「考エチャ、ダメ。頭ニうかんだ数……ハイッ」
「四台」
オリガが、僕の顔を支えたままうつむく。
お、なんかココロのイイトコに、ヒットしたカンジ? 小町的にポイント高い?
「……フーン」
……エ?
なんか……
オリガの指が、ギリギリ食い込んでるんですケド頬と首に?
「オーリャ以外ニ、キニナル子……4人モイルンダ……」
言ってる意味に、理解が追いついたのは、2秒後!
「だっ、騙したな!?」
ノロノロと顔を上げるロシア製、お岩さん。
「……ハ?」
至近距離で、プーチン大統領より冷たく、青い瞳を覗き込む事になった、僕。
さっきまで、オリガの発育良すぎる体のせいで、エライ事になりかけてた場所が……
今は甲羅に引っ込んだみたいになっちゃった事を、告白します。
だって、これ、連続殺人犯の眼だよ!?
僕、毎回同じ目にあってない!?
「……ナンノ、テストダトオモッタ?……ッテ事ハ、『4人』デアッテルンダ?」
「え……な、何がだよ!」
シンドイ時こそ、前に!
強気、ツヨキだ!
……そんな決意は、至近距離から、青白い顔のオリガに見下ろされたら、あえなく砕け散りました。
チョット、チビったかも。
「キイテタダロ?……げろッタ方がイイヨ。正直モノトシテ死ネルゾ?」
死んじゃうんだ、僕!?
絶対ゲロするもんか!
「何だよオリガ? 何言ってるか分かんねーって!」
そうだ、そうだよ!
僕は、喋れば喋るほど、自爆するタイプだから、余計なこと言っちゃダメだ!
知らん、知らない、存じません、で押し切るんだ!
キスで急所にアッパーだったら……
『お電話ありがとうございます、カラ太郎商店でーす! えー、ベロチュー、チチモミ、尻つかみに、連ケツで…… ジェーツキー・ミールの隣《ルビャンカ刑務所》送りになりまーす!』
KGBの刑務所じゃんか!?
北朝鮮の収容所よりヤバいわ!
「フーン……ジャ、LINEデキクカライイ」
ダメヨデース、それ、ダメヨデースッ!
「だっ、ダレにダヨ!?」
ネェ、体はもういいの?
バスタブ、そろそろお湯溢れてますよ?
オリガの眼が冷たく光る。
「ナンカマズイ? ダレニもナニも、ぐる作ッテルカラ、4人ノダレカガ……」
僕は自分が、例によって致命的にやらかした事を知った。
間近で見開かれた眼。
恐怖に石化する僕。
「……マサカ……ソレハ、ナイヨネ?」
震える手を伸ばし、シャンプー台から、オリガが掴んだものを見た僕は、マジで総毛立った。
産毛を剃ったりする為の、安全カミソリ。
ちなみに、ちっとも安全じゃないでーす。
ジャンキーの様に震えながら、残念ロシアンは囁いた。
「ブロンドでブルーアイ、歌ガトクイ……オーリャとカブッテル、チビッコにマケタラ……」
カミソリの刃が、ギラリと風呂場の光に、反射した。
「モウ、ナンニモナイ…… オーリャと逝コッカ?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!