表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/1078

5番目のキス

《登場人物》




 林堂 凜




 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。






オリガ・エレノワ




日本で言う、小6、女。ロシア人。ナディアの実家のメイド。凜の五先の相手。バロチスタンで、彼女の命を救って以来、主人公の事が好き。








 梁 梨花リャン・リーファ 




 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。








 香咲 ナディア=マフディー




 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。





 ここ数日のハードモードで、大分ヘタっている、僕製スーパーコンピューター。


何回エンターキーを押しても、同じ答え。


 ……あれ、今回は違うな?

 画像が出て来たぞ?


 お! カラ太郎とカラ次郎! 久しぶりじゃん?


 GIF画像みたいに、交互に背中を流し合って仲いいな。


『カラ太郎兄ちゃん、お風呂は気持ちいいね!』


『そうだろう、弟よ! お風呂は下級生の口をふさいだり、同級生の下着を剥ぎとる場所じゃないぞ。先っぽの色を想像するとか、もっての他さ!』


「マダしてねえよ!?」


 僕はこわごわ、上半身を風呂場の床に横たえている、金髪を見る。


 きれいな髪も、吐いたもので汚れてるから、洗わない訳にはいかないなあ。


 ドライヤーや、バスタオルはきちんと用意されてる。

 そもそも、メイドだもんな、きっちりしてるよ。

 なのに、なんで荷物がダンボールに入ったままなんだろう?


 次の行動を躊躇していると、オリガが苦しそうに横を向いて、えづき始めた。


 そうだ、いらん事考えてる場合じゃない!

 

 父さんの修行でも、小学生の飲み過ぎをナントカする方法なんて無かったけど……


 そうだ、単純に飲んだモノを吐かせよう。

 そうだ、それだ!

 

 抱き起こして、背中を擦る。

 

 雪みたいに白い背中、そのきめ細かさに心臓が高鳴った。お腹に回した手が、柔らかく沈む。

 

 いや、引き締まってるのになんで?

 

 七不思議過ぎんか?


「オリガ、全部吐いちゃえ」


「……クトエタ?」


 うつむいたまま、ガラガラ声で呟く。

 ロシア語なの? 分かんない。


「僕だよ、林堂」


「………ダーリン?」


 ソウデース、とも言えず、


「大丈夫か? 話は後だ。アルコール吐いちゃえ」


 オリガは無言。

 僕は背中をさすり続ける。


「苦しい? 水持って来ようか?」


 オリガは、少しして小さく頷く。


「待ってろ」


 僕は薄い石で出来た、足拭きマットで足の裏を拭くと、冷蔵庫に向かって駆け出す。


 整然と並べられた食材。

 几帳面なオリガの性格が出てる。


 仕事が出来るって、こういう事なんだよな。

 見習わなくちゃ。


 2Lのペットボトルから、急いでコップに注ぐと、あわてて風呂場に引き返す。

 カーテンを開け、洗面所を兼ねた脱衣所に飛び込む。


 シャワーの音に混じって、ゲェゲェやってる声がした。


 洗濯機の上に、コップを置き、閉じられた折りたたみドアに手をかけた。


「開けるぞ」


「アケルナ……ミナイデ」


 僕は慌てた。


「あ……服脱いだの?」


「チガウ……クサイシ、キタナイ」


 ムッとした僕は、ドアを全開にして、裸足で入りこんだ。


 四つん這いで、排水口に顔を寄せて、えづいてる金髪の後ろ姿。


 吐いたもののイヤな臭い。

 だから何だよ?


 オリガが、か細い声で抵抗する。


「来ンナ……」


「断る。絶対離れないからな?」


 オリガが金切り声で喚く。多分ロシア語。


 僕は怯まない。


「……気が済んだ? リーファん家で僕が吐いた時、助けてくれたろ」


「ナンデ……? ナンデコンナとこ、見るんダヨ!? タクサン、キレイにシテも、シランフリだったクセに!」


 オリガは叫んだ。


 「オマエも、ワタシノコトなんか、キョーミナイジャン!? もうイイ、カエレヨ、ヤサシクスンナ!」


……『オマエも』

 

 オマエもって何だよ?


 何言ってんだコイツ?


 オリガは排水口に顔を寄せて、胃液を吐いた。もう、吐くものが無いんだ。


 僕よりも、大きな体。

 

 でも、頼りない背中。

 

 せっかくの長い金髪が、濡れた排水口に触れている。


「……モウイイヨ。カミサマ、ワタシにダケ、キビシイモン。ワタシにキョーミモッテクレルの、ママとナターシャダケ……ナノニ……」


 オリガは顔を覆って泣き出した。

 僕は、体が痺れる様な、ショックを受けていた。


 この感覚、最近どこかで……


「ロシアデモ、ミンナイジワルで……凛、ヤサシイケド……ミンナにヤサシイモン……ヘイキデ命カケテ」


 次のオリガの言葉が、ハンマーになって僕を叩きのめす。


「チガウ……凛、キット、リーファパパと同じデ、スリルが、ダイスキナンダヨ」


 僕は体が震えだすのを、止められなかった。

 

 違う!


 叫びたかった。


 俺はそんなんじゃない!


 オリガは、声を上げて泣いている。


「ロシアデモ、ボッチ、バロチスタンデモ、トモダチ、イナカッタ……ビューティー(美人)ダッテ、イワレテモ……イイオモイシタコトナイヨ」


 ……そうだ。

 

 美人だから、ロシアでは、告白を断わったヤツらにイジメられ、バロチスタンでは、ロリコンに攫われかけた。


 残念美人な、ワーキングガール。


 笑えない。

 ヒドすぎないか?


「ママ、病気デ、ニュウインシタ……ドウシヨウ」


「えっ!?」


 僕は思わず大声を上げた。

 お酒、呑んでた理由はそれか!


ナターシャ()、ボッチにナッチャウヨ……ワタシミタイニ……ナッタラドウシヨウ……」


 ペッタリ座り込んで、背中を向けて泣く姿は、僕より年下に思えた。


 頼りない。

 コイツ、こんなに無理してたんだ。


 あ。


 さっき受けた衝撃。

 最近味わった様な気がしてたショック。


 ジャス子だ。

 アイツがあんなに無理してたって、理解した瞬間。


 その時に、味わったアレだ。


 そう気づいた瞬間、僕はオリガを後ろから抱き締めた。


 言葉は自然に出た。


「ゴメンな……勝手にオマエは強いって思い込んでた」


 オリガは、僕の腕を両手で握った。


「ハナセヨ……ワタシナンカ、3番目……ヨリ下ナンダロ」


 そう声を絞り出す、ボッチの外国人。

 ジャス子の時みたいに、シャワーは、流れっぱなし。


「……僕の事好きか?」


「……キライ。だれにデモヤサシクテ、シュガーみたいに甘クテ……カワイクテ、サムライデ……」


 首に巻き付けた腕は、離してくれそうにない。


「そっか。僕も……キレイで、太陽みたいに明るくて、短気で、優しくて、頭のいいオリガなんか……こっち向けよ」


 オリガは素直に振り返り、涙を溜めた眼で僕を見上げる。


 僕は無防備な、オリガの泣き顔を、心底可愛いと思った。


 守りたい。

 独りにしたくない。


「僕みたいな、取り柄のないチビにはつり合わないって、ずっと思ってたけど?」


 オリガは、酸っぱい顔で呟いた。


「ばか……ヤー、ベズ ウマー、 アット ティビャー」


 僕は笑った。


「わかんないよ」


「ワカレヨ……意味ハ」


 顔を近づける。


 慌てて、指で唇を拭う美少女。


 そっと目を閉じるオリガ。


 僕も。



 ……生まれて初めて、自分からキスをした。



 世にも柔らかい感触が、唇を覆って……

 

 離れた。


「意味は……『アナタしかミエナイの』……イワセンナ、バカ」




 



毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ