エディの娘と、奇界遺産
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
エディ・田中
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われ、逃走中。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲う。
珠乃
エディ・田中の経歴上の娘。小6。
カン軍曹
北朝鮮から派遣された軍人。作戦に失敗、部隊は彼を除いて全滅。
梁リャン 健一ジェンイー
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。
梁 梨花リャン・リーファ
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジェーン
リーファの父の相棒。伝説の工作員。
王
リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。
米沢
芸能プロダクションの二代目。
ヤクザに顔が利く、金持ち。
元々は、リーファに痴漢したロリコン。
「はっきりさせとくぞ? 俺はテメェを許すつもりなんざ、サラサラねぇ。HAZEのお陰で、ずっと窮屈な生活をする事になったんだからな。北の命令だとしても、作ったのはテメェだ」
「それこそ自業自得ちゃうんか? 殺せば恨まれる……少なくとも、復讐の連鎖の、皮切りはそっちやんけ。オマエやったらどうすんねん?」
……全くだ。
「……そうだな。なら、テメェの娘にも窮屈な生活させてやろうか。 梁家に二言はねえ。今日は殺さねぇが……」
王が無表情に口を挟んだ。
「ボス、仲良くなれない事は、百も承知でしょう。お互いに益のある事だけに絞って、不愉快な会合を早く終わらせませんか……私がコイツを撃たないうちに」
相変わらず、間に入るのが上手い。
しかも、自身を悪者にして、だ。
だから、俺も王の望む答えを口にする。
「……オマエの言うとおりだ……が、命令違反は許さん。俺も我慢してんだからな」
「失礼しました」
エディは、ビビッた風も無く肩をすくめる。
「俺も、大きな事言えへん。娘、撃たんでくれたんやからな」
エディは、溜息をつくと、日本庭園に顔を向けた。
擦り傷、切り傷だらけの顔は、どちらかと言えば色白だ。
紳士然とした出で立ちをしていると、線が細い学者タイプに見え、ドラゴンマフィアの返り血と脳漿を浴びた、獣じみてる雰囲気は欠片もない。
2度、ジェーンとサシで渡り合い、生き延びた狂戦士。
……そんな奴でも、娘が一番大事らしい。
どうやって調べたか分からんが、私の携帯に掛かって来た電話。
『エディを仕留めたと言う情報を、裏に流してほしい。それと、娘と自分への不干渉。
見返りに、朝鮮寺群の件は、ヤク欲しさにジャンキーが、暴動を起こしたと祖国に報告し、警備カメラに写ったイージス・システムの映像は消去する。
プラス、工作員の引退、HAZEの情報と、暗号通貨で4000万円を支払う』
私は、舌打ちを必死で堪えた。
北朝鮮の工作員?
こいつ、延辺のマフィアじゃなかったのかよ?
それで殆どの事が腑に落ちた。
北朝鮮の的にされてたのか。
我ながらよく生きてたもんだ。
警備カメラの映像データはハッタリかも知れんが、朝鮮寺群への強襲がバレて、これ以上、北を刺激するのはマズい。
商売上、方々から恨みを買うのは仕方ないが、国家を敵に回すのは、極力避けたい。
さらに悪い事に、監視カメラの映像は、本当だった。
エディが、私との間に置いた、ヤツのiPhone。
粒子の荒い映像に、サーフと、私らしき人物が映っている。
王の姿は特徴的だから、解析するまでも無く分かるだろう。
「もういい」
私が吐き捨てると、エディは無表情にスマホを回収する。
なんてこった。
こんな物が出回ったら、一生日本の地を踏めない。
……が、施設の後始末は済んでいる。
我々の部隊は、予定通りサーフを谷底に落とし、武器を死体に握らせた。
その後、北朝鮮の関連組織が、証拠を隠滅したらしい。昨日、エディから電話で、その事実を知らされた。
人里離れた山奥、警察は気づいていない。
つまり、あの事件は無かったことになった。
例え、監視カメラの映像を警察に渡しても、「ナニそれ?」でおしまいだ。
中国マフィアも、エディは殺したって言えば、感謝するだろう。なにせ、海岸で6人返り討ちにされてるんだ、生捕りにして渡す約束はどうなったとも言えまい。
ヤクザは、元々、この件に入れ込んでない。大喜びで家に帰るだろう。
問題は、この映像が平壌に渡った場合、我々は窮地に追い込まれる。
俺は、ヤツの要求を飲むしかなくなった。
「……で、そんな、簡単に辞めさせてくれんのかよ、国の手先?」
エディは鼻で笑った。
どんな格式の高いホテルでも、入れそうな出で立ちと、崩れた大阪弁との違和感が激しい。
「考えてもみーな。死ぬまでヨイヨイの工作員や軍人抱えとったら、金ナンボあっても足らんやろ?
そんな終身雇用あったら、ある意味ホワイトやん。秘密は口外しないっちゅう、誓約書書かされるし、暫くは監視もあるけど、それだけや」
「朝鮮寺群の件は、どうなるんだ? オマエの落ち度になるんだろ。北の兵士も死んでるんだ」
「近々、警察の手ェ入るって情報あったんや。去年、ユーチューバーが、『謎の施設』って紹介して以来、変に有名になってな。
北にその報告はしてたけど、『粘れるだけ粘れ』って言われとってん。
7人の兵士は俺が暴動を鎮圧するために呼んで、50人相手にして、雄々しく散った言うといた。
『ジャンキーにヤク扱わせてたら、いつかこうなる。潮時や』言うて、残りのアガリ送ったら、逆に褒められたわ」
淡々と話す横顔から、俺は目を離した。
「オトン!」
興奮した声が、廊下の奥から響いた。
立ち上がって、そちらを見ると、展示室の入り口まで戻って来たらしいエディの娘が、頬を上気させて手を振っていた。
「この写真展スゴいわ! 最初コラかと思ってたら、全部本物の建物やねんて!」
私は思わず、頬を緩めた。
奇界遺産展。
世界の奇妙な建物や、景色を集めた写真展。
この世の物とは思えない、不思議、不気味な風景。
いつか、ドバイでコンシェルジュのソフィアが言っていた、写真展というのに興味が湧き、調べてみたのだ。
エディは、顔をしかめて、静かにしろのジェスチャーだが、子供らしいストレートな感情表現に、受付や、他の客は微笑んでいる。
「早よ、来いよ! 待ってるからな……ボーンのオッサン、戻るで!」
監視の為に付いているボーンは、無表情のまま肩を竦め、後を追う。
だが、どこか楽しそうだ。
エディが、手を振りながら訊いた。
「なあ、何でこの場所選んでん?」
私は、暫くして答えた。
「娘と来たい場所だったんだが、付き合いが悪くてな」
私は、ここ数日、見た事も無いくらいふさぎ込んでる娘を思い出し、心が重くなった。
「……せめて、誰かの喜ぶ顔が見たかった。見たろ、あの顔? 大当たりだ。ガキはああでなくちゃな」
振っていたエディの手が段々遅くなり……
力なく下がった。
椅子に腰掛け直し、俯いて床を見つめるその顔は……
初めて見る苦悩に歪んでいた。
私は黙って口を開くのを待つ。
こっちから声をかける義理はねえ。
やがて、エディが疲れきった声で言った。
「……HAZEの事は話そう。大人の話は……せんとアカンか?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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