第一章 小学生、フカしてなんぼ ~むらびとの呪い~
「ナハハ、コイツ『むらびと』だって!勝つ気ねーだろ?」
横に立ってる、ノッポのインドネシア人が、僕の頭をはたきながら笑った。
やめろよ、僕はヘラヘラ笑って言った。
放課後、平日の公園。
ベンチの上に乗せたSwitchの狭い画面の前に、僕ら三人の六年生が、座り込んでいた。
プロコン握ったもう一人のインドネシア人が言った。
「せめて、強キャラ使えよ。どうせ俺が勝つけどな」
のっぽが呆れたように言う。
「ジェイクに負けた時の言い訳できるもんな。学校一ってウソじゃね?」
ぼくは、のっぽから借りたプロコンのスティックを、くるくる回して、具合を確かめる。
異常はない。
ここは、大阪市の・・・・・・ まあ、あんまりお土地柄の良くない、ところ。
僕の通う小学校は、昔から、外国人が多い。
今日の放課後、
「ニホンジン、お前スマブラ強いらしいな?俺とやろうぜ」
って、勝負を挑まれた。
いつもなら断るけど、スマブラ小学生・団体戦のメンバーを、探してた僕はOKした。
もしかしたら、っていうかすかな期待があったんだ。
ジェイクが歌うように言った。
「まあ、ちょっとだけ、本気出してやるよ、ニホンジン」
僕は、何も言わなかった。
30秒後にこいつらが、どんな顔してるか、楽しみで楽しみで、笑いをこらえるのが必死だったからだ。
「3、2、1、GO!」
……『むらびと』は呪いだ。
のっぽが言うとおり、偏った弱キャラなのに、
何故か、プロにすら、刺さる時がある。
開始と同時に僕は植木鉢を投げ、台の下に降りたばかりのジェイクが操るジョーカーにジャストミートさせる。
慌てて飛び上がったところにパチンコを合わせ、空前運びと言う連続パチンコ当てで、画面の外にはじき出した。
これで1キル。
慌てて、攻め込んできたところをヒョイとかわし、ボクシンググローブで殴り続ける。
ジェイクが抜け出そうと、プロコンガチガチやってるけど、叶った瞬間、上スマ花火が、ジョーカーを焼く。
相手が放った苦し紛れの飛び道具を、特殊能力『しまう』
で自分の物にし、下から殴って、また、パチンコで運ぶ。
『ペルソナ!』
セリフとともに、相手のジョーカーに羽根が生え、信じられない距離を、画面下ギリギリから帰ってくるけど……
残念。
ボーリング玉を構えたむらびとに飛び込んで来る形になって、あえなくバースト。
僕のダメージはゼロのままだ。
さて……
スマブラ茹でさすか?