世界一の娘
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
エディ・田中
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われ、逃走中。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲う。
珠乃
エディ・田中の経歴上の娘。小6。
カン軍曹
北朝鮮から派遣された軍人。作戦に失敗、部隊は彼を除いて全滅。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジェーン
リーファの父の相棒。伝説の工作員。
王
リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。
米沢
芸能プロダクションの二代目。
ヤクザに顔が利く、金持ち。
元々は、リーファに痴漢したロリコン。
海面の下は、一寸先も見えん暗闇。
水深も分からん。
足は届かへん。
先を進む、珠乃の起こす水流を頼りに、後を追う。
顔やらどこやらの擦り傷に、塩水の染みること。
けど、脇腹削られた銃創が痛すぎて、それどこやない。
んでもって、顔出したら多分銃弾のエジキや。
息の続く限り、水中、進みたいとこやけど……
服着て泳ぐんって、めっちゃしんどいんやで?
ホンマは靴も脱ぎたいけど、珠乃がこの先どう言う計画立ててんのか、全く分からんから、下手な事でけん。
靴履いてないだけで詰む状況、いっぱいあるし。
救いは、梁の『ガキに当てるな』言う命令のお陰か、当てずっぽうに乱射して来んトコや。
……トラックの荷台から、珠乃に頼んだんは、逃げれる様にしとけ言う事と、祖国と別ルートの救援や。
俺が昔から、つこうてる"逃し屋"への連絡。
ソイツ、今持ってる、トバシの携帯から掛けても出てくれへんから、珠乃に頼んだんやけど……
大阪おるはずの娘が現れたときは、幽霊見てんのかってオモタ。
カンも知り合いやから、仰天してたもんな。
そもそも、なんでアイツ近くにおったんや?
……息苦しい。
段々、寒くなって来た。
ドラゴンマフィアに、散弾ブチ込まれた腹、梁達に削られた横腹。
海水浸かって、大分血ィ流れたやろな。
黒いブイってどこや? 全く見えへん。
その時、鼻面を黒い物体が、続いて白いモンが通り過ぎて浮上して行く。
白いのは珠乃の裸や。
黒いモンは?
俺も慌てて後を追う。
背後のカン軍曹もや。
水面に出た途端、頭ブチ抜かれるかも知れん。
流れ弾が娘に当たんのはカンベンや。
俺は、珠乃から少し離れて海面を突き破る。
しょっぱい海水に、のどを焼かれながら、空気を貪る。
地球温暖化よりも気になる、海岸の梁達を振り返った。
心臓が、止まったオモタ。
波打ち際、こっから100mもない距離で、梁がブーツを濡らしながら、こっちに突撃銃を向けている。
他の3人の隊員もや。
ソイツらから伸びてる、赤のレーザーポインターが不吉に海面を這う。
動けん。文字通り石になる。
マリンスクーターのハンドルを握る娘が、早口で囁く。
「コンデ、潜れ……」
「珠乃、動くな」
俺は静かに言った。
ここまでやな。
赤いドットが、珠乃の顔を横切る。
俺は梁達を刺激しないように、ゆっくり珠乃の前に移動した。
眼鏡はとっくにない。
後ろに流した髪、形のいい額。
自慢の娘が眦を吊り上げた。
「何しとんじゃ、ボケ……」
「黙れ」
俺の言葉に、珠乃は息を呑む。
「……カン軍曹、覚悟はええか?」
短髪の兵士は、岸を見つめたまま、静かに俺の斜め前に並んだ。
珠乃を庇う位置だ。
「悪い死に方じゃないですね。護るのが、こんなクソ生意気なガキじゃ無かったら、もっと良かったんですが」
「何で諦めんねんッ⁉ オレがナンの為に……」
「エエか、ちゃんと勉強して、マトモな言葉遣いして、マトモな人生送れ。復讐なんか忘れて、もっとオマエとおれば良かった。後悔しとる」
「役立たずな俺を、救けてくれてアリガトな。ゴダイ・タマノ……万歳」
おどけて、小さくバンザイする、カン。
銃声と共に、海面が泡立つ。
水柱が近づいてくる。
突然頭が沈められた。
後ろから、珠乃が抱きついてきて、カンと俺の頭を抱え込む。
アホ!
オマエに当たったら……
「また、ボッチに戻るんなら、一緒に死ぬ!」
珠乃の絶叫が夜空を震わす。
「もう、スリもパンツ売られんのも、イヤなんじゃあ!」
俺達は慌てて、逆に、珠乃を抱え込む。
「逃げろ、アイツラ、丸腰のガキは撃たんから!」
「いやじゃ! オトン死んだら、また、ひとりやんけ!」
銃声、カンの悲鳴。
血塗れになった左耳を押さえてる。
「カン!?」
少女そのものの悲鳴を上げる、娘。
再び銃声、俺の右肩が爆ぜ、半回転して、海中に沈む。
珠乃の絶叫。
「もう、やめて! お願いやからッ」
このまま死のう思たのに。
半分水面に沈みながら見た。
俺の命より大事な娘が、手ェ広げてオッサン二人を庇うとか……
アカンやろ?
「充分殺したやろ!? ウチの叔母さんも、オトンの部下も友達も! 山でも、30人以上殺して……もう、赦してよ!」
銃声。珠乃のすぐ側を横切った弾丸は、背後のマリンスクーターに食い込んだ。
俺は半分溺れながら、珠乃に抱きつき、背中に庇う。
梁よ。
復讐なんかせんかったら良かったわ。
珠乃と暮らした日々が、俺をおかしくしていったんや。
……それは全然悪いモンやなくて。
只、妹達を忘れんのが怖くて。
つまり。
娘の命助けてくれるんやったら、何でもするから。
「離せ、死んだらイヤや!」
俺の腕の中で暴れる、珠乃。
世界一の娘。
「オトン…… おどうざんっ!」
暗い海の中でも、珠乃の体は白く輝いてる。
ホンマは、虫も殺せん優しい娘や。
俺らみたいなラウンダーとは棲む世界がちゃう。
「ええて。俺は殺しすぎた……言い訳させろ。コンサルタントは、家出した娘ら監禁してた変態で、中国マフィアは、用済んだら、俺ら消すつもりやったから……倒した……」
「何でもエエ! カンも起きろよ! 一緒に551買いに行くんやろ!?」
右半分だけ、顔を出したカンが、ボンヤリ言った。
「……逃げて……タマノ……頼むよ……」
銃声。
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!