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 死神が求めるのは、はみ出し者の魂 〜The death need rounders〜

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


エディ・田中


犯罪組織、HAZEの一員。


ヤクザ、中国マフィア、警察に追われ、逃走中。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲う。




リャン 健一ジェンイー

日本名、橘 健一。リーファの父。

台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。



 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。


 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。


ジェーン

リーファの父の相棒。伝説の工作員。


王 

リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。


米沢

芸能プロダクションの二代目。

ヤクザに顔が利く、金持ち。

元々は、リーファに痴漢したロリコン。





 



  


 

 ガタガタ揺れるトラックの荷台。

 普段、工業部品でも運んでんのか、古い油の臭いがする。

 

 咥えたスマホの照らす光で、腹の手当を終えた。


 オッサンに、運転任せたけど、失血死されたらアウトや。


 助手席で見張るなり、なんか対策せにゃいかんねんけど、頭が回らん。

 

 いや、俺、確かにエリート兵士やったけど、過去形やで?


 この五年間、祖国(くに)の用意したカタギの職場で、どれだけのほほんと生きてきたか、語ったろか?


 ガキもおるし、走ったんなんか、運動会の保護者リレー以来や。


 だって、潜入工作員(スリーパー)やもん。

 フツーの事しかしたらあかんねん。


 定時連絡かて時々やし、正直俺のこと、祖国のヤツラ忘れてるやろ? って首ひねるくらいやる事無かった。


 俺は、荷台後部の幌に持たれて、耳を澄ます。

 全然、他の車の音がせん。


 これ、中国マフィアかヤクザが、通行止めしとるやろ。ますますマズイやんけ。

 

 ……話戻すけど、そりゃ、『ヒト()の嫌がる事をすすんでやります!』がモットーやし?


 色々根回しはしたけど、直接はなんもしてへん。ワクワクして待ってただけや。


仲間と妹合わせて、こっちは8人殺られてんねん。

 

 梁のヤツはこの手で殺りたいけど、俺はあいつも含めて、同じ数殺れたら満足や。


 そもそも、梁の部隊の、誰が誰を殺したかが分からん。殺った奴ら、部隊辞めとるかもしれんし、死んだかも知れん。


 だから。

 ……恨みが消えるのが怖い。


 帆布製の屋根を支えるパイプが、けたたましいを立ててひしゃげたのは、その時やった。

 屋根を突き破って、重いものが降ってくる。


 タクティカルベストに挿した、鉄箸を抜き打ちに投げたのは、無意識や。


 忍者姿のペコちゃんが翳した腕に、箸が深々と突き刺さったのは、僥倖やった。


 ハンドルを切り損ねた車体が、対向車線を横切って、山側に突っ込む。


 ちょうど、お互い喉を狙って、鉄箸をぶん投げたところやったから、受け身も取れずに宙を舞う。


 荷台後部にもたれてた俺は、車外に投げ出され、後頭部を庇うので精一杯やった。


 バックパックが、クッションになってくれて、ほぼノーダメージで転がり起きたけど……


 迎えてくれたのは、複数の銃口。

 国籍は様々、ラフな服装で拳銃を向けている。


 梁トコの兵士や。

 ビー玉の様な無機質な眼を見て、俺は素直にハンズアップした。


 手荒く引き倒され、後ろ手で、拘束されてる俺に影が差す。


 ソイツは梁の声で言った。


「よお、元気に跳ね回ってくれたじゃねえか、ニセ・コンサルタント……楽に死ねると思うなよ?」



 

 ブーツで腹を抉られ、吹っ飛ぶ。

 横向きに倒れ、砂浜へ胃液を撒き散らす俺。梁は醒めた声でボヤいた。


「延辺のミッションの生き残りかよ……全員殺ったつもりだったんだがな」


 生温かい風が、暗い海面を吹き抜け、場違いに優しい潮騒を運んでくる。

 

 「同志……私を騙したんですか」


 俺も大概ボコボコやけど、それ以上に男前にされた、カン軍曹が息を切らしながら、横で朝鮮語を絞り出す。俺もコイツも、後ろ手に結束帯で縛られてるから、絵面間抜けやろな。


 えー、生きてたんや。気まずー……


 いワケあるかい。ホンマ使えんのう。


「答えろ、裏切者ッ……がはッ」


「日本語か、英語で喋れ。次ワカンネェ会話したら、殺すぞ?」


 カン軍曹の頭を踏んづけながら、梁が宣言する。


俺達が、まだ足の腱を斬られたりしてないのは、歩かせるつもりがあるからやろうけど……


 周りを囲んだ三人の部下が、距離をとって見張っとる。用心深いこっちゃ。

 お陰で、反撃は無理や。


 流石のペコちゃんも、トラック事故でどっかいわしたんか、ここにはおらんけど……


 デカイハゲがおる。

 

 コンサルタントのフリしてる時、アパートまで梁と一緒に押しかけてきた、王って奴や。

 

 あの時、コイツがおらんかったら、梁を殺れてんけどなあ。

 

 そしたら、俺の体ボールにして、サッカーされる事もなかったろうに。


「このケッセキ(犬野郎)が……」


 顔を踏まれながら、呪詛を口にするカン軍曹。

 梁じゃなく俺に。


 柄にもなくキレちゃった。


「クソはテメーだよ、ボケ。あれだけの人数使って、俺も施設も守れネェで、なんで生きとんねん?」


 息を止めるカン。


「その上、コイツら一人でも殺ったんかよ、なあ? もう一回聞くで? どのツラ下げて生きてんの、useless(役立たず) 」


 無表情な梁のブーツの下で、カンの呼吸が浅くなる。


「せめて、あそこで死んどけや? そしたら、まだ本国に、いい報告が出来たんや。この状況伝わったら、クニの家族、別荘(収容所)行きやで」


 ガタガタ震え出したカンに、蹴りをくれた梁が嗤った。


「使えねぇ、部下だな。同情するぜ」


「使える部下は、アンタ達が殺してくれたしな……妹も」


 梁の嗤いが深くなった。


「気にすんな。俺の妹じゃねえし」


 頭突きを叩き込むため、立ち上がろうとする俺を、楽しそうに蹴り倒して囁いた。


「The death need rounders……違うか?」


 俺は、口の中の、鉄の味を噛み締めた。


 死神が 求めるのは はみ出し者の魂。


 ……その通りや。

 完全無欠にその通りや。


 イージス・システムの親玉は本性を剥き出しにして咆えた。


「そんなツマンネェ逆怨みで、粘着してたのかよ!? いいか、あのキタネェ施設には、ヤクで稼いでるゴミしかいなかった! 北京(警察)に捕まりゃ、どのみち死刑だ。もし、今の話がマジならアニキは何してたんだよ!」


 俺は吐き気を催した。

 ……なんで妹を殺したヤツに、説教されてんねん?


「その通りや。で、オマエなら、仕方ないよね、自業自得だしって言うんか? SG攫われた時にそれ言うてくれとったら、こんな面倒無かったんやけど?」


 梁の眼が吊り上がった。

 俺は舌を出す。


 この顔が見たかった。

 いい気分で死ねそうや。


 懐から抜いた自動拳銃が、俺を見つめる。


「もういい。死ね。大人(ターレン)の事は……」


「ボス!」


 部下の一人が、30mほど離れた海を指した。


 波打ち際より向こう、月明かりに照らされた海面に浮かぶ顔。


 それは……


 部下二人が、銃を向けて叫ぶ。


「止まれ!」


 それは女。

 眼鏡をかけた女。


 滑る様に首だけ出して、近づいてくる。


 梁が困惑の色を浮かべながらも、命令を出した。


「……不審な動きをするまで、撃つな」


 油断無く、銃を向ける先で、ソイツは立ちあがる。


 月明かりを背に、濡れたワンピースを体に張り付けている。

 整った肢体。

 アップに纏めていた髪を解く、ソイツの眼鏡が輝いた。


 王が、呆然と呟く。


「……子供?」


 


 



毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


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