whack-a-mole 〈モグラ叩き〉
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
エディ・田中
犯罪組織、HAZEの一員。
ヤクザ、中国マフィア、警察に追われ、逃走中。梁家を付け狙い、その関連で、主人公たちと関連する人物を無差別に襲う。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジェーン
リーファの父の相棒。伝説の工作員。
王
リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。
米沢
芸能プロダクションの二代目。
ヤクザに顔が利く、金持ち。
元々は、リーファに痴漢したロリコン。
「そのまま進んどいて。スピードは落とすなよ。じゃあな」
通話を切る。
カーゴパンツとタクティカルベストに、肘と膝のプロテクター。途中下車は織り込み済みや。
運転してるオッサンに、用意させといた荷物は、背中のバックパックに詰まってる。
濡れたバッシュが気持ち悪いとか言うてられへん。それどころちゃうしな。
何より不安なんは、火力が弱すぎるわ。
カタギのトラックに、重火器積まれへんのは分かるけど、黒星 ――中国製トカレフ―― 2丁に予備弾倉1つはないでー。
なんで2丁やねん?
いや、それやったら、スコーピオンとか短機関銃1丁で、ええって。
救いは、2丁とも銀ダラ……内部の摩耗を防ぐため、銀めっきが施されとる。
粗悪品ばっかの黒星の中では、まだマシなところか。
まあ、多勢に無勢やし、どのみち逃げの一手やけど、竹槍一本でサバンナに放り出された気分や。カバ出たら終わりやん。
え、知らんの?
カバ、猛獣の中で一番ヤバいんやで?
走り速い、泳ぎ速い、鷹村並に短気やねんで?
戦闘力メッチャ高いしな、っと。
時速50kmで走る荷台から、横向きに飛び降りた。捻挫したら、一巻の終わりやけど、スピード落としたら怪しまれるからしゃーない。
靴から着地、アスファルトの上を、横向きに2回転がって立ち上がると、素早く身を低くする。完璧。トラックの陰になるから、50m以上離れたヤクザからは……
「飛び降りたぞ!」
なんでやねん!?
俺は泡食って、腰の高さ程の護岸壁に駆け寄る。身ィ隠すとこ他ないんや!
怒号が夜空に響き渡り、トラックが停止する。
銃弾が飛んでくる前に、フナムシが慌てて散った、護岸壁を飛び越えた。
飛び降りた場所は砂浜。
道路より低くなっていて、177cmの俺より、頭一つ高い。
飛び降り際に手に入れた情報に、胃が灼けた。
レクサスと、レジェンド。人数は7、8人。
んで、問題は、道路に伏せてたヤツがおったんや、グロテスクな眼鏡掛けて。
ヤクザは暗視スコープ付けて、道路と車体の隙間覗いてたりせんわ。
心臓が、クソうるさい音を立てんの無視して、懐に吊ったホルスターから、黒星2丁を抜いて駆ける。
方針変更。逃げんの無理。
護岸壁の向こう、飛び降りてきた道路側で飛び交う、中国語に向かって走る。
自殺行為に見えるけど、距離とっても勝ち目無い。この、バッタもんトカレフ、照準調整どころか、弾出るかもわからんねや。
中国マフィアは、ヤクザみたいに優しゅうないから、最初から殺しに来よる。
俺は予備のマガジンを咥えて、一瞬でもマガジンチェンジの時間を稼ごうとした。
進行方向、5m先、上から覗き込んで来た顔に向け、躊躇わず引き金を引く。
「죽어!」
右手の黒星が吼え、不健康そうなドレッドヘアの顔に穴が空く。
防弾チョッキを貫通する破壊力だけは、マジで頼もしい。ソイツが視界から消え、騒ぎがデカくなった。
俺は全身を耳にした。
両手を掲げ、壁に沿って走りながら、忙しく左右に目を配る。
進行方向にもう一人。顔を出すと同時に、ソイツの散弾銃が轟音を立てた。
3秒前まで俺がいた空間に、死の雨が降り注ぐ。
そう、俺の姿を確認してから撃つ、では逆に黒星の的になる。
だから、ヤツラは当てずっぽうにならざるを得ない。
左手の銀ダラが火を吹き、ソイツの頭をふっとばす。とっとけ、残念賞や。
これで2人。
今度は、2人同時に顔を出し、ハンドガンをぶっ放して来た。
ええ度胸や、軍人崩れか?
1発が足を掠めた。
2発目は撃たすか!
広げた両手から放たれた、7.62ミリ弾が、それぞれの方向の敵を屠る。
4人。
マガジンを噛み締めた口から、涎が飛ぶ。
眼は血走ってるやろ。
今みたいに両方向から襲われたら、ヤバい。
俺は死ぬ気で駆けた。
ヤツらを一方向にまとめるために。
命がけの||whack-a-mole……モグラ叩きは終わらない。
まだ、死なん、死んでたまるかい!
静かな波音をかき消す、轟音、轟音、悲鳴。
先に弾切れした左手の銃を捨てた。
平日深夜、人気の無い海岸線で、"誰の頭が吹き飛ぶか"ゲームは続く。
気がつくと、腹から血を流していた。
アドレナリンがガンガンに分泌してるから、痛みは感じん。
散弾の小玉がいくつか当たっただけや、動ける。
不運にも、俺の真上に頭を出した、6人目の耳の穴に至近距離から、鉛弾を叩き込んだ。
血と脳漿を、モロに被った俺はほくそ笑む。
あと一人。やればデキるもんや。
俺は、目星を付けていたドラム缶に飛び乗り、声の方向に顔と銃口を突き出す。
最後の1人、黒いシャツのノッポが、俺を運んで来た、おっさんを盾にして、明後日の方向を向いてた。距離は約5m弱。
俺は、笑いそうになった。
おっさんまだ生きてたんや。
俺は黒星を向けると、オッサンより頭1つ高いオールバックの頭部じゃなく、的の広い胴に向かって無造作に引き金を絞った。
外れたら嫌やん?
轟音が爆ぜた瞬間、黒シャツは、内臓を撒き散らして吹っ飛んだ。
オッサンの横腹も派手に削ってもうたのは、残念や。
血は派手に出とるけど、大丈夫やろ……多分。
あー、しんどかった。
地面をのたうち回って、泣き叫ぶオッサンにゆっくり近づくと、俺は荒い息で告げた。
「ほな、行こか。俺、荷台おるから、運転頼むわ。運転でけへんかったら、トドメ刺すけど……どないする?」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!