スリー・ミニッツ・アウト
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 健一
日本名、橘 健一。リーファの父。
台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
ジェーン
リーファの父の相棒。伝説の工作員。
王
リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。
米沢
芸能プロダクションの二代目。
ヤクザに顔が利く、金持ち。
元々は、リーファに痴漢したロリコン。
「突っ込むぞ。次のドローンが来たら終わりだからな」
そう言いながらも、燃える四駆に照らされた大型のバラック ――小学校の体育館の半分くらいのサイズ―― の側には敵が転がっているだけで、反撃の気配はない。
サーフが動き出した。
銃弾と、釘やナットで穴だらけだが、動きは滑らかだ。
空は雲に覆われ、バラックと散らばる死体を、松明と化した四駆が、赤く不気味に照らす。
車外で、上半身に浴びたガラスの破片を払いたいのを我慢し、サンルーフからカラシニコフを向け続ける。
低速で進んでいるにも関わらず、襟から入って来るガラス粉で、イライラはピークに達していた。
動くものがあれば、何でも撃ちたい気分だし、エディを捕らえたら、先ず膝を撃ち抜いてやる事に決めた。
やりたい放題やってくれやがって。
……そういや、あのハゲにも追い込み掛けンの、忘れんようにしなくちゃな。ヤツには聞きたい事が山程ある。
本部、そして爆破された橋の前で立ち往生している、チャーリー・デルタ班への報告を終えた、王の声が、屋根を通して聞こえた。
「増援の到着、まだ先になりそうですね」
燃える四駆の10m程前でストップ。油断なく、視線を走らせる。
眼前にそびえる巨大なバラック。
スレートの所々破れた穴から、案外新しいアスファルトの壁が覗いている。
入り口以外の壁際は、伸び放題の雑草で縁取られ、四駆の炎が引火してパチパチと音を立てている。
地面にはピクリとも動かない敵兵が2人転がっているだけだ。
「……1人足りねぇな。マズルフラッシュは2つだった」
「後1人、ドローンの操縦士が……」
サンルーフの下、振り返ったらしい王の声が
途切れた。
「後ろ!」
叫び声に反応し、振り返ろうとした刹那、側頭部に衝撃が走った。
視界が揺れ、一瞬意識が遠のく。
車内で炸裂した銃声に、意識を引き戻された。王のコルト・ガバメントだ。
「ボス!」
いつの間にか、後部座席の後ろ、カーゴスペースに座り込んでいた。
側頭部を鈍い痛みが突き上げて来る。
眼前を横切った塊が、シートの背中で跳ね、重い音を立てて床に転がった。
拳大の石だ。
私はあわてて、ガラスの破片と、砂の散らばったカーゴスペースの床に伏せた。
王のデカイ手に握られたガバから発射される、45ACP弾が頭上を走り抜ける。
ミニミ軽機関銃を構える暇も無い、不意打ちだったのか?
「来ます、私の3時方向!」
俺は、仰向けに転がると、ショルダー・ホルスターから、CZ75自動拳銃を抜いた。
左側のリアウインドウに陰が差した瞬間、引き金を引く。
般若の面、ど真ん中を撃ち抜かれたタンゴが、血飛沫を撒き散らして消えた。
「チェンジ・マグ!」
王の叫びと共に、ばね仕掛けの様に上体を起こす。ガラスが無くなり、風通しの良くなったハッチ・バックに銃口を向ける。
心臓が凍りついた。
白装束が、道を埋め尽くしていた。
能面、鬼の面、ひょっとこの面。
王が撃ち殺した死体達だけ、裸足だ。だから足音がしなかったのか。
いずれも、作務衣のような白装束を着た人波が押し寄せてくるのだ。
その数……
分からねえ。
情けないことに、非現実的過ぎて、頭が痺れている。
ぼんやりした頭の何処かで、何故か納得していた。
だよな。どこに潜んでたのか知らねぇが、アジトなら、これくらいの人数はいるよな?
「ボス、しっかりして下さい!」
王の叱咤が、俺の眼を覚ましてくれた。
2mと離れていない、能面の胸板に速射出来たのは、僅かに残ったプライドのお陰だった。
部下より先に折れてどうすんだよ?
ブォーン ブォーン
不気味なサイレンが、どこかのスピーカーから響き渡る。
心胆を寒からしめる、不吉な低音。
歪んだ声が、陰鬱な森に木霊する。
『神の、神の子らよ。武器を取り、疾く不信心者を浄化せよ。儀式を呪い、御神酒を奪う略奪者を罰すのだ』
ふざけんな? 死ぬのはテメェらだ。
「王、サーフで暴れろ! 距離作ってから射的の的だ!」
「応!」
間髪入れず、サーフがホイルスピン、バックで飛び出し、最前列の二人にリヤバンパーを叩き込む。
「死ねや!」
俺は絶叫すると、手の届きそうな距離にいるヤツらに至近距離から次々と、弾丸を叩き込んだ。
血飛沫と脳漿を浴びながら、15発の9ミリパラベラム弾を空になるまで撃ちまくる。
原始的な武器がサーフを乱打するが、その華奢なフレームで健気に持ち主を護る。
最高だな、TOYOTA?
サーフは、クジラが海面から跳ねるように、亡者の海から脱出する。
たたらを踏んで崩れる連中を残し、今度は前方へダッシュ、ガタガタになった車体を軋ませて、美しくスピンターンを決めた。
それでも押し寄せてくる、大群。
まだ、30人はいる。
絶望的な数。
ここが最後の戦場になるか?
平坦な声で繰り返される、不気味な放送が、星のない空にこもる。
娘の顔を思い浮かべる。
まだ死ねねぇ。
災いの元を断つまでは。
王がボヤく。
「派手な葬式になりそうですね」
「ヤツらのな……弾が尽きるまで撃て」
「アイサー」
無線が聞こえたのはその時だ。
無限の力が湧いてくる、報告が。
「こちらチャーリー、ミスター・ジェーンが、3分で現着!」
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!