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カンガルー・バー

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


リャン 健一ジェンイー

日本名、橘 健一。リーファの父。

台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。

無線での、コールネームはアシュラー。



 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。


 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。


ジェーン

リーファの父の相棒。伝説の工作員。


王(コールネーム:ガネーシャ)

リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。


米沢

芸能プロダクションの二代目。

ヤクザに顔が利く、金持ち。

元々は、リーファに痴漢したロリコン。





 



  


 徒手格闘も含め、戦いは考えていたら間に合わない。


 能で使われる、無表情な女の面が、斧を振り下ろす直前、無意識に持ち上げた、カラシニコフが吼えたのは、経験と訓練の賜物だ。


 死人でも飛び起きそうな銃声と共に、至近距離で胸に三点バーストを喰らったソイツが、薬莢と共に弾け飛ぶ。


 相手が血飛沫をあげて吹っ飛ぶのを見て、我にかえった。


 血が出るって事は、殺せる。

 見ろよ、革靴履いてんじゃねぇか?


「王!」


 私が叫ぶより早く、サーフのエンジンが咆哮し、弾かれたようにバックを開始する。


 流石に白装束の連中も、車には追い付けない。


 衛星電話から漏れる、不気味なハゲの祈祷にキレた。


「ハゲェッ! テメェ死んだからな!?」


 通話の切れた電話を無視し、銃痕の抜けたフロントガラス越しに見える、生きた亡者の群れを睨んだ。


 ワラワラと駆けてくる連中が、着物にスニーカーなのを見て、恐怖が薄れた。

 なんだ、只の仮装大会じゃねぇか。

 

 見る限り、バットや包丁を握っているが、銃は無さそうだ。


 あんなモンで、銃に刃向かうとか、立派に狂ってんな?


 本部からの無線に、やっとまともに返事が出来る。


「アシュラーより、ギーター(本部)へ。聞こえてたな? 白装束の奴等と交戦中。麻薬中毒の線が濃い。送れ」


 オペレーターが、見事に感情を殺した声で言った。


『こちらギーター。白装束は、儀式の際の衣裳と思われる。麻薬はその際、使われていると推測されます。こちらでも、噂程度の情報しかありません。確実なのは、昔からのカルト教団が、麻薬組織に結びついてる、と言う事だけです。犯罪者の駆け込み寺になっており、何度か警察の捜査が入った記録があります』


「って事は、殺りたい放題って事ですね?」


 スキンヘッドの偉丈夫が、助手席のミニミ軽機関銃を、左手一本で持ち上げた。

 パラパラと、ガラスの破片が降る。


 珍しく、怒っている。

 分かる。


 さっき悲鳴を上げた、自分が許せないんだろう。


 フロントガラス越しに引き金を引こうとするのを止めた。


「よせ。ガラスが無くなったら、虫が入りたい放題だぞ。口に入ったら嫌だろうが」


 嫌な記憶が勝ったのか、渋々銃を下ろす。

 クソもいいとこな状況だが、山中だから涼しいのが救いだ。


「ライトをつけろ」


 暗視ゴーグルを二人とも外し、バックカメラを頼りに疾走したまま、ヘッドライトを点灯する。


 不満そうな、王。

 恥をかかされた分、暴れたくて仕方ないのだ。

 部隊随一の人格者だが……


 ホントの人格者は、こんな稼業やらねえしな。


 まあ、大事な部下の機嫌をとるのも、ボスの役目だ。


「なあ、王。カンガルーバーって知ってるか?」


 2秒して、急ブレーキが掛かる。


「ヤッちゃっていいんスね?」


 ハスマイラの口真似に、俺は笑って言った。


「ギヤ入れながら何言ってんだ……殺れ」


(シャア)


 王が吼え、直列4気筒のエンジンも咆えた。


 急発進したサーフと亡者の距離が、一気に縮まる。


 全く足を止める気がない、白装束共に俺は首を振る。


「狂ってやがる」


 衝撃とともに、先頭の能面が吹っ飛んだ。

 転んだ後続の連中を、無造作に踏みつぶすサーフ。


 人体を乗り越える不気味な感覚と、断末魔の悲鳴。


 横に逃げた奴らにバットで天井を殴られたが、速度を緩めず走り抜けた。


 人間を踏み越え、サスペンションが踊る中、王は加速し、10m程先でスピンターンを敢行する。


 俺らの稼業、このテクニックは必須だし、王は運転が得意だ。


 四車線程のスペースで、砂煙を上げながら、サーフが獲物を振り返る。


 流石にまごついてる、白装束共。


 私はコンビニで止めてくれ、みたいな口調で言った。


「逃がすと厄介だ。全員殺れ」


「アイサー」


 猛然と襲いかかるサーフ。

 回り込み、反撃を試みる敵を、王はゲラゲラ笑いながら前方のグリルガード、別名・カンガルー・バーで、跳ね飛ばし続ける。


 バラックに、逃げ込もうとする奴等は、俺がカラシニコフの的にした。


 虐殺はモノの数分でケリがついた。


砂地に引きずられた血の跡と、壊れた人形の様な死体が、散らばっている。


 辺りは場違いな虫の声と川のせせらぎの平和な音で満ちているのに。


 だが、一つだけ、そうでないものが。


 サーフのアイドリング音が、猛獣の唸り声にしか聞こえなくなった。


 俺も王も、こんな殺し方は初めてだが、凶器としての、車の恐ろしさを思い知らされた気分だ。


 カンガルー・バーはオーストラリアを走る車が、カンガルーに衝突する事故が多いため、発明されたらしいが、これだけ当てても、傷1つついてないだろう。


「ボス、さっき無線で言ってた、『コクシ』ってなんですかね?」


「黒い祀。小説家が作った造語だ。要するに邪教の事だよ。隠れキリシタンみたいなもんだ」


 その時インカムから、増援の到着が告げられた。


『こちらチャーリー。現在、橋を……』


 我々がやって来た方角から、鈍い爆発音が聞こえた。


 弾かれたようにその方角を見る、俺と、王。


 星明りに、細くたなびく煙が見えた。


「こちらアシュラー。チャーリー、無事か?」


『……チャーリーより、アシュラーへ。損傷はゼロ。橋が爆破された。繰り返す、橋が爆破された』


 私と王は顔を見合わせた。

 事の深刻さが、胃を締め上げる。


 これで、増援と退却の途、両方が絶たれた。


 






毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


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