表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
281/1077

光の母教団

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


リャン 健一ジェンイー

日本名、橘 健一。リーファの父。

台湾人。民間軍事会社の社長で、梁財閥の長男。リーファを溺愛している。



 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。


 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。


ジェーン

リーファの父の相棒。伝説の工作員。


王 

リーファの父が営む、民間軍事会社のオペレーター。


米沢

芸能プロダクションの二代目。

ヤクザに顔が利く、金持ち。

元々は、リーファに痴漢したロリコン。





 



  



 逃亡するのに、田舎を選ぶのは犯しやすい間違いだ。


 なるほど、人口も少なく、Nシステムも監視カメラも、殆ど存在しないのは確かだ。


 だが、そいつらは田舎を甘く見ている。

 

 奴等は余所者の侵入を、偵察衛星より迅速に発見するのだ。


 

 

「そうなんよ、何か、引っ越しトラックみたいなんが、入って来ちゃったで!」


 山の麓、闇に沈んだデカイ農家。

 蚊取り線香の匂いと、頭上の玄関灯に、羽虫がぶつかる音。虫の声のBGM。


カーラーを巻いた寝間着のオバちゃんが、口角泡を飛ばしながら、コーフンして喚いている。


 京都・北部にある綾部市。

 絹織物で有名な、自然豊かな地域。


 ハッキリ言えば田舎で、この辺りになると、コンビニまで30分かかる。車でだ。


 綾部のインターチェンジで降り、合流した地元のヤクザ ――チビでハゲ、どう見ても声のでかい作業員のオッサンにしか見えないが―― が大げさに驚いてみせる。


「ほんまこ!? それやわ! あっちこ? ちょ、出てきてお世話になれるこ?」


 何を話してるのか、微妙に分からん。


 私は相手が怯えないように、少し離れて地面に落ちてるスイカの種を見ていた。

 


 二人は私の前を通り過ぎ、街灯のみが照らす舗装されてない私道まで出て行くと、オバちゃんは、指差し、道を説明した。


 オッサンは、"あー、ハイハイあそここ?"

 と叫び、オバちゃんに調子を合わせている。


 話が長くなるのを危惧していたが、オッサンがでかい声で、尿道結石が如何に辛かったかを語りだすと、オバちゃんはすぐに話を切り上げたそうな顔になった。


 私は感心した。なるほど、ああやって相手を追い払うのか。


 いやあ、助かったワ、おおきに!


 上機嫌で手をかざしたヤクザは、次の瞬間、不機嫌な顔になってこっちに歩いてきた。


 不審な顔をする私の前を、ハゲの小男は、足速に通り過ぎる。砂利を踏んで、後を追う私より早く王の待つ四駆に乗り込むと、苦々しい顔で窓の外を眺めた。


 私から聞くのも癪なので、こちらも黙って相手が口を開くのを待つ。


 気詰まりな沈黙。


 コイツは、今、入院している米沢のツテで紹介された、綾部市のヤクザだ。シノギはパチンコと山林開拓らしいがどうでもいい。


 問題は、こんな吹けば飛ぶよな、木っ端ヤクザが私相手に勿体ぶってることだ。


 米沢が仕事を頼んだ相手は、日本でもトップクラスの組織、湯坂組だ。

 その紹介と言う形で我々は紹介されたはずだが……


 変に対抗意識でも燃やしているのか?

 

 それなら。


 私は、目を細めた。


 こういう連中はサル山のサルと同じだ。

 どっちが上か認識させてやらねばならん。


「田中さん、最悪ですわ……スンマセンが、タクシー拾えるとこで降ろしてもらえませんやろか?」


 オッサンは苦悩を顔に浮かべ、蚊の泣くような声で言った。


 運転席の王が、半分振り返った程の弱々しさだ。


 私はさっきまでの考えをあっさり捨て、出来るだけ穏やかに聞いた。


「何がありました?」


 荒事と無縁そうなヤクザは、早くここから去りたい気持ちを隠しもせずに、早口で言った。


「ソイツラ、海に向かう為にこの場所選んだんちゃう。逃げ込む場所があるから、ここに来たんですわ」


「……と言うと?」


 オッサンは、怯えたように囁いた。


「『光の母』って知ってますこ?」



 

『ああ、それ、中身は大麻の栽培施設ですよ。元々は、地元のよく分からない仏様を祀ってる団体なんですけど、外界との接触を絶ってる連中だから、やりたい放題なんだよね』


 スマホの向こうから、米沢が言った。

 どこか生き生きとしている。

 まだ、入院しているはずなんだが。


私達は、オッサンヤクザに教わった真っ暗な田舎道を、四駆のヘッドライトで切り裂きながら走る。


 目的地は、山奥のある施設だ。


『光の母』教団。

 

 戦後すぐ、発生した仏教系の宗教組織らしい。

 新しいものは白い目で見るが、古来からのものは、「伝統だから」と、盲目的に守るのが田舎だ。

 そこは、日本も台湾も変わらない。


 山奥の隔絶された場所で、イスラムやキリスト教の様な終末思想を信じ、釈迦の教えに沿った集団生活を送ってその時を待つ、と言う集団だ。


 ソイツラとエディが、どんな関係かは知らないが、逃げ込まれたらかなり厄介だ。


 さっきのハゲヤクザが、

 『もう、無理ですわ』

 とボヤいていたのは、故なき事ではない。


 あの地下鉄サリン事件が起こった際、麻原彰晃が逮捕されるまで、実にニヶ月近くを要したのだ。居る場所が、殆ど特定されているにも関わらず、だ。


 六十日弱。


 それだけあれば、余裕を持って隠れ、充分に逃げおおせる。


 無理に押し入ってくる者があれば、あちらとしては、エディを隠して、警察を呼べばいいのだ。


 だから、私達が取る方法は決まっている。


「よくわかった。米沢、悪いが湯坂組を通して連絡を頼む。時間が無い、このまま俺と王で施設に侵入する。ここからエディが逃げ出した場合にそなえて、網を張るよう伝えてくれ。地元のヤクザはブルっちまって役に立たん」


『だろうな。『光の母』に楯突いたり、批判的な報道した人間は、陰湿な嫌がらせを受けるって地元では有名なんだ。事件にならない程度のね』


 私に対し、対等の口をきくようになった、元痴漢。


 昔のことはもういい。

 いまは頼れる仲間だ。


 私は礼を言って衛星電話を仕舞った。

 山の中過ぎて、スマホの電波は心許ない。

  

 街灯すらない、山道。


 光るのは、時々道路に出て来て、こっちを見つめる狸の眼くらいだ。


 同じ様に、インマルサット(衛星電話)で本部に連絡していた王が告げた。

 

 「増援の到着まで、30分です」


 私は即答した。


「待てん。逃げられる前に捕獲する」


 そして、その言葉の、根本的な思い違いを……

 この後、私は思い知る事になる。





毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ