冷たくね?
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。あ
1号
スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。
2号
スマブラー。1号の相棒。小男。
オリガ=エレノワ
金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。
ジャスミン(ジャス子)
金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。
氷室 恵
日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。
ハスマイラ
リーファの護衛。リーファのパパが好き。
次々と、四駆のドアが閉まる音を聞きながら、傾いた夕陽に染まるマンションを見上げる。
寂れた商店街の外れに立つ、三階建て。
フクザツな気持ちで、雨の染みが目立つ壁を見つめる僕とは違い、魔王城を前にした、勇者みたいな顔で集結する、リーファ達。
護衛が車外と車内で待機するから、路上に駐めてても問題ない。
僕らとハスマイラさんを、押しとどめるように、うさ山さんが手を広げて言った。
「いい? 先ず私がアイツラと話す。暴力はダメだよ?」
口許を引き結んでいた、メグが言った。
「わかってます。女装させて、人形のパンツを調べさせて、リーファさんに密告して……」
雪女だけじゃなく、リーファとナディアの目付きも険しくなる。
ハスマイラさんは平気な顔だ。
「物置に泊めようとして、自分たちは逃げて帰った理由に、納得が出来たら……デスケド」
そうやって、事実だけを並べられたら、何だか1号への信頼が揺れそうになる。
僕はうつむいてしまった。
コイツラをなだめるべきなのに。
でも、メグ達の立場なら、僕だって許さない。
これが悪ふざけなら、小学生相手に、オトナゲなさ過ぎる。
けど。
僕はもう一度、三階にある生活感のない、1号宅を見上げる。
どう考えても、1号にとってはデメリットが多すぎるんだ。
うさ山さんが、背中を向けて歩き出したから、考えは中断させられた。
「……アイツラ、バカな事ばっかりしてるけど、バカとは程遠いヤツらだから。後悔したくなかったら、先走っちゃダメ。いいね?」
僕は驚いた。
うさ山さんが、1号達を褒めるトコなんて聞いたことない。
ヤッパリ何かあるんだ。
僕は一筋の光を見たような気がした。
そしてみんな、アイツラのスゴさを、目の当たりにする事になったんだ。
程度で言えば……
ハスマイラさんが床を見つめるレベルで。
「開けろ、私だ」
僕らを引き連れたうさ山さんが、ドアを叩きながら叫んだ。
部屋の奥から、近づいて来る足音。
それより先に、隣の住人が顔を出した。
神経質そうな、1号なんかとよく似たカンジのおニーサンだ。
昨晩、散々騒いだから、さすがに頭に来たんだろうけど……
険しい顔の僕達 ――平静なハスマイラさん以外―― 女性6人を見て、ギョッとする。
ヲタクの巣窟に激おこの美人達が押しかけてる絵図は、想定の範囲外だったに違いない。
ヤクザの集団と目があったみたいに、慌てて家に引っ込んだ。
扉が開き、1号の巨体が入口を塞ぐ。
Tシャツにスウェット、シャワーしたのか、髪が濡れ、タオルが首に掛かっていた。
自分に突き刺すような視線を放つ面々を、面白くも無さそうに見回す。
うさ山さんが、唸るように言った。
「1号……説明してもらうよ? アンタの事だから考えがあるんだろうけど。無かったら……」
「上がれ。静かにな……昨日のオフで、隣と下の機嫌が悪い」
うさ山さんの言葉を遮ると、背中を向けた。
皆、不満そうだけど、ハスマイラさんは微笑み、こう呟いた。
「上手いッスね」
ここの間取りは、六畳間と、八畳間+ダイニングの二部屋だ。
僕ら六人と1号は、八畳間の方で輪になって座っている。2号は襖を隔てた、隣の部屋にいるらしい。
何故か全員が正座。
変な宗教の集まりにしか見えない。
皆の着席を待っていた1号が、敵意をむき出す女子達に向かって、ひょうひょうと言った。
「飲み物は冷蔵庫から、勝手にとれ……始めようか……と言いたい所だが」
僕に目を向けた。
「一人足りんな。ジャスミンって子だ」
「ジャス子は今……」
「ワシントンだろ? 一度聞いたら覚えてる。なんで参加させてやらないんだ?」
リーファが不機嫌に言った。
「アンタに関係あんの?」
「アンタは関係無いって言ってくれるのか?」
1号の切り返しに、言葉を失うリーファ。
苦笑するハスマイラさんに構わず、1号は僕に言った。
「ベルにゃん冷たくないか? 向こうは朝四時でも連絡待ってるハズだ。寝落ちしてても、飛び起きるだろ」
「……いや、時間がなくて」
「なら、今かけろ。ビデオ通話で参加させてやれ。本人が望めば、だが」
リーファの頭越しに、ハスマイラさんが僕のスマホを渡してくれた。
「自分は一切口をはさむつもり無いッスから、頼まれた事しか、しないッスよ? 充電はしときましたけど」
さすが、有能。
Lineを、チェックするとジャス子のバッジが99になってて、すまない気持ちで一杯になる。
2号の電波を借りて、タブレットで母さんに掛けたときは、ワザと他のlineは見ないようにしてたからな。
コール二回で喚き声が飛び出した。
『凛、ケガは!?』
「大丈夫。連絡遅くなってゴメンな」
『マジそれ! ホントに心配したんだからな!』
情けない声を上げて泣き出す。
「悪かった。みんなもいる」
泣くのをやめ、ジャス子が吐き捨てた。
『どうでもいいわ。だあれも、凛がどうなってるか教えてくれなかったしな』
僕は、衝撃を受けた。
……『だあれも』の中に、あれだけ仲良しだったリーファも含まれてるんだよな?
……でも、リーファ達、僕が逃げた後話し合ったって言ってたはず。仲直りとか……
してないよな、車の中の雰囲気見る限り。
ジャス子は。
っていうか、ここにいる女子は裏表の無いヤツらばっかりで、愛想笑いの下手なヤツの集まり。
だから、こうなる。
『……ねえね、凛との事黙ってたのは悪かったけど……冷たくね?』
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
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