メグなら、ナディアなら
登場人物 ヲタク編用
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。あ
1号
スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。
2号
スマブラー。1号の相棒。小男。
オリガ=エレノワ
金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。
ジャスミン(ジャス子)
金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。
氷室 恵
日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。
「恐れ入ります。当店では、そのカードのお取り扱いはしておりませんもので……」
さっきの店員が、中年の店長を連れて戻って来た。どちらの表情も固い。
僕を抱き寄せたまま、リーファが細い眉をひそめる。
「……そ。キャッシュなら問題ないでしょ? おろしてくるから、全部袋に詰めといて」
店長は、リーファの背後に立つ護衛達と目を合わせないようにしながら、済まなさそうに言った。
「申し訳ございません。当店では転売防止の為、フィギュアは一人五体まで……」
リーファがキレた。
「するワケねぇだろ、こんなモン!? 人見て言えよ!」
……リーファ、言い過ぎだ。
ハスマイラさんも苦笑してるし、店内にいるお客さん達、怯えて距離をとってる。
僕が口を挟もうとしたその時。
「リー、もうええじゃろ」
護衛の間を割って、ナディアが現れた。
夏物のスカートにTシャツだけど、羽織った薄物の上着がゆったりしてて、どこかチャドルっぽい。
ゆっくり近づいて来ると、
「足、のけんさい。まだお代払ってないじゃろ」
足を持ち上げ、パンプスの下から、フィギュアを抜き取った。
「ナー、邪魔すんじゃないよ!」
リーファ、引っ込みがつかなくなってるのか?
ナディアは取り上げたフィギュアのセロファンを、はたきながら、リーファを諭す。
「話は聞いちょった。凛を先に見つけたのがうちじゃっても、リーとおんなじ事しちょる。ホレ」
ナディアがかざした黒いカードを見て、リーファが息を呑む。
ハスマイラさんが、持ってるのとおんなじ、戦車も買えるっていう、最上級のクレジットカードだ。
「ばっちゃんに、オリガ経由で渡されとるんじゃ……『こまつ』でも使えんし、意味ないのにの」
カードをマイメロのポーチに仕舞い、ナディアが、リーファをまっすぐ見つめる。
「そんで、リーファも、こうしちょったろうな……」
逃げるのを必死で我慢しているような、店長達に向き直り、ナディアは頭を下げた。
「連れがお騒がせしました。申し訳ありません」
……ナディアは厳格に躾けられてきたから、我慢強い。
リーファと決定的に違うのは、自己評価が低い事だ。間違っても、自分を美少女だとは思ってない。
だから、短気だけど空気を読むし、協調性もある。
ナディアは、僕の全てを許してはくれないし、僕が不正をされたら、八割相手に怒って、二割僕の油断を叱るだろう。
何故なら、彼女はそうやって愛情一杯に育てられて来たから。
あっけに取られたような店長達。
夜道を追っかけてきた半グレに、おとした財布を渡された様な顔をしている。
良く通る声が、店内に響いた。
「リーファさん、人の趣味をけなしちゃダメです。凛さんに、そう叱られませんでしたか?」
ジーンズに、Tシャツ。飾りの無い姿が、一層雪女の見た目の強さを際立たせる。
顔も含めて、体の色んなとこに絆創膏が貼ってある事に胸が痛んだ。
黒髪を揺らし、ぱたぱた近づいて来ると、ナディアの手からフィギュアを取り上げる。
目の高さでそれを見つめる、メグ。
みんなその動きに眼を奪われている。
髪をかきあげる仕草、その後の笑顔もサマになってて計算しつくされた芝居みたい。
コイツ、ヤッパリ役者に向いてるよ。
それに、今までと違うのは一つ一つの動きに自信が溢れている。
そりゃそうだ、ホントの死線をくぐり抜けてきたんだ、こんな5年生いるわけない。
……メグもまた、僕の変装を見破り、許し、抱きしめてくれるに違いない。
僕が不正をされたら、メグは悲しそうな顔をして、慰めてくれると思う。
そしてニッコリ笑ってこう言うだろう。
「大変だったのによく頑張りました。花丸とチューをあげますね?」
そんな雪女はトートバッグから洒落た財布を取りだして、店長に言った。
「このコはメグが引き取りませう……庶民だからハイ、500円」
おっかなびっくり、硬貨を受け取り、店長はリーファ達を見た。
苦々しそうに頷き、頭を下げる相棒。
「お願いします……生意気な口をきいてすみませんでした」
僕も慌てて謝罪を口にし、頭を下げる。
そもそも、悪いのは僕だ。
どんな理由であれ、商品を床に落とされたりして嬉しいわけがない。
場の空気が緩んだその時、うさ山さんが入り口に現れた。
夕陽で逆光になった顔は青く、強ばっている。
こんなうさ山さん、見たこと無い。
「アイツラ、自宅に向かってる。Lineには出ないけど、『日本橋離脱』ってツイートがあった」
8月の末、まだ陽は高いけど、薄い赤で入道雲が色づいている。
僕はそれを、高速上、四駆の中から見ていた。
車内には、運転するハスマイラさんと、小学生四人。うさ山さんは、もう一台の四駆に乗ってる。
僕は助手席に座らされ、他の三人は後ろの座席だ。
誰も口をきかず、空気が重い。
バークスビルを出てからずっとだ。
女子達、全然仲直りしてないし、そういえば、スマホも返って来てない。
ジャス子は今、どうしてるんだろう。
オリガは?
無事なんだろうか。
どれも今聞いちゃいけない様な気がする。
僕は色づいた青空を見上げる。
ずっと離れない疑問。
1号は何のつもりで、あんな条件を出したんだろう?
リーファにだけDMで、僕がバークスにいる事を密告したのはどうしてだろう?
僕らがこうやって押しかけて行くのを分かってて、『日本橋離脱! 今から家で2号とスマる』ってツイートした理由が分からない。
理由は無いけど、1号と2号、ホントに家にいると思うんだ。
女子達、特にうさ山さんは激怒してる。
そして僕は、怒りよりも戸惑いが大きい。
リーファ達には言ってないけど、1号に出された最後の条件。
『自転車取りに帰ってきた時、うさ山と女子全員、部屋まで連れて上がれ。それがゴールだ』
……1号、何企んでんだよ?
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!