表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
271/1090

ヲタクの迷い道 〜好きな人が女装して、フィギュアのパンツを覗いてたらどうしますか〜

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。


 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。あ


 1号

 スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。


 2号

 スマブラー。1号の相棒。小男。



 

 オリガ=エレノワ


 金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。


 ジャスミン(ジャス子)


 金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。


 氷室 メグ

 日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。 




  





 15時過ぎのオタロード。


 うだるような熱気、ゾンビの様な通行人(障害物)を避けながら、中国語に溢れた通りを速歩きで進む。サイズの合わない、サンダルの痛みを我慢しながら。


 普段から半パンにTシャツで生きてるから、日焼けは何とも思わないけど、足の甲が赤くなって来てるのに驚く。

 こんなの、海水浴で、ビーチサンダル履いた時以来だ。

 

 リーファ達をまいた本屋から、1km程、背後を気にしながらやって来た。


 着いた。


 僕は逆光に顔をしかめなら、八階建てのビルを見上げる。


 全階、おもちゃ、フィギュアから鉄道模型なんかで埋め尽くされた魔窟、バークスビル。


 ……さっき、メグがショックバトンを握っているのを見て確信した。


 捕まったらどんな目に、遭わされるか分からない。


 何ていうか、四人とも違う言葉の凶器 ――つまり、それぞれが僕にされた事―― で殴り合ってた上、Twitterで振り回され、イライラと怒りはMaxのはず。


 僕ら三人、オレンジ色のツナギを着せられ、孔雀の羽根を持った四人に囲まれてるのを想像して震えた。


 僕は狭い店内に、熱くなった顔を向ける。

 ハズカシイとか言ってらんない。


 絶対にミッションをコンプリートしてやる。

 

 そして、泊まるところを確保するんだ。

 


 無理とか考えんな。

 後、2、3日。

 何とか逃げ切るんだ。


 僕はとっくにぬるくなった、ペットボトルから一口飲むと、店内に足を踏み出した。


 狭い通路、仕切るように商品が並べられた棚を背にし、僕は壁一面に掛けられたフィギュアを睨んだ。


 セロファンで個包装された、掌に乗るサイズの台付き人形が、所狭しとフックで引っ掛けられている。高さは2m、巾は1mくらい。


 全部のフィギュアを調べるのに、1時間くらいでいける……か?


 ちらりと周りに目を走らせる。

 

 お客さんは少なく、特に注目もされてない。

 フィギュア好きの腐女子もゴマンといるし、きちんと元に戻せば、店員からも文句は言われないだろう。


 一番上は背が届かない。

 一番下から、攻めていこう。


僕はスカートが、汚れた床に付くのも構わずしゃがみこんだ。


 


 あれから、どれ位経ったろう。


 スマホは無いし、店内の見えるとこに時計も無いから、分からない。


 冷房は効いてるけど、単純作業と、追われてる緊張で、頭がぼーっとしてきた。 


 段々、要領が分かってきて、フィギュアのスカートの中を調べる速度も上がった。


 片手に2個づつ持って、ひっくり返して素早くパンツを確認する。

 

 壁に掛かっているフィギュア、僕の腰の高さまで調べたけど、該当は無しだ。


 ふと、店員のお兄さんと目が合う。

 なんて言うか……あんまりいい顔で見てない。


 そりゃそうだよね。お金持ってなさそうなJSが、店の商品を、片っ端から手にとって、イミフな事をしてるんだから。


 急に我に返って、顔が熱くなる。

 

 なにやってんだろ、僕。


 おかしいな、なんでこんな事するハメになったんだっけ?


 曖昧に会釈して目をそらし、作業に戻り、ペースを速める。

 

 追い出される前に、少しでも。

 今夜、泊まるとこないと、困るんだ。


 色んな記憶が頭をよぎる。

 

 メグの家、ドローンの羽音、バイクの振動、銃の手応え。


 そして、1号が僕に突き付けた条件。

 

『いいか。盗まれた我が妹達を見つけてくれ、1体でもいい。"リアルの方" なら、のしを付けてくれてやったのに……それと、万が一、追手に捕まったら……泣け。本気でな。後は何とかしてやる』

 

 そんな訳で、僕はこんな事をしている。


 ……それと、泣き真似必要なさそうだぞ、1号。

 ミジメ過ぎて視界が滲んで来たもん。


 手が震える。

 

 僕、そんなに悪い事したのかな?

 頑張って来たつもりなのに。


 ふと、その時誰かに見られてる気配を感じた。


 アレ(気配)って多分、人が立ったりして空気の流れが変わるから気づくんだろうな。


 そして、よく知ってる匂いと。

 入口を見た。


 時間が止まり、全ての音が消えた。

 

 ハスマイラさんが履いてるようなスラックスにパンプス、白のゆったりしたカットソー。


 その上に乗ってるのは、蒼白なリーファの顔だった。


 空っぽになった頭。

 カレー堂で、1号にされた質問が、頭をよぎる。


『ベルにゃんの女装を見破る可能性が、一番高いのは?』


 僕は、ブッチギリでリーファ(相棒)だって即答した。



 ……なんで。


 なんでだよ。


 相棒だぞ?

 多分、一番見られたくないヤツだったのに。


 僕らは、互いに視線がそらせなかった。


 僕は今、どんな顔をしているんだろう。


 ぐにゃりと視界が歪む。


 リーファの眼に浮かんだのは……

 涙。

 そして……悲しみ。


 僕の中で、ぷつりと何かが切れた。


 フィギュアを落とし、顔を覆った。

 

 ……仕方ないだろ、どうすりゃよかったんだよ?


 その言葉の代わりに、僕の口から出たのはみっともない泣き声だった。


 軽い足音が響き。


 殴られる代わりに、抱きしめられた。



……1号にされた質問。


『今の状況、一番許してくれそうなのは?』


 僕は、ブッチギリでリーファ(相棒)だって即答した。



「……ごめんね、凛。一人で辛かったよね?」


 嗅ぎなれた、リーファの匂い。

 相棒の声も震えていた。


「アンタが逃げた後、みんなで話し合ったんだ……一人に背負い込ませて……みんなで追い詰めた。そりゃ逃げるよね」


「……パンツに……『1』って書いてあるフィギュアを……見つけたら……実家の物置に……泊まらせてやるって」


 リーファにくっつけた頬。

 とぎれとぎれの僕の言葉。


 リーファの抱きしめる力が強くなった。

 しゃくりあげる速度も。


「……ごめんね……そんな事しなくていいんだよ……」


 近づいて来る足音。

 迷惑そうな顔をした店員。


 僕が落としたフィギュアを拾おうとしてるのに気づき、慌てて手を伸ばした。


 出来なかった。


 リーファが高そうなパンプスで、それ(フィギュア)を踏んづけたから。


「相棒……オマエはそんな事しなくていいんだよ」


 リーファは店員を軽く見上げ、ドスの効いた声で言った。


「悪いね、ニーサン? このクソみたいなキモいの、壁にあるヤツごと全部くれよ……マイラ!」


 身を引き、怪訝な顔した店員が、リーファの吼えた方向を見て、ギョッとした。


 黒スーツのハスマイラさんを先頭に、ドヤドヤと目付きの悪い連中が入ってきたからだ。


「マジすか、リーファちゃん? そう言う()()()()()一番キライッスよね?」


「相棒が、ナメられんのは、100倍許せないんだよ! パパでもこうする……違う?」


「……ッスね。店員さん、手持ちこれしか無いワ」


「……ブラックカード!? ち、ちょっと店長に聞いてきます!」


「ゴミ袋に詰めて。クソヲタにくれてやるのにちょうどいい……そう思わない、ニーサン?」


 店員は、怯えた様に走り去る。


 その後ろ姿を睨む、鋭く切れ上がった眼。

 金色のピアスが眩しく輝く。


何が起こってるのか分からず、ボンヤリしてるだけの僕。


 1号にされた質問がまた、頭をよぎる。

 


『君が不正されて、一番怒りそうなのは?』

 


 僕は、即答した。


 ブッチギリでリーファ(相棒)だって。


 

 


 



毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。

祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。


宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うーん…これは正ヒロイン!(不特定多数)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ