肌色成分
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。あ
1号
スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。
2号
スマブラー。1号の相棒。小男。
オリガ=エレノワ
金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。
ジャスミン(ジャス子)
金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。
氷室 恵
日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。
「えっ、僕、このカッコでカレー食うんスカ?」
昼過ぎ。
日本橋、カレー屋の前で、僕はワンピースの裾をつまむ。
チラチラ、僕らを見ながら通り過ぎてくヲタク達。その眼差しが、どこか羨ましそうで、トリハダが立つ。
なるだけ喋らないようにして、女声はあきらめた。余計ハズカシイもん、裏声。
うっとりと鼻の穴を広げ、無理やり僕にかけた香水の香りを、胸いっぱい吸い込む、ヲタ達のケツを蹴る。
「通報するぞ! もしくは、メイドさんのスカートめくって、アイツラに脅されましたって指差すぞ? たいてい、怖いお兄さん達が見張ってるんだからな」
二人は汗だくの顔をしかめた。
1号が「カレー堂」と書かれた自動ドアをくぐりながらボヤく。
「よく知ってるな…… きりん堂でもいいが、スマ勢の溜まり場だし、ツイートされたら厄介だからな」
「あー……何でも呟くからな、スマ勢」
何より、この姿は見られたくない。
日本橋の飲食店特有の狭さで、カウンターしかないけど、店内の涼しさに感動。
客はあんまりいなかった。
「ワンピース、汚したら弁償だぞ? 後、メニュー『辛口』しかない『女・子供お断り』仕様だから覚悟しとけ」
「えー、マジすか?」
ナニ、その『漢』仕様。
だから、客少ないのか?
結論から行こう。
メッチャウマイけど、メッチャ辛かった。
水が手放せないけど、煮込まれた牛スジが噛めば噛むほど味が出て、ヤミツキになる!
けどさ。
タダでさえ暑苦しいデヴと、眼鏡の曇ったヲタに挟まれ、HPガンガン削られてるのに、こんなもの食べたら余計消耗するわ!
鼻で息をしたら隣からスッパイ臭いがするし、口呼吸したら、味がしそうでイヤだ。
出来るだけカレーに顔を近づけ、香辛料の匂いでごまかすって言う、生活の知恵で乗り切るんだ!
「時間がない。lineで修羅場に参加してたって言う、えーと、大阪大会でサトシのチームだった……カレンちゃんか? そのコも含めて、大体の性格教えて。簡潔に」
2号が、ワンオペしてるオジサンを眺めながら言った。カバンを開け手帳を取り出してる。
僕は、カレーで服を汚さない様、身を乗り出して食べながら、一瞬考える。
「全員、乱暴ですね」
「参考になんねえよ……」
顔をしかめながらも、
高速で何かを書き込む2号。
1号が水滴の浮いたコップを置きながら、口を挟む。
「そうだな……例えば、今のベルにゃんの姿を見たら、各々どんな反応だ?」
スプーンを止め、少し考える。
「アリスなら真っ青、クララなら、なんじゃその格好!? メグならダメ出し、ジャス子なら怒る……かな? みんな、心配してくれるとは思います」
オリガ、どうしてるのかな。
まあ、連絡してる場合じゃないけど。
その後も、1号の質問に答えていると、
「出来た」
2号に手帳を突きつけられた。
「うわっ、絵メッチャ上手い!?」
そこには、マンガチックな4人のイラスト、その下に性格や特徴が書かれ、立派なデータファイルになってた。
2号が少し得意げに笑う。
「漫研で、同人誌描いてるからね、大学の」
「おお、クリエイト出来る側のヲタなんですね? 尊敬! スゴイですよね、2号さん!?」
振り向いて見上げる僕に、1号がカレーの付いた、いい顔で微笑む。
「ああ。アリス、ベル、メグ、カレン+ベルにゃん……いいJSユリ本を期待してるぞ? なあに、登場キャラ、全員18歳って書いとけば無問題だ、ランドセル背負わせてても」
僕は笑顔のまま言った。
「もう……生きるな」
後ろ髪を引かれながら、涼しい店を出た。
トボトボと、砂漠の様にこんがり灼かれる、オタロードから外れた裏道を歩く。
昔ながらの、ネジや無線パーツを売る店、チャチで小さな『執事カフェ』もある。
前を向くと、シャツの貼りついた暑苦しい1号の背中を見てしまうので、ガムの黒い跡と、破れたチラシだらけの歩道を見つめて歩く。
……これからどうしよう?
カレー、1000円したし、これ以上お金使いたくないんだよね。
1号達、何とかしてやるって言ってたけど、具体的にはどうするんだろ?
さっきのカレー屋でされた質問も、何か考えがありそうだけど。
「……そろそろ、うさ山達がこっちに向かって来る頃だな」
「え、何で!?」
「2号がエサを撒いたからな、Twitterで。ほれ」
突きつけられたデカイスマホに、2号のツイート。
写真に、さっきのカレーが映っている。
『1号達と。オフ明けのカレーうんめえ』
「これだけじゃ、僕がいるって分かんないんじゃ……」
「多分、うさ山、オフに来てた奴らに尋ねただろうな、ベルにゃんいたかって。アリスちゃん達も一緒なら、置いてある自転車に気づくだろ」
「あ、しまった!」
うっかりしてた!
とめっぱなしの僕の自転車、リーファやナディアなら気づく。
「いいんだよ。あれもエサなんだから」
あっさり言う2号に、僕は尋ねた。
「……何で、こんな匂わせツイートしたんスカ? 考えがあるんですよね?」
何をしたいのか、全く読めない。
1号は答えず、ビルを見上げた。
「ここだ」
それは、四階建ての本屋。
『マンガbang』
置いてある本、全てがラノベとマンガのみっていう、最強仕様だ。
「ちょっくら、行ってくるわ」
こっちの返事を待たず、万引き防止バーを通って、店の奥に向かう2号。
「俺達はこっちだ」
通り向かいの家電ビルへ向かう1号、慌てて付いてく僕。
2分後、僕と1号は四階の窓から、向かいの本屋を監視していた。
「………よし」
「どうしたんスカ?」
無言でスマホを差し出される。
「……ハァ!?」
2号が更新したTwitterを見て、声をあげた。
同人誌コーナーらしい一画の、肌色成分だらけの品揃えの写真。
それはいい。
変態扱いされるのは、2号だ。
もう変態だし、無問題。
問題は文章。
こうあった。
『ヲタbang、四階。少し早いが、これも教育……後悔はしていない』
現在、日本橋にカレー堂は無いそうです。
(´;ω;`)