あくまでも我が為に
登場人物 ヲタク編用
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。主人公が好き。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。
1号
スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。
2号
スマブラー。1号の相棒。小男。
オリガ=エレノワ
金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。
ジャスミン(ジャス子)
金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。
氷室 恵
日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。
地下鉄に揺られて、30分。
僕らは日本橋、『オタロード』にやって来た。
東京で言う秋葉原にあたる、名前の通りの『オタク街』だ。
八月の終わり、アスファルトから立ち上る熱気が地面近くの景色を歪めている。行き交う人の群れと、駐車スペースの奪い合いをしてる沢山のクルマが、余計にイラ度を上げてくれた。
いや、休日の日本橋に車で来るなよ。
駐めるトコなんてないぞ?
ゴミゴミした通りを洒落たサンダルで歩く僕。
サイズが小さいから、靴ずれが不安だ。
伊達眼鏡を外し、ワンピースの袖で汗を拭こうとした。
「ハンカチあるだろ……自分が今は『アルクェイドたん』である、自覚はあるのかね?」
ないわ、そんなもん。
背後の1号に心でツッコみつつも、ポケットから出したレースのハンカチを女の子っぽく顔に当てる。
仕方ないだろ、女装ってバレるほうがハズカシイもん。
「1号……俺、感動だよ。幸せって案外近くにあったんだな」
「横に並ぶなよ、2号。ニヤニヤガン見してたら、通報されるぞ? 後ろ姿でガマンするんだ」
背後でボソボソとかわされる会話に、キレそうになる。
でも……
今の僕には人権がないんだ。
そもそも、なんで変態について来たんだよって思うだろ?
そんなつもり、サラサラなかったっつーの。
だから、1号宅を出てすぐ、母さんにLineしたんだ。
「僕。母さん、今どこ?……いや、色々あって……わかってるって、ゴメン。だから、変装してる。知り合いの大学生のトコに……そっち行きたいんだけど、今どこ?……え、リーファのマンションですかそうですかまた連絡する」
僕は、セミの声に灼かれる生活道路にうずくまった。
直射日光に首を炙られるのも気にならない。
詰んだ。
ハイ、詰んだ。
橘さんと父さん、友達なんだからそりゃそうなるわな、ワカリマス。
後思い付くとなったら……
ないじゃん。
今更ながら青くなった。
行く場所が無いことにじゃない。
肝心な事を忘れてたからだ。
昨日は頭が回らなかったけど、どこに押しかけても、迷惑かかるじゃん、ドローン落ちてきたらどうすんの?
「……どうしたベルにゃん?」
「あ……僕これで失礼します。マジ、スンマセンでした。じゃ」
この二人、丸出ダメ夫だけど巻き込んでいいわけないもんな、泊めて貰った義理もあるし。
救いは敵が、徹底的に校長にヤラれ、モブみたいに警察が集まって来た以上、小学校から脱出する僕をドローンや尾行者が追跡してる可能性はゼロに近いって事だ。
パトカーの群れの威圧感は理屈じゃない。
逆を言えば、安心感もハンパない。
……そうか、思い出して見れば、その確信があったから、1号のトコに来たんだ。
昨晩はビビったけど、家に帰っても大丈夫な気さえする。
……けど、今はHAZEより、リーファ達に捕まる方が怖いし、このカッコを知り合いに見られるのはもっと怖い。
先を歩く1号が振り返った。
「何かあったのか?」
「……えっと」
僕は言い淀んだ。
昨日は聞きたくなさそうだったから、話さなかったけど……今考えればズルいよな。
「話せば長くなるんですけど、実は昨日……」
「長いならいらん」
つまらなさそうに言うと、さっさと、駅に向かって歩き出す。
「いや、聞いて下さいって! 1号さんたちの命に……」
「だから、こうやってガラ躱してんだろ。今更何を言ってんだよ」
2号が呆れたように言って、歩き続ける。
「いや、うさ山さんに殴られるとか、そんな次元の話じゃ……」
1号から返ってきたのは意外すぎる言葉だった。
「分かってる」
「……え?」
「最初は、親にでも殴られたかって思った。2号がそうだったからな」
振り向かない二人。
黙々と歩く八月の太陽に照らされる背中から、眼が離せなかった。
「あおせ小学校って、大阪七不思議のアソコだろ? ニュースじゃやってないけど、近所のヤツがツイートしてたよ、そこで銃撃戦やってるって。ブラジルのファベーラ並みに治安悪いから、確かめに行くバカはいないけどな」
2号の疲れたような声に、僕は言葉が出てこなかった。
実際には、学校を取り巻く一帯が、学校の職員や警備員達の寮代わりに買い上げられてるから、近づけないだけなんだけど ――昨日知った―― 今はそんな事どうでもいい。
「……わかってて、なんで?」
通行人の殆どいない生活道路で立ち止まる。
……僕、この人達の事、誤解してたのかも。
「決まってる」
1号が振り返り、僕をまっすぐ見た。
「女装してるって聞いたからだ」
「自殺して下さい、手伝うから」
少しでも、感動した僕がバカだった!
心の涙、返せよ!
「とにかく、親のトコ帰らないんなら、しばらくは団体行動だぞ。泊めた以上、関係者なりに無傷で返さないと、俺達の立場が悪くなるだろ」
「……そう……なの?」
大通りに出た1号が、信号を見上げながら言った。目の不自由な人向けの、ピッポ、ピッポが平和だ。
「2号の、言うとおりだ。考えてもみろ。今放り出してケガでもされたら、スマ勢から村八分にされるわ」
言われてみれば……
デスヨネーとも言えず、
「……サーセン」
一応頭を下げる。
1号が横断歩道を渡りながら、力強く言った。
実にスマブラーらしい言葉で。
「まあ、俺達が何とかしてやる……俺達の為にな」
後書き
毎日23時頃、週7更新を目標にしてますが、火曜と木曜は、25時になる事が多いです。
祭日、日曜は、早めに投稿する事もあります。
宜しくお願いします!
m(_ _)m