表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/1078

ヲタクの迷い道編 〜プロローグ〜

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。


 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。主人公が好き。


 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。主人公が好き。


 1号

 スマブラー。デブの巨漢。今回の宅オフの主催者。


 2号

 スマブラー。1号の相棒。小男。



 

 オリガ=エレノワ


 金髪のロシア人。日本で言う小6。女。ナディアの遠い親戚。主人公が好き。


 ジャスミン(ジャス子)


 金髪のアメリカ人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会では敵だった。主人公が好き。


 氷室 メグ

 日本人。小5。女。スマブラ団体戦大阪大会で、主人公の替え玉を演じた。主人公が好き。 


 






 日本橋、オタロード。


 夏休みも終わろうとしてる空に、夕方の入道雲。


 自動車と買い物客、中国語の看板で溢れかえる、ゴミゴミした電機街。


 それって、日本語と中国語が、同時に頭に入って来るから、ワタシみたいな、半々(バンバン)(台湾と日本のハーフの蔑称)にはあんまりいいもんじゃない。

 

 頭の中で考える時に、使う言葉が日本語に代わったのは、いつだったかな。


 サブカルに興味の無い私には、縁のない場所(日本橋)だけど、相棒の付き合いで何度か来た事はある。


 口に出したら、相棒が怒るから言わなかったけど、私はココがホントにキライ。


 別に私だけじゃない。大抵の女子はここに来たら「うわ……」って言うだろう。

 

 だって、露出スッゴい原色の制服着たイラストばっかなんだよ、そこもかしこも、のぼりや、看板が? フツーにキモいって。


 こう言われて、イラっとする人に聞きたいんだけど、男子とろくに喋れない女子が、上半身裸の、イケメンイラスト見ながらニチャついてたらどう思う?

 マジでそんなカンジじゃん、店から出てくる客。


 無表情で、影みたいに付いてきてる、ハスマイラはどう思ってんのかな。


 そこかしこで、ビラを配ってるメイドさんに、頭を下げながら、ここまで来た。


 そして見た。


 この夏は、良くも悪くもショックな事ばっかりだった。


 ……それでも、これはブッチギリだ。


 背後で、ハスマイラが掠れたうめき声を立てる。

 

 美少女(ワタシ)美女(ハスマイラ)の登場に、そそくさと、ヲタク達が狭い通路から散る。


 私は、1階から4階まで、フィギュア(人形)専門店になってる、バークス・ビルの入り口で、凍りついた。


 2m先に、尋ね人はいた。

 

 壁一面に掛けられた、手のひら大の美少女フィギュアを外しては、片っ端からひっくり返している。


 ナディアより、少し短い位まで伸びた黒髪、ヲタクが泣いて喜びそうな白のワンピースに、同色のサンダル。


 伊達眼鏡にカワイイリュックを背負った姿は、完璧な女子だけど、付き合いの長いワタシの眼は誤魔化せない。


 世界中の女子に聞きたい。


 自分の好きな男子が女装して、熱心にフィギュアのパンツを覗きこんでたら、どうしますか?





〜遡る事数十時間前〜



 


『GAME SET!』


「うわあああ!」


 僕のゲムヲがああ!


「しっ! 何時だと思ってるんだ、隣から、また苦情くるだろ」


 僕を余裕でやっつけた、太った大学生……『1号』が、顔をしかめた。


「くっそ、ゲムヲ使って、何でプリンに負けんだよ! 弱すぎだろ、僕!?」


「チガウぞ、ベルくん……」


 家主の1号は、イイ顔で言った。


「俺が強すぎるだけだ!」


 キィィィ!


 頭にきて、畳を台パン……したら、下から苦情来るから、あぐらをかいた、自分の膝を叩く。


 隣のモニターでは、残りの三人が入り乱れて闘う、『乱闘』をしている。


 ……小学校を脱走してから、二時間。

 時刻は午前一時。


 あの後、僕はダッシュで|マンションに帰ると、自転車屋の、サドルの裏にテープで貼ってた予備の鍵で、自宅に侵入。

 エレベーターが、上がって来る音がしたので、お年玉を含む、荷物をかき集め、靴を履き替えるのが精一杯だった。


 何で家から飛び出したのかって?

 

 ドローンが突っ込んで来たらひとたまりもない無いからだよ。


 なら、何で小学校から逃げて来たのかって?


 妖怪どもに、とり殺されるからだよっ!

 

  おバカ(メグ)が、僕の携帯を持っていったので、旧式のタブレットを持ってきた。

 これが唯一の連絡手段だ。けど、電話会社と契約してないから、WiFi、しかも無料の電波を拾うしかない。


 そんなわけだから、自転車で、暗がりからコンビニに近づき、壁にもたれて電波を拾う。

 

 汗に寄ってくる、蚊と戦いながら、この時間もやってる宅オフをツイッターで探す。 

 あった!


 大阪大会の時、うさ山さんにシバかれていたスマ勢の一人が、自宅を使って、夜どおしオフをやってる!


『1号』ってハンネ(ハンドルネーム)の人なんだけど、僕、一度行ったことがあるんだよね。自転車で、30分位だ。


 DMを送って、搬入用のカートのそばにうずくまり、返信を待つ。

 

 暑い。しかも、体調は最悪だ。

 バットの当たった、二の腕も、ボールをぶつけられた胸も痛い。ああ、お風呂に入りたい。

 

 靴だけは履き替えたけど、裸足に学校指定のジャージ、預かってた、めぐの白いリボンを巻いたままだ。

 恥ずかしいけど、まだ、いるかもしれない、敵の眼をかわす為ってのもある。

 

 自販機で勝った、高価なエナジードリンク(魔剤)を飲む。カフェイン、バカ高いアレだ。

 これくらい飲まないと、やってられるか。


 頼むって、早く既読付いて!

 

 コンビニに入りたい誘惑と闘う。

 小学生がこの時間、店内にいたら、通報されるかもだから、めんどくさい。


 返信キタ!


『いや、こんな時間にダメでしょ? 何? 家出?』


 正論を吐くなんて、ガッカリさ、スマ勢のくせに!


『いや、狙われてるんですよ、助けてください』


『えー、何かめんどくさそう。平和主義者なんだよね、俺』


僕は血管がキレそうになる。


 そんなだから、モテねーんだよ、クソヲタがッ! ドローン呼び込んだろかい!?


 マジで、遠回しに断るとかの機能ついてないよな、このデヴ?


 ……仕方ない。これだけは使いたくなかったけど……崖っぷちもいいとこだからな。


 僕は泣く泣く文面を追加した。


『今、軽く女装してます』


『全会一致で、ベルにゃんを招待する事に決定。ネコミミとか、セーラー服もサイズあるから心配いらないよ』


 この上なく心配だわ。


 僕は、眼が血走るのを自覚しながら、心の中で毒づいた。


 地味な病気で死んでしまえ。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ