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幕間 ~彼女と彼女が、DXとPMを始めた理由~

《登場人物》


 林堂 凜

 主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。



 香咲 ナディア=マフディー

 小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。



 梁 梨花リャン・リーファ 

 小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。


 ジン

 クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい


 

 佐竹

  クラスメイト。女。クラスのボス。


 

 鈴香 

 ナディアの姉。高校生。




 あれから一週間。


 僕らは特訓を開始していた。


 平日は3人でネット対戦、休日は、リーファの家で。

 僕の家から自転車で一時間くらいかかるけど、リーファの会社の人が僕とナディアの送り迎えをしてくれた。最初は気がひけたけど、リーファの、


「今あるもので、使えるものは全部使おう」


 という言葉に有難く従った。




 リーファの家は大阪市内のマンション。最上階にある、4LDKのマンションだ。

 もちろんオートロックなんだけど、ある階より上は、専用のエレベーターがあって、24時間ずっといる警備員にロックを解除してもらわないと上がれなくなっている。

 有名人や、政治家がいっぱいいるみたいだけど、僕はTVを観ないのでわからないし、どうでもいい。


 ドアは開いてるから勝手に入って、と言われていたので、頑丈そうなドアをあけて、マンションとは思えないくらい広い玄関に入った。一応、おじゃましますと、声をかける。


 毛足の長い絨毯を踏んで、50インチはありそうなTVが置かれたリビングに入ると、荷物を置いた。

 壁一面が、強化ガラスになっていて、大阪城も、ツインタワーも見えた。


 リーファが、隣室から、制服姿で顔を出した。僕らと同じで、公立小学校の制服だ。

 白のポロシャツに、ジャンパースカート、下にヒザまでの黒いレギンスで、下着を隠してるのは、全国共通だ。僕らの制服と同じでダサい。


「シャワー浴びてくるから、待ってて」


「今日、土曜授業だったのになんで制服?」


「地域の避難訓練。その後、鬼ごっこしてた」


 そういえば、制服、砂がいっぱいついてるな。


「消防車くるやつじゃろ、うち、はしご車乗せてもろたことあるけ」


「え?いいなあ。僕、放水したことしかない」


 その時、リーファの後ろから女の人が出てきた。


「リー、砂払ってから入ってよ……いらっしゃい」


 緩くウェーブのかかったロングヘアの女性。

 二十代の真ん中くらいかな。

 僕達の挨拶を笑顔で受け、お盆にむぎ茶とグラスを載せて運んで来てくれた。

 リーファの叔母にあたる、京子さん。


「お風呂場ではたくから」


「砂が溜るでしょ、もう……じゃ、私は部屋にいるから。リーをよろしくね」

 かるく手を振ると、お盆を抱えて去った。


 リーファは、市内で働く京子さんと二人で暮らしている。全然干渉して来ないので、僕もナディアも気が楽だ。リーファは、おっとりした京子さんに、どこか反抗的だけど。


「ナディア、SP慣れた?」

「やっぱ、ダッシュと振り向きが……勝手に崖掴んだり、先行入力出来たり……補助輪多すぎて、やりにくい」


 そう言いながらも、かなり滑らかにファルコンを走らせる。三人で、誰でも歓迎の部屋を建て、

 相手が来るのを待ってる。いまは、僕相手に練習中だ。


 GCコンを、プロコンに持ち替えさせるべきか、未だに思案中。

 ナディアのGCコン、ばねを切って押し込みを短くしたり、スティックのあたるところに、ヤスリで切れ目をいれたり、かなり改造してある。

 大会では、GCコン、プロコン、どちらでも使えるけど、任天堂が用意しているノーマルのコントローラーを使わなくちゃいけない。


「デラックス勢みんなそう言うよ……そうだ!やっと聞ける……なんで、デラックスやり始めたんだ?」

「低学年の時、塾においてあったんじゃ。休憩室に微妙に古いゲームばっかりあっての。うち、ゲームなんかやらんけど、塾でやると最高に楽しかったけん」


「わかる!学校で食うプリン、最高にうまいのと一緒だな?」


「それな!んで、お姉ちゃんと先生とやっとる内に上手くなったんじゃ。先生うちらがデラやると、ぶちうれしそうじゃった」


「デラ勢、新規にめっちゃ優しいからな」


 髪を拭きながら、リーファが部屋に入って来た。上下ラフなスウェットだ。


「なんの話?」


「なんでデラ勢になったかって。リーファは、なんでPM始めたの?」


「塾に置いてあった」


「同じ塾!?」


「もちろん違う、私は東京。先生が、この塾、どこにも無いスマブラがあるって学校で宣伝しといてくれって」


「……あー、そんな生徒集めが」


「タダで、ゲームが出来るって、子供たちが塾に来るんだけど、だからって入会するわけじゃないし」


「えっ、塾生じゃないのにやらせてたの?」


「そういう時間帯を作って。これ、客寄せとしては失敗だよって言おうとしたら、先生悪い顔で笑ってた。あれ、単にPM勢増やしたかったんだなって」


「塾がオマケなんだ!? やばいよ……ナディアそこ!」


 ナディアが僕のファルコンを地面に叩きつけ、跳ね上がったところをキックでお手玉、最後にファルコンの恐怖技、飛び膝蹴りで、僕のファルコンをふっ飛ばした。


「Game Set!」


「SPは、コンボが繋がるのが楽しいのう」


「やられた時は、発狂するけどな……リーファ、レンチン1分くらい待てないのか?」


 リーファが、ハンパに温めたむぎ茶をレンジから取り出しながら首を振った。


「大阪人だから、ムリ」




 さて、メンバーは揃ったけど、1番の難関が残っている。それは、抽選で選ばれる事、すなわち0回戦突破だ。

 前回の大会で優勝したとかなら、次回の当選は決まったようなものだけど、僕らは今回が初出場だ。


 ただ、僕には当てがある。


 自慢だけど、父さんに連れられ、小3から、大規模オフに参加していたから、ある程度プロや、上位勢と呼ばれる人達に知り合いが多い。

 実際、プロの人に、


「ベル君(僕のハンドルネームだ)団体戦エントリーするならチーム名教えて。面白いチームがいるって言っとくよ」


 って言われてるし、エントリー用紙のアピール欄に、プロの人達と関わってるって事、vipのキャラ数、戦闘力を書いて、出来るアピールは全部するつもりだ。


 大阪で申し込んで、駄目なら京都、それもダメなら、名古屋で申し込む!

 実は、この大会、住んでる場所、関係ないんだよね。だから、大阪在中のぼくらが、北海道代表にだってなれるんだ。



 じゃがりこをくわえたまま、リーファが器用にパルテナを動かす。油ものはコントローラーが滑るから、やめろって言ってるのに。


 最初から、団体戦を見据えてスマブラを始めた、リーファが選んでたのは、パルテナ。

 チャージ切り札ありのアイテム戦では、最強のキャラだけど、小学生で使ってる選手は見たことがない。みんな、一発逆転の壊しキャラ、ガノンドロフばかりだ。

 あれ使いこなすのホントは難しいんだけど、それが出来る小学生は見たことがない。


 パルテナの爆炎が、ケンをバーストして、ゲームセット。

 いまの相手、上手だったけどリーファの方が駆け引きが上だった。


「うまいのう、リーファ。うちも負けちょらんけどな」


 ナディアも中々調子がいい。


 実力的には、今の所、僕が10なら、リーファは6、ナディアは5か4くらいか。

 一週間で、これなら、三ヶ月後の大阪大会は優勝できそうだ!

 僕は言った。


「じゃあ……日曜。オフ行ってみるか」










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― 新着の感想 ―
[良い点] リーファは凄い金持ちなんですね。 羨ましい世界ですが、比例してゲーム環境も凄そうだけど、苦労しないことで、アクシデントへの耐性が僅かに心配になるけど、それ以上に純粋なゲームスキル向上に特化…
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