表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
249/1079

ウィーバー・スタンス、オールドスタイル




 ブロック塀の陰から、飛び出して来たバンは、タイヤを鳴らして、急停止、僕らの行く手を塞いだ。


 頭が、空っぽになる。


 このスピードで、バンの横腹にぶつかれば、死。


 遠くで聞こえる、メグの悲鳴。


 自転車で、無茶な運転に、慣れてたのが、良かった。


 衝突・ケガ人続出の『自転車鬼ごっこ』を思い出し、とっさにハンドルを、左手の田んぼに向かって切る。


 サイドミラーがかすって、変な方向を向いたけど、間一髪、バンの後部スレスレを、スルリと抜けた。


 道路を外れた、ハンターカブは、青々と実る、刈り取り前の稲に向かってダイブする。


「飛べ!」


 ぼくは、そう叫ぶのが限界。


 メグをかばうこともできず、ただ、ステップを蹴って、バイクを離脱、背中から、M36を抜きながら、顔をかばい、ショックに備える。


 そうしながらも、頭に浮かぶ、特大の疑問。


 なんで、僕の居所が、ことごとく、バレるんだ?


 驚いて、飛び立つバッタにぶつかられながら、

 稲のじゅうたんを転がる。


 膝から落ちたけど、想像以上の弾力が、大ケガから守ってくれた。


 感謝したのは、一瞬。


 染みでる、泥水の上を転がり、悲鳴を上げる間もなく、全身茶色にコーティング。


 生ぬるい、土の匂いに包まれた。


 でも、これなら、メグも、ケガは……


「メグ!」


 そうだ、メグは?


「大丈夫です!」


 凛とした返事。

 良かった、ケガしなかったんだな!?


 振り返ると、四つん這いで、こっちに、顔を向けている、青い顔。泥から抜いた手で、道路を指す。


「来ます!」


 僕の右側方に、バンから降りてきた、三人の大人。作業着を着た中年達が、ためらいなく、田んぼに降りてくる。


 嫌な記憶が、甦る。

 大阪大会で、ナディアママを襲ったヤツも、清掃員のカッコだった。


 こういう、何の飾りもない奴等が、一番怖い。

 ただ、手には何も持ってないのが、ツイてる。

 子供二人を捕まえる、簡単なお仕事。


 しかも……


 泥だらけの、チーフスペシャルを、背中に突っ込んで隠した。


 救急車のお迎え付きだぜ?


 ぼくは、泥に足をとられながら、自分から、タンゴ達(敵達)に迫る。


 一人が、バンで来た道を駆け、僕の後方、メグへと向かってる。


 助けに向かいたいけど……

 コイツラを、先に殺る。


 残りの二人との、距離は3m。


 残弾は、三発。

 一発も外せない。


 至近距離で、首から上に撃ち込んでやる。

 俺は、本気で、相手を殺すつもりだった。


 さっき、殺されかけて、覚悟を決めた。

 俺史上、最大のマジギレだ。

 

 殺り()に来てんだろ?

 いいぜ、来いよ。


「メグ! 逃げろ! 助けを呼びに走れ!」


 目の前に、ガタイのいい男。

 無表情、ビー玉みたいに感情の消えた眼。

 

 ビビったフリで、油断させるのがベストだけど、そんな小細工も頭から、吹っ飛んでいた。

 

 ソイツが軍手の拳を、固めた瞬間、僕は訓練どおりに、銃を抜き、ピタリとエイムした。


 驚愕の表情に、思わず、口元を吊り上げる。


 至近距離で、胸板に模擬弾を、叩き込まれた、オッサンは、血反吐を撒き散らせて、吹き飛んだ。


 いいぞ、最高だ。


 外すのが怖くて、とっさに、胸を狙ったけど、苦しみぬいて、死んでくれたら、何より。


「銃!? 聞いてへんぞ!」


 2人目のハゲが喚いて、田んぼから、急いで上った。


 車に駆け戻ろうとする、背中の真ん中に、ためらわず引き金を引く。


 泥だらけでも、いい働きをしてくれる、M36。


 轟音とともに、悲鳴を上げて仰け反り、頭からアスファルトに、突っ込んだ。


 ツーダウン。


 田んぼに浸かって、口から血を流し、力なく呻いている最初のオッサン。


 トドメを刺してやりたい、衝動をこらえて振り返る。


「メグ!」


 まばらな、街灯と、月明かり。


 残りの一人、長髪が、ズボズボ、泥を蹴立てて、逃げるメグに迫っていくのを、照らしていた。


 よろけながら、トートバッグを持って、必死で逃げる、メグを見て、頭が沸騰する。


「汚ェ手で、ソイツに触んな!」


 咆えたものの、遠い。

 残り1発、絶対に外せない。


 半身で構える、ウィーバースタンスで、慎重に迫る。流行りじゃ無いけど、俺にはこの構えが、一番、性に合ってる。


 長髪が、メグの腕を捉えて、引き寄せ、首に手を回した。


 背筋が、冷たくなる。

 ナイフで、顔に傷でもつけられたら……


「そのチャカ捨てろ! このガキの首折るぞ?」


 良かった、素手だ!


「次の瞬間、アタマが吹き飛ぶぞ? 試すか、あ?」


 俺は、ドスを利かせて咆えた。


 一瞬の間に、刺しこむ。


「仲間、連れて、失せろ。追わない」


 次の瞬間、男が、悲鳴を上げて、メグから離れた。


 闇夜で火花を散らす、スタン・バトン。


 トートバッグから、抜かれた、必殺の武器が、今度は眩い光を放ち、男の目を潰す。


 間髪入れず、首筋に押し付けられ、男は、泥水を跳ね上げ、棒のように倒れた。


「メグ!」


 肩で息をする、女優の卵に駆け寄る。


 メグが、顔を上げ。

 恐怖に顔を引きつらせた。


 ()()()()()()


 一瞬のラグ、銃を構えて、振り向く。


 夜空に響き渡る、銃声。


 衝撃を受け、俺は吹き飛んだ。


 


 

下の方に、勝手にランキングって言う、押すとこがあります。

押してくださったら、読んでくださる人が、増えるかも知れないので、どうぞ、宜しくお願いします( ๑´•ω•)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ