第五章 PM少女 〜PMのワリオマン、体感forベヨの三倍性能だ〜(5)
《登場人物》
林堂 凜
主人公。 小6、男。 任天堂Switch 大乱闘スマッシュブラザーズが学校一うまい。
香咲 ナディア=マフディー
小6、女。パキスタンと日本人のハーフ。主人公と同じ学校。
梁 梨花
小6、女。台湾人と日本人のハーフ。主人公の幼馴染で、相棒。小学校は別。
ジン
クラスメイト。男。クラスのリーダーで、優しい
佐竹
クラスメイト。女。クラスのボス。
鈴香
ナディアの姉。高校生。
僕はリーファの方を見ずに聞いた。
「で、ここまでして、僕達に認めてほしい事って?」
「団体戦の三人目」
それしか無いよな。
僕は笑って言った。
「こっちからお願いしたいくらいだけど……」
僕は無表情なナディアを向いて言った。
「オマエの許可がいるみたい」
「まず、どんぐりやめい。話進まん」
「細目やめろ。気にしてるんだから」
「すまんかった。けんど、うちは名乗った、じゃろ?」
しばらくの沈黙。
そうだ、初対面でナディアだけしか名乗ってない。
「礼儀知らずは私の方だった。謝る。私は梨花。台湾名はリーファ」
ナディアはうなずき言った。
「なんで、こんな回りくどい真似したんじゃ?意味なかろ?」
そうだ、ナディアが反対して駄目なら賭けの意味がない。
「三人で話し合うきっかけが欲しかった。後負けるのは、好きじゃないから」
ナディアは、しばらくして、口を開いた。
「……うちはオマエにイラついとる。オマエがうちにイラつくくらいにはの」
「……だよね」
「でも……同じ歳の中では一番……やりおるのは認めるし、フェアじゃ。うちを今日、ここに呼ばんで、勝手に話進める事も出来た」
ナディアはため息をついて続けた。
「まあ、打算もあるじゃろ。うちが、うん、言うたら、うちと林堂二人にせんで済むし、断ったら団体戦の話自体がポシャってペアも解消せなならん。どっち転んでも損せんもんな。締め切りまでに、もう一人見つかる可能性低いし」
「鋭いね。バレてたか」
「それ省いても……やる。ええよ、よろしく。けんど、譲るつもりは無いけん」
「ありがとう。私もオマエを認めるけど、それだけはダメ」
「キノピオすげー!」
「聞いちょる!?」
「ん、ああごめん。あんまし聞いてなかった。これで、決まりだ、優勝だ」
僕はコントローラーを値段表の載った、ガラステーブルに置いた。
「……何?凛、その棒読み」
「ん?なんでさっきから自分がムカツイてるのか、やっとわかったから」
「あ、ゴメン。はい、コレ」
「忘れてた。それ、関係ないから……」
リーファが差し出したカードを無視してぼくは向き直る。
正座した。
「座れ。スカートの前は隠せ」
僕の声の変化に気付いた二人が、怪訝な顔であわてて僕の前に正座する。
ナディアは、クッションで、リーファはハンドタオルを太腿の上に置いて。
さっきの公園で、早く帰りたいのに、なんでかコイツラに言いたい事があって仕方なかった。
PMのお陰でガイギンガの事が頭から外れ、理由がやっと分かったんだ。
「リーファ、ナディア……オマエラ男に下着見せるようなマネ、他でもしてんのか?」
部屋が凍った。
「いっ、言ってええことと! ううううちが、どんな気持ちで……」
ナディアが言い終わる前に、膝立ちになったリーファに思い切りビンタされ、凄い音がした。
顔が持ってかれ、正座が崩れそうになるのを、耐える。
口の中に鉄の味が広がる。それでも涙をため、睫毛を震わせるリーファから目をそらさなかった。
リーファの言葉も出ない程の激怒。
二人からしたら、最大の侮辱。
ぼくは……心の底からほっとした。
「よかった、二度とあんな事するな……」
カメラで撮られたりはしてなかったけど……
コイツラ、凄く真面目なのに、あんなとこ同級生に見られたら、学校いけなくなる。
……。
いや、違うな。
腹が立つ理由は、きっとそれじゃない。
さっき、スカートの中を覗いてたのが僕じゃなかったとしたら……
俺は歯を食いしばった。
自分の口の端から、何か垂れるのが分かった。
血だ。
俺は感じたこと無い怒りで、真っ赤になった頭に浮かんだ言葉を、考えもせず口にした。
「俺以外に一生やるな……」
真っ青になって、リーファと、俺を交互に見るナディアに叫んだ。
「ナディア! お前ら二人に言ってんだよ!!」
「は、はひっ! うううちも林堂以外はいやじゃ、ホントじゃ! 死ぬほど恥ずかしかったけん……じゃけ」
ナディアは上目遣いでイジイジしながら言った。
「せせ責任を……」
リーファに飛びつかれ、僕は盛大に倒れた。
ゴン、と音がした。
「約束する!」
遠のく意識の中で、柔らかくていい香りがした。
「凛だけだから! 凛以外には、殺されてもイヤ! ゴメンなさい。……あげるよ……」
リーファは涙で潤んだ目で、僕の首まで垂れてる血に唇を付けて吸った。
真っ赤になった唇を舐め、
「カードも私も……」
「なにやっとんじゃああ!」
「は、離せ! もう少しで唇に……髪引っ張んな、チビ!」
「死ね、ノッポ! ああ、やめじゃ、組むのなし!」
「もうおっそいもんね!……凛? 凛! ち、ちょっと!…………α斑、要救護一名、最優先で駆けつけろ、早く!」